a0192209_21095763風中の縁11

巴雅爾(はがじ)と伊珠(いしゅ)

都と砂漠の中ほど、商隊も立ち寄らぬ草原にその家はあった

近くの間道まで供を連れ九爺は莘月と出掛けて来た

道外れで供に指示を出し愛用の車椅子を莘月に押させその家に着いた

九爺様 ここは。。

私の隠れ家だよ 砂漠のことで考えをまとめる時に使うのだよ

九爺は肩越しに車椅子を押す莘月の手を軽く叩いた

さあ 中に入ろう

車椅子の出入りがしやすい扉を開け 家に入った

左程広くはないが居心地のよさそうな室内

食べ物は揃っているはずだよ

当面は不自由なく暮らせる

茶を入れようか

私が。。

そうか では頼もう

鉄瓶に湯気が立ち上っていた

使用人が既に先回りをして整えてくれて いたのであろう

湯呑みがふたつ   莘月が茶をいれた

九爺様 熱いのでお気を付けて

莘月に微笑んで湯呑みを受け取った

九爺様 石風を呼ぶにはどうされるのです

あの棚をご覧、三つの筒があるだろう 火種で火をつけ空に放てば

配下が駆け付ける手筈になっているのだよ

なぜ三つも

赤い印は急ぎの時、青い印は都へ戻る時、黄色の印は用を頼みたい時に放つ

あれが上がらない間は誰もこの家に近づきはしない

。。。

さあて なにをする? 君を狙う刺客から逃れる為に来たのだから安心して

過ごしなさい

衛将軍が帰還するまでの間だよ

九爺は  莘月の手を握った










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