はじめに
Awiです。
飯山氏が動画配信などで何度も言及していたのに、著書には一切記していないことがあります。それは科研費についての話。
⚫︎2023年2月16日 飯山あかりちゃんねる(旧いかりちゃんねる)
【無駄?】科研費の闇を暴くわよ!
飯山氏によると、科研費には闇があるみたいですね…。
この他に、飯山氏が科研費の話をしているのは、以下。
以下の動画は、科研費の話と同時に、ROLESの補助金についても話をしています。
⚫︎2023年11月17日 長谷川幸洋 Tonight 第41回
⚫︎2023年12月14日 ニュースあさ8時! 第268回
⚫︎2023年12月14日 飯山あかりちゃんねる(旧•いかりちゃんねる)
【祝ハマス本完成!】文系研究者の予算消化って何?!
今回取り上げるのは以上です。
ご自身の経験談なのに、本に一言も書かないのはどうしてでしょうね。
飯山氏の著書しか読んだことがない人には全く知らない話になるかと思うので、今回は上記の動画から、飯山氏の発言について書いてみます。
科研費について
まずは基本知識から参りましょう。科研費とは。
日本学術振興会HPより
手短にいうと、全ての分野の学術研究を発展させるために出している助成金という解釈でいいのかな。そしてこれは「競争的研究費」であると。
競争的ということは、要するに科研費は応募制ということ。研究のために資金が必要だという研究者が申請して、それが通った研究に対して支給されるものです。
少し調べてみたら、山口大学がいいものを出していました。
とてもわかりやすい公的研究費の使い方
山口大学公的研究資金不正対策防止室 平成30年改訂
これはタイトル通り、とてもよくまとまったわかりやすい資料です。山口大も国立大学なので、基本的な事務処理方法については、東大など他の国立大と同様と考えて良いのではないかと思います。
さて、研究費の種類について。資料、研究費の表を見ると、一番上に「預かり補助金(科学研究費=科研費)」の説明がありますね。
同表、一番下の「運営交付金」は、国から国立大に入る予算のこと。国立大の本部から各研究室に振り分けられる基本的な研究費はここから出ています。国立大は学生からの授業料を低く抑えているわけですから、運営交付金は大切な財源です。これを減らされると、国立大はお金が足らなくなって人材を育てる余裕がなくなります。
研究者を育てるために科研費全体の予算額を増やす話も出ているようですが、これは競争的資金であり、また、大学施設(例えば建物や設備の老朽化など)を整えることには使えません。資金繰りに苦しむ国立大運営の効果的な対策になるのかどうか疑問があります…。
(財務省は運営交付金をケチらないで欲しいし、文科省も財務省に対し、運営交付金を増やす方向に強く働きかけて欲しいです)
次に、使用ルールの細かい説明。
これはもちろん、お酒や煙草に使ったらダメですよね…
次に研究費の管理について。
“研究費の管理は大学が行う必要があります”
“研究補助金は、研究者が個人で行わず、大学が機関として経理することになっています”
これは以前に東大の研究費の話で説明したことがあるはずですが、あらゆる研究費は、大学事務にて行われます。教員個人が研究費を自分で取り扱うことはありません。
例えば、出張に行く時の手続き方法。
山口大の資料は手続きの流れがわかりやすいですね。
これは、講演などで誰か外部の人をお招きしたときに、お礼を出す場合の申請方法。研究者と部局長とお招きした人と事務部とで、ぐるぐると…(煩雑ですな)
不正使用については、罰則もあります。
科研費を含む、公的研究費の取扱いについては、現在ではこのようになっています。
それでは、飯山氏の話の内容について。
飯山氏が語る、科研費の話
動画配信から引用するととても長くなるので、要約してみました。引用は資料として最後につけておきます。
飯山氏の発言の要約
⚫︎2023年11月17日 長谷川幸洋 Tonight 第41回より
⚫︎2023年12月14日 ニュースあさ8時! 第268回
⚫︎2023年12月14日 飯山あかりちゃんねる(旧•いかりちゃんねる)
【祝ハマス本完成!】文系研究者の予算消化って何?!
飯山氏によると、1997ー2002年の科研費プロジェクト・通称「イスラム地域研究」ではかなり豪快な研究費の使われ方がされていたのをずっと見ていたと。多額の科研費が投入されたのに、イスラム地域研究が、国民のために還元されるようなものではなかったと。このことを根拠に、ROLESが外務省からの大規模補助金を獲得しているが、その研究費の使われ方もおかしいのではないか、無駄があるのではないかと、主張しているわけです。
ここで、ROLES批判を繰り広げるようになる前の、2023年2月16日の動画と比較してみましょう。
科研費について語っている内容は、2023年12月13日の【祝ハマス本完成!】文系研究者の予算消化って何?!とほぼ同様です。
12月13日には言及していない部分については、以下要約。
⚫︎2023年2月16日 飯山あかりちゃんねる(旧いかりちゃんねる)
【無駄?】科研費の闇を暴くわよ!
2月16日の配信と、12月13日の配信の中で大きく違う点は、批判対象ですね。
2月16日では、飯山氏の言う「中東研究業界」にいるイスラム地域研究者(左翼)。これが、12月13日だと池内先生でありROLESになっています。
12月13日動画だと、科研費が余るという理由で、学生にも旅費宿泊費が全部出たという話から、ROLESのイスタンブールでのシンポジウムの旅費宿泊費の話に繋げています。
「同じですよ」と飯山氏は言っていますね。
つまり、イスラム研究業界の教授たちの科研費の扱い方と、池内先生の補助金の扱い方を同列としているわけです。
ちなみに飯山氏が度々、いじめられた、不当な扱いを受けたと主張しているのが、このイスラム地域研究の教授達の誰か(指導教官のことを時々言っているけれども、一人だけを指しているかは不明)です。院時代はずっと教授に嫌われていた、中東研究業界から排除されたなどと動画や著書で繰り返し言及しています。
しかし池内先生に対して、飯山氏は元々何の恨みもないはずです。院時代には顔を合わせると議論したって池内先生は仰ってましたっけ。以来、ずっと会ってなかったとか。直近でも5年くらいは顔合わせたりしてないんですっけ?
飯山氏は著書「イスラム教再考」(2021年・扶桑社)の中で、池内先生の論文がイスラム地域研究者からの批判対象になっていることを擁護しています。つまり、飯山氏がこの著書を書いた時点では、池内先生について「イスラム地域研究者」同様の扱いをしてはいないわけです。
まあこんなことを書いていたのが、急転、池内先生をイスラム研究主流派(左翼)の仲間にぶち込んで批判展開を始めたわけですね。
これは、Awiの推測にはなりますが、飯山氏からすれば、イスラム地域研究で多額の科研費を交付された東大教授陣と、外務省事業にて多額の補助金を交付された池内先生とは、人格や思想はどうであれ、状況において重なって見えたのではないでしょうか。
どちらにしても、東大教授であり多額の競争的研究費をまんまと手に入れて大規模プロジェクト運営をしている、しかも自分を全く評価しない(何なら排除しようとする)非常に不愉快な奴ら、と捉えたのではないかと思います。というのも、飯山氏は、両者に全く同じ表現を使っているのです。
それは、「万能感に満ち溢れている」という言葉。
⚫︎2023年11月16日 飯山あかりちゃんねる(旧いかりちゃんねる)
【下劣!】池内恵•東大教授「日本保守党は変質者集団、飯山陽は狂乱インフルエンサー」?!より
⚫︎2023年12月14日 飯山あかりちゃんねる(旧いかりちゃんねる)
【祝ハマス本完成!】文系研究者の予算消化って何?!
池内先生のことをどう思おうが飯山氏の自由ですが、しかし、飯山氏にとっては大変残念なことに、池内先生は研究費を杜撰に使うなんてことはしていませんでした。25年も昔の科研費のことはわかりません。この時代から現在の間には、科研費の制度の見直しや、罰則など新しくなっていることがあります。飯山氏が言っていた通り、昔はかなり自由に、悪く言えば好き放題使えたのかもしれない。
でも、それは池内先生とROLESには何の関係も責任もないことです。今はきちんとした研究費の管理システムが出来上がっていて、科研費でも補助金でも運営交付金であっても、飯山氏が言っているようなことは一切できない。
第一、飯山氏は、ROLESの補助金の使い方はおかしい、無駄ではないかとずっと言い続けているけれど、おかしい証拠はどこかにありましたか? ROLESがイスタンブールでシンポジウムしたのが本当に無駄だったという証明って、できますか?
無駄じゃなかった証拠置いときます。
飯山氏の発信を信じて大騒ぎした人たちも含め、みなさん完全に無駄なことに労力を使って、それでもって証拠らしいものが何にも出せていないのです。
根拠は、飯山氏の学生時代の体験談、ただそれだけ。飯山氏はご自身で科研費を受けて研究されたことはないようですから。
本当に何だったんだろうなこれ。
終わりの駄文(Awiの謎考察)
飯山氏という人は、以前、自身を「いかりちゃん」と呼んでいたように、怒りが原動力にあるようですが、私から見ると怒っているというより、「復讐心の塊」のように見えています。
それが意識的にしているのか、無意識なのかはわかりませんが。
飯山氏を、SNSという場所で真っ向から批判した池内先生は、復讐のための格好の餌食になってしまったのではないかなと。そんなことを思いました。
飯山氏の、日本の「中東研究業界」「イスラム地域研究者」に対する反感は、動画を見ても、本を読んでも、相当な熱量があると感じます。この不満の塊のようなものは、ずっとずっと燻っていたのではないでしょうか。いつか目にもの見せてくれると。
もしかして、池内先生に対し、なんだこいつ、その昔、イスラム研究主流派に刃向かったくせにお前だけ順調に出世しやがって、そして今は、自分を研究業界から排除しようとした教授達と同じことやっているのか、というように飯山氏は思ったのかもしれません。
世間には、なんかよくわからないけど東大教授ってなんか偉そうでムカつく、って漠然と思っている人って割と多くいるんだと思います。東大に入れるのって、ましてやそこで教授になれるなんて、ごく僅かであることは確か。その上、ROLESは外務省から高額の補助金が交付されている。多くの一般庶民の感覚とは全然違う(反感を買いやすい)条件が重なっていますからね…。
多数の人々が持つコンプレックスを、飯山氏は利用しようとして話を展開したのではないでしょうか。飯山氏が先生に勝てるって言ったら、Twitter (X)のフォロワー数や動画の再生数、要するに拡散力だけ。それを使って先生に復讐しようとした。完全に八つ当たりなんだけど(迷惑)。
第一、飯山氏は池内先生から「貶められた」と言っていますけれども、自業自得でそうなったところもあるわけです。
飯山氏が、自分の気に入らないジャーナリストや研究者に変なあだ名をつけたり、偏った情報を流すなど、学問に対し誠実に向き合わねばならない研究者としてのあるまじき言動をしなければ、池内先生だって強い語句を用いて批判することなどなかったわけですから。
知っている人は知っているけど、池内先生の研究者人生って全然順風じゃなかったんですよ。先生が大学院を出た当時、先生の考えは当時の日本のイスラム研究主流派には全く受け入れられないものでした。それをわかっていながら正直に論文に書いてしまったので、重鎮教授の激しい怒りを買ったことも、また公然と暴力(物理)を振るわれる事態も起きました。幸いにも先生の書いたものを評価する出版業界の人がいて、先生自身も自分で道を拓く能力があったから、出した本で賞を取って世の評価を得たわけですが。それでもイスラム研究の主流派からは、目の敵のようにされている状態が長く続いたわけです。だいぶ薄れたはずだけど、今もそれはある程度残っているんじゃないかな。池内先生、表に出して書いているだけでも本当に色々と大変なことがあったんです。
そもそも、先生は大学院のあとは東大に残らず、大学とは別の研究機関に就職されています。現在、東大先端研の教授なのは、古巣に戻りたかったなどという理由ではなくて、元々理系の附置研究所だった先端研という場所が、すごく広い場所(先生が集めた膨大な量の本を置くため)が得られて、自分のやりたいことができそうだったから。
ただしこれは終身雇用ではなく任期付きという不安定さと引き換えです。
これは准教授の任期が終わる少し前の投稿。
先生のブログ、読みます? あんまり教えたくないけど。
これはまだnoteでは引用してないよね…?
(これは春に紹介したかったなあ…)
こういう背景を知っていますので、池内先生のことを「東大教授という肩書を笠に着て権力を振るっている」などと決めつけている飯山氏の言動は、私には到底許容できるものではないのです。
飯山氏も、学問に対して誠実であり続ける道はあったはずなんですけど。
どこが別れ道だったんでしょうね。
今回は、以上です。
読んでくださって、ありがとうございました。
資料を含めると今回は1万2千字超えです…ほんまアホかというね…本当にお疲れ様でした。
書いた側もそれなりに疲れております。
(大雑把に書いた先生の昔の話のところは、何か変なことを、あるいは間違ったことを書いていないか何となしに不安になりながら)
資料
註:動画発言において、「あの」「その」や言い直している箇所などは省略しています。
⚫︎2023年11月17日 長谷川幸洋Tonight 41回より
2023年12月14日 ニュースあさ8! 第268回
⚫︎2023年12月14日 飯山あかりちゃんねる(旧いかりちゃんねる)
【祝ハマス本完成!】文系研究者の予算消化って何?!