ネタバレしかないすずめの戸締りレポ(後半戦)

物語の始まりから神戸までは前回記事をご覧ください。
ネタバレがふんだんにありますので、閲覧には十分にご注意ください。また、筆者の根拠のない考察が含まれているため、苦手な方は読まない方が心の安寧が保たれる、かもしれないです。

では、本題に入りましょう。
神戸編にてルミさんが営業しているはぁばぁはダイジン効果で大盛況。あの猫すごいぞ。ちかの両親が営んでいる旅館もそうだったが、どんだけ客寄せしているんだ。

まぁでも猫って言ったら招き猫だもんな、そら客来るわ。

時間軸を戻していく…
神戸での戸締りでは草太は「体がなじんできたんだ!」と言いながら全力でダイジンを追い詰める。
いや、いくら体になじんだからと言ってその跳躍力は出ないだろ・・・

そして、なんとここでダイジン捕獲。
ここですずめの椅子もとい草太にダイジンの爪ががりがりなるのだが、自称音フェチの私はこのなんとも言えぬ音が最高に心地よかった。一瞬なので、ぜひ耳を澄ませて聞いていただきたい音の一つだ。本当に動物の爪が木に擦れる音そのものだ。

そしてここでダイジン様意味深発言。
要石はもう自分ではないというではないか。ということは・・・。

そして椅子と猫が戯れている間にすずめは孤軍奮闘。
この女子高生の握力と腕力も目を見張るものがある。どうやって観覧車によじ登ってるんだよ。

やっとこさの思いで扉にたどり着いたすずめ。そこで目にしたのはおぞましいミミズの中に見える懐かしい姿。常世の中に母の姿を見ていた。

草太がいくら呼びかけてもすずめは母の姿を追って進んで行く。
それがゴンドラの中ということはすっかり忘れて。
窓の外に体を半分以上乗り出したその時、草太の必死の想いがこもった祝詞が響く。

何とか我に返ったすずめは草太と共に戸締りを成功させる。
このシーン何度見ても心臓がキュッとなる。そして、すずめの母へのぬぐい切れぬ思いが詰まっていると実感する。

明るく見せているが彼女だってまだ高校生。多感な時期の彼女には母親の存在が必要だったのだろう。

そして戸締りを終え、草太と話している間に常世の存在を知るすずめ。
「常世はこの世のすべての時間が同時に存在する場所。死者の赴く場所なんだそうだ。」
皆さん。このセリフも最後まで覚えていてほしい。

戸締りを終え、ルミさんの営む酒場に戻ったすずめたちは、ポテサラ入り焼うどんを食すのだが、これは本当に合うの?!とびっくりした。コラボカフェにてこの再現メニューがあったため注文したが、

マジでうまい。めちゃくちゃ太りそうだけどうまい。脂質×糖質最高。
皆さんもぜひやってみて。もちろん、目玉焼きも添えて。

さて、そんなこんながあり眠りについたすずめと草太。この時、草太の精神には限界が来ていた。

どんどん遠ざかる人間としての感覚。意識。
草太の意識が沈んでいくシーンの背景には燃え盛る街並みが見える・・・。
そして場面が切り替わり、古びた扉と恐竜のような動物の骨と海の広がる世界に。

この場面の色合いも薄いのだ。
すずめの退屈な日常とはまた異なる、感覚が閉ざされていくような寂しささえ匂わせる色合い。
この感覚はかつて私も経験したことがある。

ある日突然普通の生活が送れなくなり、世界においていかれたような、どこまでも続く孤独の色。そんな色合いであった。

だが、この時の彼にはすずめがまだいた。
声に導かれるように開かれる扉、そして目覚めるとダイジンが東京にいると発覚する。

馬車馬のごとく歩かされ、なんとかついた草太宅ですずめは草太の人気度とミミズの歴史を知る。

つい先日関東大震災の特集番組がTVでやっており見てしまったのだが、この時抑えられたミミズの絵は関東大震災の時の火柱の絵をモチーフにされたのではと思うほどそっくりだった。
3.11といい、関東大震災、数々の後ろ戸のある場所は私たちの生きている現実世界の大災害があった場所とリンクしているのだ。
「ここで多くの人の生活があり、それが脅かされた。しかし、それでも強く生きている」
そんなことをメッセージとしている、ような気がした。

そして自然災害の兆候は私たちは知る由もないが、動物たちは感じ取る。
それを表現するかのように、ビルの窓、川の水面それぞれに大きなミミズの影があるのに人間はいつも通り生活をしている。
カラスたちは鳴き、その目に巨大なミミズを写しているのに・・・。

東京の後ろ戸、東の要石の開放。これらは多くの現実をすずめと草太に突き付けた。
要石の役割が草太に移っていたこと、鍵穴からわかるようにその場所が日本の象徴がいる場所だったこと、常世に草太が行ってしまったこと。

この時戸締りをしたときに東京の後ろ戸の鍵穴は崩壊してしまった。
他の後ろ戸ではそんなことはなかったが、ここだけ崩れ去っているのだ。
つまり、東京の後ろ戸はもう、後ろ戸としての機能を失ってしまったのではないだろうか。祝詞を上げていなかったからただ、閉まっただけなのではないだろうか。

草太を失った悲しみからダイジンに「だいっきらい!!」と言い放ったすずめ。初見の時は私もなぜダイジンがグッズ化したのか分からないくらい嫌悪感を抱いたのを覚えている。(ごめんねダイジン・・・)

そしてしおれてどこかへ消えていくダイジン。
人々から忘れ去られた神は消えていくしかなく、すずめの「うちの子になる?」というある種の信仰心で取り戻していた力は消えてしまったのだ。
「もう二度と話しかけないで。」
大好きなすずめに言われてしまったショックな言葉。つらい。

頼る先がなくなってしまったすずめはなんとかして草太の師匠であり祖父である羊朗おじいちゃんのもとへ。

おい、病人を叫ばせるんじゃない。
そしてこの時、すずめははっきりと
「死ぬのは怖くない!でも草太さんのいない世界は怖い!」
と言い放つ。今まで「ごめん、うまく言えないや」と自分の思いを他人には隠して閉ざしてきた彼女が、だ。初めて自分の気持ちを他人にはっきりと伝えたのだ。

自分より他人の命が大切なんか。まぁわしらも同じようなもんか。
そんな気持ちがおじいちゃんに芽生えたのか、気付いたのか羊朗おじいちゃんはすずめに常世に行くヒントを与える。

ここから決意を固めたすずめは旅立ちの準備をする。
傷まみれの体を清め、いざ神の世界へ。

ナイスな所に草太のお友達芹沢君再登場。
草太の部屋であった時は二度と顔を合わせたくないみたいなこと言っておきながらちゃっかりお友達の心配しちゃうかわいいチャラチャラした大学生。素直になれよ、青年笑

さらにあの手この手で追ってきた環さん登場。
その上にお前どっから来たねんのダイジンも合流。3人と1匹?のドキドキドライブが始まるのである。

ダイジンはすずめに何を考えているのかと問われても何もしゃべらなかった。大好きだったすずめから言われた「もう二度と話しかけないで」という言葉を守っているのだ。もう、ここから健気さに全私が泣いた。

そしてサダイジンに心の奥底をさらけ出された環さんもすずめに「うちの子になりな」と言ったが、そんなこと言ってない出て行けと言われたときにその言葉の鋭さを痛さを理解していたダイジンはサダイジンに牙をむいた。体格差がありすぎて敵わないとわかっているはずなのに大好きなすずめのために立ち向かったのだ。マジ尊い。グッズ化した理由をここで理解したわ。

旅は3人と2匹?の大所帯に。
サダイジンとダイジンがしゃべってしまったが故に芹沢カーは事故りかけ土手下へ。
元からポンコツカーだったため、残り20㎞で力尽きてしまった。

そんなところにすずめちゃん決死のヒッチハイク!!!
神戸に行くときはあんなに恥ずかしがってたのに!めちゃくちゃ成長している!!!

そして環さんママチャリで爆走!
サダイジンによって明かされた心の内は確かにあったが、それだけじゃない。とお互いに確かめるようにやさしく温かくそして吹っ切れたように言った。それを理解できたすずめ。この時初めて二人は家族になれたのだろう。

12年ぶりの里帰り。
大切なものはいつもそこに。幼少の頃に大事に大事に記録していた絵日記からすずめの後ろ戸の在り処を見つける。

大まかな場所が分かったのに見つからない。焦るすずめに「すーずめっ」とよく聞いた猫の声。そう、ダイジンが最後の扉へと導くのである。

今までの誤解が解け、ダイジンに「ありがとう!」というすずめ。
嬉しくて走って元の健康的な姿に戻ったダイジン。二人が通じ合った瞬間、私の涙腺は崩壊した。もうこっからずっと涙。

常世へと無事にたどり着いたすずめ一行。
ここのシーンはぜひ、その目で見ていただきたい。圧巻。猫強い。愛深い。
ダイジン大好きだよ。

草太が決意の祝詞をあげ、それを受け止めたサダイジンの協力により、無事にミミズを封じることができた。

全てが終わったかと思ったその時、遠くに見えるは小さな子供。
そう、幼き日に迷い込んだすずめ自身だった。

ーすべての時間が同時にある場所ー

当時すずめが見たの母の姿ではなく、自分自身だったのだ。
そしてここで皆さん復習タイム。
すずめは他人に説明を求められると「ごめん、上手く言えないや」とはぐらかしてしまう。

だが小すずめに椅子を見せお姉ちゃん誰なの?と聞かれたときのすずめは今までのすずめとは違う。
「すずめの、明日」
とはっきり答えるのだ。そしてこれからはいろんな人に愛され愛す未来があると、光の中で育っていくのだというのだ。あんなに自分の気持ちが上手く伝えられなかったのに、自分のために受け入れ、強く、言い聞かせるように。

この成長と言葉は深く深く刺さった。
まるで見ている私にまで言ってくれているようで、涙が止まらないシーンだ。人生というのはどうしても暗い場所にフォーカスしがちだが、悪い人生ではなく、必ずどこかに光がさしているのだ。

そんなことを言われているようで、「もう少し、この世界を生きてみよう」そんな気にさせてくれる。

長々と書いてしまったがまだまだ魅力的な場面はたくさんある。
ぜひ、1度でもいいから「すずめの戸締り」を観てください。人生に迷いがある人ほど刺さると思います。単なるボーイミーツガールの物語ではなく、過去を抱えて生きてきた少女の物語。そんな作品です。


あなたは光の中で生きていく。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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