〈解説〉ROLESと外務省補助金 お金の動きってどうなっているの?
こんにちは、Awiです。
今回は、外務省や東京大学が公開している情報から、一体どんなことがわかったのか、解説していきます。
公開されている情報量がとても多いので、今回は財務(お金)のことについて書きます。
〇2023年度 ROLESへの補助金交付額はいくら?
まず、今年度(2023年度)について。
これは、2023(令和5)年度決算報告が出ていないので、どれだけの補助金が外務省から各団体に渡ったのか、まだ正確な数字はわかりません。
*ここで少し経理の話。
「締め」ってご存じですか? お勤めの経験がある人には耳にしたことがある言葉だと思いますが、これはすごく簡単に言うと、企業や団体が、お金がどれだけ入ってきてどれだけ出て行ったか集計するものです。
(手書きの時代は「帳簿に付ける」と言っていたはず)
営業日には毎日の締めをやりますし、月締めといって毎月のまとめもします。
そして年に一度のお金の総まとめが、決算。
これをちゃんとやらないと、謎のお金が入ってきていても、何故かお金が減っていても気が付かず、例えば横領などの不正が起きていても全然わからないという、とても怖いことになります。
(企業や団体が組織ぐるみで悪いことをしている場合もあるので、それを防ぐために公共の機関は会計監査院、民間企業・団体は税務署など公的機関の監査がありますが、それはまた長くなるので割愛)
国の機関では、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間で決算を行い、その情報は公開することになっています。
本日12月27日現在、外務省からも東京大学からも今年度の決算書は公表されていません。年度の途中ですからね。
実際のお金の流れがどうなっているかは、決算書が公開されるまで部外者の一般人にはわからないのです。
ここで「それじゃ補助金どれだけ出ているかわからないじゃん! 年度が終わらないと税金がいくら使われているかわからないなんておかしい!!」と思われるかもしれませんが、この為に国は予算というものを作ります。
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」( 日本国憲法第86条 )。
予算は毎年、その年度が始まる前に「次の年度では、こういうことにお金をこれだけ使おうと考えているよ」というものです。年度の途中で予定になかったお金が必要になったときは、補正予算というのを組んだりします。
外務省を含む国の予算は、使用目的が適正であるか国会審議にかけられますし、決算は会計監査院でチェックしてもらうことになっています。
予算はこれからの予定、決算はすでに確定しているお金の動き、ということです。是非、覚えておいてくださいね。
さて、本題に戻ります。
外務省の補助金については、膨大な文字数字が書かれた外務省の予算を探すのもいいのですが(実際に予算各項目明細書というものに載っています)、目安としておおよその数字がわかればいいかなと思うので、ここでは補助金の募集要項に記載のあった想定金額を採用します。
⚫︎2023(令和5)年度 外交・安全保障調査研究事業費補助金 募集要領
ここに書かれた金額を元に表を作ってみました。
外交・安全保障研究事業費補助金は、部門ごとに金額が違っています。
例えば発展型総合事業は、1年間で1企画あたり、約8千6百万円が交付されるわけですね。
*もう一つ説明しておきますが、表の右上にある(千円)というのは、簡単に言うと、数字の下3桁(0の3個分)を省略してあるよ、ということです。
数字が大きくなると、桁の見間違いがおきたり、わかりにくくなるからです。
次は、部門別にどの団体がどのくらい補助金を交付されるのか、審査結果を見てみます。
2023(令和5)年度 補助金申請 審査結果
違う部門で複数の企画が採用されている団体があるので、団体別にまとめます。
今年度、ROLESは3企画が採用されて、1年間で約2億1千万円(推定)の補助金が交付されることがわかります。
〇2020~2022年度 ROLESへの補助金交付額はいくら? 外務省からの補助金は誰が受け取っているの?
さて、ROLESは2020~2022年度も外務省の同じ補助金の交付を受けていたので、そのデータも探します。
すでに終わっている事業なので、決算書を見ればいいわけです。
まずは、外務省。こちらは補助金を出した側。
しかし外務省の決算書では、補助金に関する細かい情報が全くもって出ていませんでした。一般企業では、決算に総力を傾けるものですが、国は予算に総力を上げてとても細かいデータを作るので、決算はかなり省略になっても大丈夫なんだと思います。
仕方がないので別のデータがないかと探したところ、「行政事業レビューシート」という文書にとても良い情報が載っているのがわかりました。
⚫︎2021(令和3)年度 行政事業レビューシート(2020年度実績) 事業番号0048
⚫︎2022(令和4)年度 行政事業レビューシート(2021年度実績) 事業番号0078
⚫︎2023(令和5)年度 行政事業レビューシート(2022年度実績) 事業番号0084
レビューシートでは10万円以下の数字は概数になっていますが、補助金が数千万規模のものなので細かい金額はとりあえず考えないことにします。
スクショしました。こんな感じで載っています。
ROLESには、2020年度に4千5百万円が交付されているのがわかりますね。
そして、東京大学。こちらは補助金を受け取った側。
東大の決算関連文書のひとつに、財務諸表というのがありました。
⚫︎2020(令和2)年度財務情報 財務諸表 P53
⚫︎2021(令和3)年度財務情報 財務諸表 P57
⚫︎2022(令和4)年度財務情報 財務諸表 P56
非常に細かく内容が載っていて、補助金別で数字が記載されているものです。調べたら、当該補助金も、ちゃんと載っていました。
東京大学の経理事務能力、すごい。
こちらがスクショ。
ここで注意しなければならないことがあります。
東大は先端研(ROLES)に加え、未来ビジョン研究センターも同じ補助金を受け取っています(*始まりの年度が違うので、未来ビジョン研究センターの審査結果などは、外務省のリンクが別の場所になっています)。
財務諸表には、両方の合計額が載っていると考えなくてはなりません。
ということで、作った表がこちら。
外務省発表の金額、東京大学発表の金額、それぞれの合計を比較します。
どうでしょうか。
2020年度 外務省 ¥52,400,000
東京大学 ¥52,375,000
ほとんど合っていますね。繰り返しますが、外務省発表は概数です。
他の年度を比べても、誤差はないと言えます。
出金と入金の辻妻が合いました。
そして、交付した外務省からの金額と、交付を受けた東京大学の金額の誤差がないということは、補助金は、外務省から直接、東京大学に入り、その全額が東京大学の本部事務局で統括されていると考えることができます。本部から部門ごとに事務が分かれたりはするでしょうが、研究室や研究者は補助金の管理ができません。
補助金の金額の大小に関係なく、東大では研究室や教授の口座などには直接お金が入らないシステムになっているのですね。
〇ROLESで、補助金はどのように使われているの?
この情報は、外務省行政事業レビューシートに載っています。
行政事業レビューシート、本当にいい仕事をしています。
一例をスクショで上げておきます。
どういうことに使われたか、ざっくりではありますが、わかりますね。
他団体との比較もできて、とても良い資料です。
ROLESだけ、表にまとめてみました。
募集要項にも書かれていますが、補助金の使い道は外務省によって決められています。いくら採択された企画を行う上で発生した経費であっても、決められた枠から外れるものに補助金は使えません。
人件費が多い!と思われた方もいると思いますが、どこの企業でも、人件費(=お給料)に費用がかかるものです…。スクショにあげた他団体の使途を見ても、総じて人件費に一番費用がかかっているのがわかります。
物価高の世で、一般人の給料や時給を上げていくことが当然と思うならば、研究者にもきちんとした額のお給料が出るようにしたいですよね。
外部委員が行う評価を見ても、補助金の使用については毎年B(適正)と判断されていますから、補助金の使い方に問題はないと考えられます。
⚫︎2020(令和2)年度 補助金 中間評価(ROLES企画)
⚫︎2021(令和3)年度 補助金 中間評価(ROLES企画)
⚫︎2022(令和4)年度 補助金 事後評価(ROLES企画)
〇結論
とてつもなく長くなりましたがここで今回のまとめ。
●2023年度の、ROLESの補助金交付額は、1年間で約2億1千万円(推定)。
●2020~2022年度の、ROLESへの補助金交付額は、3年間で約1億2千万円。
●補助金は、東大の事務局(本部or部局)で管理されていると考えられる。ROLESでは受け取っていないし、管理もできない。
●補助金の使い道は人件費が多いが、それが当たり前であって、適切に運用されている。
ということで、公表データからわかる、ROLESと外務省補助金についての解説は、以上です。
お疲れさまでした。最後までお読みくださって感謝いたします。
サポートいただいた場合は、すべて先端研ROLESへ寄付します。 ただし、どうも事務手数料その他で15〜20%引かれてしまうらしいのです。もし可能でしたら東大基金へ直接寄付していただくのが最も金銭的ロスが少ないと思います。よろしくお願いいたします。