夢 幻の...2


夜華が逝ってから早2年  夢の中でしか逢えない貴方

寝ている時が貴方に逢える至福の時 私は日々を寝て過ごした

師匠はそんな私を心配されたのだろう

桃の花を替え 茶を差し上げ 着替えを手伝う そんな日々を送ったある日

師匠は珍しく雪見酒を所望された

司音 弟子たちは下がらせた 深酒してもよいぞ

師匠...

盃に折顔の造った美酒を注いだ

師匠が呑まれるのはお珍しいですね

うむっ

黒淵は盃の酒を一気に呑みほした

司音 以前に何故そなたを弟子にしたか尋ねた時

折顔のせいだと言っていたな

はい 

玉清崑崙扇だ あの神器がそなたを選んだのだ

崑崙虚から手放す訳にはいかなかった神器を留める為

そなたをおなごながら弟子としたのだ

そうでしたか  

だが そなたは他の弟子にはない力を秘めていた

東皇鐘の封印を伝授したのもその力があった為だ

師匠

司音  私が7万年も時を費やし戻って来たことは

弟子たちを思ってだとそなたは言った

確かにその通りであった...

司音 その中にそなたもいたのだ

否  そなたの為に そなたの為だけに戻ろうと思ったのだ

我を待て  あの言葉はそなたに伝えた言葉

水牢から救ったことも  翼界へ助けに行ったことも

天劫を受けたことも そなただからしたこと

師匠

私の想い 気づかなかったか

夜華より永く そなたを想うこの想い 知らなかったと

...

夜華は逝った  もうそなたを抱くことも語り合うこともない

夜華が逝去する間際 私に嫁げと言ったそうな

司音 もう いいであろう 私に嫁せ

夜華を忘れられるとは思っていない  ともに懐かしむのもいいのではない

師匠

直ぐにとは言わん  一度はあきらめた想い  だがそなたを見ていると

なんとも危うい  誰かに身を委ねるべきだ

それが私ではだめだろうか

男は多くは語らない そう思ってきた

だがな 司音  そなたの姪ごと帝君をまじかに見て

伝えることの大事さを思い知った

そなたがどう思うかどう決めるかそなたが決めよ

私の想いは伝えた

黒淵は盃を置くと部屋を後にした



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