後悔(後編)

さて、本題に入ろう。
3ヶ月前、もうそんなに経ちますか。

一時期よりは元気…ではないよ。
俺にとって全てが変わってしまったし、もう後戻り出来ない『ゴールのないマラソン』を再び始めてしまった訳だしね。

リングに立った時、誰も気付いてないと思うけど恐怖で膝が震えていた。

度重なる体調不良もあってコンディションは最悪、それでもやらなくちゃいけない。

繋ぎ止めなくちゃいけないと思っていた、全て背負って闘うつもりだった。

だから試合が組まれたとしても負けたら終わり、獲れなかったら終わり、全てやめようと考えていた。

これは1ヶ月前と4年半前の後悔から来る覚悟だった。

1番最後の試合、控室で泣いてる君を助けられなかった。

その夜、君からのLINEに真面目に答えられなかった。

次の日、俺だけに伝えて黙って去る君をしっかり叱れなかった。

君に嫌われたくなかった、俺がそうなれば、ここまでの努力は全て無駄になって君の今後に大きく"逃げた"という事実だけが残るのが怖かった。もう2度と挽回のチャンスは来ないと思った。

ベルトを渡された時、実は凄く頭に来た。
そのベルトだけは、そんなことをして欲しくなかった。

俺が死ぬ気で守りたかったし、唯一誇れるものだった。

それを手放すのにどれだけの代償を払ったのかもすら知らない君に諦めた様に笑いながら『あげる』と言われた時、俺は完全にキレた。

泣き出す君を見て我に帰った。
そうか、こいつも辛いんだよな。

その時の俺に言わせればただのベルト。
4年半前の俺からしたら自分そのもの。

俺が背負わせていた。
俺の分まで背負わせていた。

後悔しても遅いことを察した。
今思えばこの時から俺も正常な判断はできなかった。

試合当日も厳しい闘いだったが、最も驚いたのは君に指名された時だった。

君は泣いていた、瞬間的にベルトを俺に渡してきた時を思い出した。

試合後、色んな感情が湧いてきた。色んなTVをザッピングするみたいに頭が混乱した。

俺は何をするにしても心が閉じ切ってしまった。悪い冗談みたいに俺はずっとこんな感じだった。

君が本当に喰らってしまった時、既に俺たちは福島に向かっていた。

最後に会った時は大丈夫そうだった、だからきっと大事には至ってないだろうと思ってたからいつも通り『好きにしな』と伝えた。

この夜、彼女の過ちを止めてくれたご両親に感謝します。並びに力になれなかった自分をどうか、お許しください。

またしても俺は失敗した。
今思えばこんな奴、評価に値しない存在だ。

約束を守ることすら、俺には不釣り合いだ。

それでも不恰好ながら伝えることは伝えた。
こんな俺にも後悔の念はあった。
君はそんな俺を受け入れてくれた。

だからこそ、覚悟した。繋ぎ止めた。
俺は最後のチャンスを死ぬ気で手にした。

地獄まで付き合う覚悟をした。

俺はわかった。

俺は結局のところ、幸せになりたい。
自分がいるこの場所で、全員でそうなりたい。
ただ、そう上手くはいかない。
わかってる。わかってるよ。
ならば俺は1人でも闘い続ける。
ここを守る為に俺は闘う。
俺の大好きな団体、俺の信じる団体の為に闘う。

nkwのために、は絶対に嘘じゃない。
俺こそがnkw、これも絶対に嘘じゃない。

最後まで絶対に諦めないし見離さない。

俺以外には絶対出来ない。
君以外には絶対出来ない。

約束なんだろ。
果たしにこいよ、クソガキ。

俺もお前も、綺麗には死ねないんだから。
せめてくたばるまでは、面倒見てやんよ。

チャンプはここにいるぜ。

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