衛星コンステレーションでビジネスをするということ(第2回)

こんにちは、アクセルスペースCSO(最高戦略責任者)の太田です。
第1回目の前回はごく簡単に人工衛星の軌道のお話をしました。第2回目の今回は、宇宙で何か事業をする、となった時にこの軌道がどのように関係してくるのか、触れていこうと思います。

さて、何か新しい事業を始めようと思ったとき、どういうことを考えていくでしょうか?

サービスや想定される顧客層、展開する地域、必要となる資金などを考えますよね。

宇宙を使ったビジネスの種類については他の機会に譲りますが、典型的な人工衛星を使ったサービスである通信や地球観測を例にとると、この「サービス」の品質や事業展開する地域を考えていくとなかなか癖があることに気が付きます。

前回、静止軌道にある「静止衛星」について簡単に説明をしましたが、静止衛星は名前の通り地上から見たときに「常に静止」しているため、静止衛星を「見る」ことができるところでは24時間・365日通信をしたり、観測をしたりすることが可能です。しかし言い換えると静止衛星を「見ることができない地域」に対してはその衛星を直接使ってサービスの提供を行うことができません。このため、もし世界中でその事業を展開したい、となると展開したい地域別に人工衛星を作り、打ち上げていく必要があります。

では「周回衛星」の場合はどうでしょうか。

前回紹介した太陽同期軌道(SSO)の場合、特定の地方時刻の上空を飛び続けます。このため特定の時刻に「のみ」観測をすることができます(定時性があると言えます)。地球観測衛星の場合、同じ時刻に観測ができることから、太陽光の影響(影の方向など)が季節変動だけを考えればよく、統計的な処理を行うにも便利です。このため1日単位・1か月単位などの変化を見る上ではあまり複雑なことを考えずに比較することが可能ですし、一定の頻度・面積の条件下であれば世界中どこでも同じサービスを行うことが可能です。しかしこの観測する「時刻」を変化させようとするとその時刻の数だけ衛星が必要になってしまうので、常時接続のようなサービスを考えるとかなりの衛星数が必要になります。

太陽同期軌道以外の周回衛星の場合、ここに更にサービスが提供可能となる地域(緯度)に制約が出ることに加え、時刻の定時性が崩れてきます。その代わり同一地点の上空を通る頻度が太陽同期軌道よりも増えることから、常時観測を行ったり通信を提供しようと思うと結果的に必要となる衛星機数が少なくなり、必要な事業費用が相対的に安価になる可能性があります。

いかがでしょうか?簡単にまとめると常時サービスが可能だけど世界同時展開が難しい静止衛星、世界中で定時サービスが可能だけど拡張が難しい太陽同期軌道、常時サービスに必要なコストが大きく複雑ですがその中間にあたるその他の周回軌道、そんな区分になるのではないかと思います。人工衛星を使った通信や観測、地球上に対してのサービスを考えたいと思っている人の参考になっていれば幸いです。

本日はこのくらいでおしまいにして、次回はもう少しお金の話にも踏み込んでいきたいと思います。


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