omoide ②
新宿のレンタルスペースに向かう途中、何度か道を間違える。
幸いにも時間はたっぷりあって、やっぱ続けよっかなって思いが浮かぶこともあった。
その度に深夜の病院から家に帰るまでの道を思い出した。
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小田急に乗って
初めて彼に会ったのは2015年8月11日だった。
事前に聞いていた話通り、彼は素朴な人間だった。
白いTシャツ、半ズボン、サンダルに麦わら帽子がアジア最大規模の都市に立っていた。
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中央線に乗って
2013年、初めて手にしたiPhoneで見知らぬプロレスファンと交流し始めた頃に最も仲が良かった子が同い年だと知った。
その子が会話していた友人の1人が後にほぼシークレットなイベントでデビュー戦を迎え、その対戦相手に自分がなるとは思わなかった。
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実は学生プロレスラーになれないと知った高校生俺は自分で団体を作ろうとしていた。
きっかけはTwitterで知り合った同世代のLINEグループに入ると、その中心人物達は近い将来プロレスごっこ団体を作ろうとしているという話を聞いた。
それまで全く想定していなかった"自分がプロレスをやる"ということを初めて強く意識したのがこの時だった。
ただ彼らは東京のどこかで活動しており、神奈川の県央から出たことのない自分にとっては別世界の話を聞いてるみたいでもあった。
当時見ていたプロレスに飽きが生じて来ていた一方でネット上で見つけたアティテュード期に思いを馳せることもあった。
今自分が享受しているエンターテイメントが既に型にハマっているように見えた。
これを自分の手でコントロール出来るなら…。
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残念ながら全国に50人の先鋭を抱え、最新鋭のエンターテイメント・アマチュアプロレスを披露する夢は小さなガレージの中で終焉を迎える。
中心人物達による一方的な解散宣言を受け、俺を含めた諦め切れない数人が新団体旗揚げへと動き出した。
もうこの頃になると意地でも"プロレスをやる"という強い気持ちになっていた。
仲間だと思っていた人間に『将来○○の団体に行くのにお前らと付き合ってらんない』と言われてその団体がすぐ潰れたのは気の毒だったが…
彼と話すようになったのはこの頃だったと思う。
プロになりたいけど、ヘルニアが…そう言う彼を強引に仲間にした。いつかプロレスが出来たらいいね、なんて話もしてた。
結果自分達での旗揚げは互いに遠方に住んでたことや価値観の相違もあって再び頓挫した。
大学生になれば学生プロレスラーになれる、どこからかそんな情報を見つけた俺たちは暫し道を別れた。後楽園ホールでの再会を誓った。
14歳から15歳の頃の話だ。
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彼は俺と違って真っ当に学生プロレスラーになった。
そして真っ当な出会い方をする、つまりリング上で、それも後楽園ホー…そこまで上手く話は進まないが今思えば非常に運命的な出会いをした。
1年経っても新人気分が全く抜けないクソガキな俺は無謀にも団体がいつもお世話になっているリング屋さん主催のイベントに参加させてください!と無理を言った。その話を彼にした、当時から俺は非常に面倒くさい、嫌な性格だった。
絶対現場行った方がいいよ、なんなら俺と一緒に手伝いに行こうよ。
この時も彼は『いや、そんな悪いよ…』みたいな事を言っていたのだが無視した。
リング屋さんはいつも優しく『いいよ〜』って言ってくれた。本当にいつもありがとうございます。
ただビビったのは俺はまだしも当日会場入りしたら対戦カードに俺と彼の名前が載っていた事だった。
彼まだデビューしてないのに。
リング上どころか、後楽園ホールどころか。
マット上で、ライブハウスで出会った。
そしてその日の夜、再びアジア最大規模の都市新宿にある沖縄料理の名店やんばるで先輩、俺、彼の3人は現地人にダル絡みをされた末にちんすこうを貰う事になる。
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数ヶ月後、俺は自分のルーツでもある栃木県を目指していた。季節は夏だった。
ここまでの遠出を1人でやったことはなかった事もあって大変孤独になった。
今からプロレスをやりに行く事もあってまるで海外武者修行に行くような気持ちになっていた。
路線バスに乗る金すらケチり駅から30分ほぼ真っ直ぐ歩く。
孤独が最高潮になった時、真っ直ぐ向こうに見えた今でも変わらない特徴的な歩き方をするシルエットを見つけた。
お腹すいた?コンビニでいい?
おい餃子食わせろよ、そんな会話をした。
お互いが17歳になっていた。
ちなみに以降何回も同地に降り立つ事になるが未だに餃子は食べれてない。
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