〈まとめ〉2023(令和5)年度 外交・安全保障調査研究事業費補助金 中間評価 1年目/3年事業


Awiです。

ROLESが外務省に採択されている、外交•安全保障調査研究事業費補助金の中間評価が発表されました。今回はその情報まとめです。

外務省補助金関係のおさらい

外交・安全保障調査研究事業費補助金とは。

外務省サイトよりhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/hojokin/index3.html

外務省が国内における外交シンクタンクの強化のために補助金制度を設けることで、それにより日本の外交力、国益の増進が期待される、ということです。
この事業は、応募制(競争型)です。簡単にいうと、我こそは、という団体が挙手して、私達ならこんな研究ができます、とアピールする形。
外務省が団体を指定するものではありません。

応募団体が各自に外務省の基準に沿った企画を立案・提出し、外務省が審議した上で、採用されるかどうか決まるわけです。

東大先端研内に設置された、東京大学創発研究オープンラボ(ROLES)は、2023年度から外務省補助金事業を3件採択されています。

発展型総合事業
⚫︎「ポスト•ウクライナ」世界を生き抜くための外交•安全保障の構想と研究能力の抜本的強化
⚫︎国際理念と秩序の潮流:日本の安全保障戦略の課題

総合事業
⚫︎自由民主主義秩序を支える情報プラットフォームの構築

(*調査研究事業についてはROLESが入っていないので省略。)

評価項目

ここからは評価内容の項目。
ちょっと苦手な人が増える、お役所の文章になります。
(次の項目「評価項目について雑な解説」にて、中身をかなり縮めています)

外務省の公開情報通り、順番に書いていきます。

(1)補助事業の成果
【基礎的情報収集・調査研究】
❶他の類似事業と比べて新規制があったか、研究成果により新たな知見が得られたか。また、外交に資する政策志向の研究がなされたか。
❷事業テーマ及び補助事業者の企画に基づき、情報収集及び調査研究が的確に行われたか。
【機動的かつタイムリーな国内外への発信】
❸海外のシンクタンクの動向も参考に、広報責任者を設置する等の措置を講じて、訴求対象ごとに、発信のタイミング、形式、内容等を工夫し、戦略的な発信に意を用いているか。
❹補助事業者・研究者個人によるインターネット、SNS等による広報やセミナー・シンポジウムの実施・参加等を通じ、日本の主張・視点の国際社会への発信が機動的・タイムリーかつ積極的になされたか。その結果として国際世論の形成に参画することができたか。
❺補助事業者・研究者個人によるインターネット・SNS等による広報やセミナー・シンポジウムの実施・参加等を通じ、国民の外交・安全保障に関する理解増進に取り組んだか。また、その反響があったか。
【外国シンクタンク・有識者との連携、ネットワークを通じた国際世論の醸成への貢献】
❻研究過程における外国シンクタンク・有識者等(在日有識者、外交官、外国メディア関係者を含む)との定期的な討論や共同研究等を通じ、諸外国の視点や海外シンクタンク・有識者等のネットワークを取り入れた調査研究や、日本の立場や見解に関する外国シンクタンク・有識者等による理解の増進に取り組んでいるか。
❼G7、安保理常任理事国以外の国のシンクタンクとの意見交換・セミナー実施を通じて、我が国の情勢認識及び外交施策に関する理解増進、並びに我が国にとり望ましい国際世論の醸成に取り組んでいるか。
(2)補助事業実施体制・実施方法
❽若手、女性、地方在住研究者を積極的に登用しているか。若手研究者の育成(英語による発信力の強化を含む)に取り組んでいるか。
❾複数の分科会や研究会がある場合、それらの間の有機的な連携が取れているか。単一の分科会・研究会のみの場合は、分散的な個人研究に留まらず、研究者間で連携して調査研究・対外発信が実施されているか。
➓外務省等の関係部局とのコミュニケーションを構築し、政策立案上のニーズを把握し、それを踏まえて効果的にアウトプット・政策提言を行ったか。
⓫補助事業者のホームページ上に、研究部門、研究者個人(研究実績、写真、連絡先等)の情報を充実させ、研究内容及び研究者の見える化に努めているか。
⓬組織自体の外交・安全保障政策に関する政策提言能力及び国際発信力を強化し、国際的な議論の先導に努めているか。
⓭グローバルに活躍する多様なシンクタンク人材の発掘・育成に意を用い、これら人材の国際的な発信力強化に取り組んでいるか。
⓮補助金事業事務処理マニュアルに沿って事業が実施されているか。

以上です。


評価項目について雑な要約

Awiの主観で、とても雑に要約しました。

(1)補助事業の成果
【基礎的情報収集・調査研究】
❶研究に新しさがあるの? 外交に役立つ方向での研究がされているの?
❷事業テーマ(外務省)と、企画(各団体が提出したもの)に基づいて、情報収集と調査研究がきちんとされたの?

【機動的かつタイムリーな国内外への発信】
❸海外のシンクタンクの動きも参考に、広報の中の人を置くなど工夫してる? 研究を知ってもらいたい対象それぞれに届くように、戦略的な発信を心がけてる?
❹各団体や所属個人が、ネット&SNS等で広報したり、セミナーやシンポジウムを行なうことで、日本の主張や視点が世界に向けてタイミングよくきちんと情報発信されていたかな? その結果、国際世論づくりに関わることができてる?
❺各団体や所属個人がネット&SNS等で広報したり、セミナーやシンポジウムを行なうことで、外交・安全保障への理解が国民に深まるようにしていたかな? その反響はあったかな?

【外国シンクタンク・有識者との連携、ネットワークを通じた国際世論の醸成への貢献】
❻外国のシンクタンクや有識者等との定期的な討論や共同研究等を行なって、日本の立場や見解を、外国のシンクタンクや有識者等に理解してもらえるように取り組んでる?
❼G7と安保理常任理事国以外のシンクタンクとの意見交換やセミナーを行なって、日本の情勢や外交についての理解を増やし、日本にとって有益な国際世論が出来るように取り組んでる?

(2)補助事業実施体制・実施方法
❽若手、女性、地方在住研究者を積極的に登用してる? 若手研究者の育成に取り組んでるかな?
❾分科会や研究会が複数ある場合、連携取れてる? 分科会や研究会が1つしかない場合は、研究者間で連携して調査研究・対外発信できてる?
➓外務省とコミュニケーションをして政府が必要とするものが何なのか知って、有益なことができたかな?
⓫ホームページ上に、研究内容及び研究者について、情報たくさん載せて、よくわかるようにしてる?
⓬外交・安全保障政策の意見が言えるようにして、世界への発信を強化して、国際的な議論のリーダーシップが行えるように努力してる?
⓭世界で活躍できるような様々な人材の発掘・育成に気を配り、その人達が国際的な発信力を行なっていけるように取り組んでるかな?
⓮マニュアルに沿って、正しく事務処理ができたかな?

かなり縮めているので、外務省が求めていることと違っていたら私のせいです…
以上です。

中間評価結果

外務省の情報はこちら
2023(令和5)年度実施事業 中間評価結果

5段階評価で「B」が通常ということですね。
⓮のみ、BまたはCの評価です。

ROLESの結果を載せておきます。

発展型総合事業
⚫︎『ポスト・ウクライナ』世界を生き抜くための外交・安全保障の構想と研究能力の抜本的強化

⚫︎国際理念と秩序の潮流:日本の安全保障戦略の課題

総合事業
⚫︎自由民主主義秩序を支える情報プラットフォームの構築

以上です。

次に、ROLES以外の団体の結果も見ながら比べてみましょう。

中間評価結果、比較

発展総合型事業は3つです。

発展A  東大先端研(ROLES)
「ポスト・ウクライナ」世界を生き抜くための外交・安全保障の構想と研究能力の抜本的強化

発展B  国際問題研究所
アジア・大洋州地域における安全保障上のリスクの実態

発展C  東大先端研(ROLES)
国際理念と秩序の潮流:日本の安全保障戦略の課題

青部分はROLESの評価

評価B以外をピックアップしてみます。

評価A
⚫︎発A…❶❷ 
⚫︎発B…➓
評価C
⚫︎発A…❾➓
⚫︎発B…❾
⚫︎発C…❾➓

⓮事務処理については、すべての団体が評価Cで、指導が行われたようです。

❾分科会や研究会の連携等の項目は全団体がCですね。

➓の外務省とのコミュニケーションをとる項目では、ROLESの事業が2つともCです。逆に国際問題研究所は、A評価。

❶の新規制の項目、❷の目的やテーマに沿った研究調査の項目については、ROLESの発Aが、A評価です。


次に、総合事業は5つ。

総合A  東大先端研(ROLES)
自由民主主義秩序を支える情報プラットフォームの構築

総合B  日本国際問題研究所
経済安全保障の観点からの我が国の強みや脆弱性を踏まえた、望ましい国際経済環境のあり方

総合C  地球環境戦略研究機関
気候変動がもたらす安全保障環境の変容の分析とそれを踏まえた日本の外交・安全保障アプローチの検討

総合D  中曽根康弘世界平和研究所
東アジア国際問題の内在的考察:地域研究から見る朝鮮半島・台湾海峡問題

総合E  日本国際問題研究所
日本周辺の主要国の国内要因が国際秩序の変容にもたらす影響

青部分はROLESの評価

⚫︎評価A
総B…➓
総C…❶
総D…❽
総E…❽➓

⚫︎評価C
総A…❾⓫
総B…❽
総C…❾
総E…❾

⓮事務処理については、総Bと総Dが評価Cで、指導が行われたようです。

❽地方在住者、女性、若手登用の項目は、総Dと総Eが、A評価。
総Bが、C評価。

➓外務省とコミュニケーションをとる項目では、総Bと総Eが、A評価。

❶新規制の項目は総Cが、A評価。

❾分科会や研究会の連携等の項目は、総Aと総Cと総Eが、評価C。

以上です。


評価まとめ

ここまで見ていて、最もC評価の項目が多いのが❾です。
ROLESは全ての事業でC評価。結構分科会が多いのですね…
発Aでは研究会が7つ、発Cでは9つ、総Aでは5つ。

なかなか大変そう…

評価が分かれるのが➓。
内訳を見ると、A評価を取っているのが、発B・総B・総E。
すべて日本国際問題研究所の事業です。

逆に、C評価なのが、発A・発C。
これはROLESの事業ですね。

ここで日本国際問題研究所のホームページを見てみます。

理事長も所長も、外務省出身ですね…この環境で、外務省とコミュニケーションが取れなかったらどうかしているという案件ですね。

ROLESには外務省関係者がいないので…

ともあれ、これは3年事業の1年目です。今回の評価結果を受けて、どのような改善が行われたのか、その評価はまた一年後、楽しみに待ちたいと思います。

今回は、以上です。

サポートいただいた場合は、すべて先端研ROLESへ寄付します。 ただし、どうも事務手数料その他で15〜20%引かれてしまうらしいのです。もし可能でしたら東大基金へ直接寄付していただくのが最も金銭的ロスが少ないと思います。よろしくお願いいたします。