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Jリーグ第2節 鹿島(A)vs川崎(H) マッチレビュー

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鹿島 1 - 2 川崎

お久しぶりです。この半年近く分析はしていなかったのですが、

待ちに待ったJリーグ再開ということでレビュー(というか感想)をまとめていきたいと思います。

残念ながら鹿島は2-1で敗戦を喫し、公式戦4連敗となりました。

悔しさは当然あるものの、私自身は光明も見出せる内容ではありました。

ザーゴ・フィロソフィーの浸透進む鹿島

 まず、今の鹿島はこれまでの歴史で取り組んできたサッカーとは、全く違うスタイルやコンセプトに挑戦している。中断期間は、ザーゴ指揮官の流儀やその哲学を選手らに”伝える”という点においては良い時間となったかもしれない。昨季は開幕戦がアウェーの川崎戦で、私も現地観戦したが試合内容は全く違っていた。立ち位置、守備コンセプト、トランジション...短い期間でザーゴ監督は鹿島を新たな姿に変えようとしていることは明らかだ。

 マイボール時における選手の立ち位置、狙うスペースはこれまでの鹿島とは異なるわかりやすい点かもしれない。両SBを常に大外高い位置まで開かせ、SHはハーフスペース付近に位置取る。レオ・シルバが2CB間にサリーダし、三竿を前に置いた3+1人で両サイドへボールを送る形が基本。SHが比較的インサイドレーンに留まることで、川崎アンカー田中碧の両脇スペースも有効に使える場面もあった。対川崎相手の戦術なのかどうかは不明だが、狙いをもって攻撃はできていたように思える。

 問題は質だ。立ち位置は定まりつつあるが、ビルドアップ時のパスミスやプレスに掴まった時の周囲の連動性がこの試合、特に前半45分間での課題となり続けた。技術的なミスは中断期間明けに伴うものであるだろうし、状況に応じたゲームのコントロールは試合を重ねるごとに磨かれていくものだと楽観視したいが、鹿島は自ら自分自身を苦しめた試合でもあった。

「間合い」を掴めず苦しむ攻守

 攻守両面において鹿島は相手との”間合い”を掴みかねていたように思える。ビルドアップ時もパスが相手に引っかかる、引っかかりそうになる場面はいくつもあり、実際リズムを崩す、あるいはそのまま奪われ被カウンターに繋がっている。1対1を仕掛ける場面もあまりない、というか仕方なく仕掛ける印象すらあった。味方ゴールキック時のビルドアップも川崎からすれば奪えるチャンスと思われていたのでは。うまく掻い潜れた時はチャンスにつながったが、不安定さを感じる事の方が多かった。

 守備面で気になったのが犬飼、町田の両CBの対人守備。背後からインターセプトを狙うものの簡単にかわされ、危機的なピンチを招いたことは事実だ。町田は立ち上がりからレアンドロや家長に対して果敢にアプローチを試みているもののタイミングが合わず、残念ながら明らかなファウルに終始する事が多い(結果として警告も受けた)。町田は納得いかない表情ではあったが、前半の早い時間から注意と警告を受けていてもおかしくはないプレーではなかっただろうか。三竿、レオ・シルバの両ボランチが中盤強度を保てていただけに、両CBの軽率なプレーは絶対に無くしていかなくてはならない。

オフザボールで攻略する川崎、苦しむはコンディション面

 前半の川崎は流石というか、中断期間明けでも変わらず彼らのやりたいサッカーを体現し、試合をコントロールしていた。レアンドロ・ダミアンにくさびを打ち込み、ヒールでフリックするプレーは素直に美しいし、周囲との高い連携から生まれているものだ(むしろ鹿島のエヴェラウド、アラーノがやりたい事でもある)。選手のポジショニングに無駄がなく、狭いスペースへ押し込もうとする鹿島の守備対応を逆手に取る狙いは見事。川崎の右サイドで鹿島を引き込み、逆サイドで突破力のある長谷川、登里を活かした攻撃にはお手上げに近かった。個人的には脇坂の今後が楽しみ。よりゴールに直結するプレーが増えていけば、1つ抜けだした存在になれる気もする。

 川崎が苦しんでいたのは自分たちのフィジカルコンディション面か。彼らが普段行っているスタイルはオフザボールの質が生命線なだけに、フィジカル面への負担も大きいのかもしれない。後半が始まるにつれ、後手にまわるシーンが多くなっていた印象が強い。後半は全体的に鹿島の攻めを川崎が受ける時間帯が多かったが、川崎自身が流れを受け入れた、選択したというより、受け入れざるを得なかった色合いが強かったように思える。それでも最後まで我慢し、勝利に繋げたところに川崎の凄みがある。

永戸という新しい風

 仙台の頃からいい選手であることは確かだったのだが、ここまで違いを見せられる存在だったとは。彼が左サイドでボールを受けるたび、前を向いてフィードを送る態勢を取るたびにワクワクさえした。ベガルタありがとう、としか言いようがない...(知っているベガルタファンが移籍に大きく落胆していた意味を知った)。和泉やアラーノといった前線との連携には課題があるものの、それを補って余りある左足を彼は持っている。杉岡との競争はオフシーズンから楽しみだったのだが、彼らの起用法が悩みの種になる可能性は高い。

 逆に残念に思えるのは内田のパフォーマンスか。彼本来のプレーレベルとは正直程遠い。膝の影響で、内田はもはや20代の頃のプレースタイルには戻れないだろう。経験と落ち着き、戦術理解におけるアドバンテージが彼を先発させている要因だろうか。広瀬の加入は大きな刺激になったはずだが、もし広瀬がザーゴの哲学を理解し、チームにおける自分の活かし方を見出せばファーストチョイスは自ずと定まっていく気もする。

 遠藤のトップ下起用も今後いいサプライズを起こしそうだ。トップ下ながらも自由に動き、ボールサイドに寄ってサポートしつつ前を向けば質の高いロングボールを蹴れる。自身の高いキープ力も相まって、短い時間でも違いを作れる存在になっていくかもしれない。

言い分あれども負けは負け

 1失点目のオフサイド疑惑をはじめ、ジャッジへの不満は言い出したら仕方がない。ともあれ、負けは負けである。得点はセットプレーの相手のオウンゴールのみ。決定機自体は作れたが、決められないのならば意味がない。新しいプレースタイルに挑む”産みの苦しみ”といえば聞こえがいいかもしれないが、負ける事で得られるものなど、勝利に比べるべくもないことだ。

 今の鹿島がタイトルを奪取できる可能性は正直低い。過密日程に伴い負傷者が続出してしまえば更に厳しいだろう。ザーゴが内容と結果をどう追い求めていくのかが非常に気になる。ミッドウィークでも試合が続く以上、もはやじっくりとチームに戦術を落とし込む時間はないだろう。選手層の厚さを維持しつつ、試合ごとに狙いをもってやっていくことが重要になるだろうか。







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