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好きな人を労働世界から追い出そう



この世に と言うと割と居そうなので、あなたの周りに、好きで仕事をしている人はどのくらい居るでしょうか。
また、好きなことを仕事にしている人、仕事をしながら好きなことをしている人。もっと言えば、仕事によって好きなことをする時間や体力、リソースをある程度には割かれずにいる人。
ここで言う「好きなこと」はろくに定義されていないので難しいですが、私の体感的には多いとは言えません。

多くの人が、何が理由という訳でもなく、なんとな〜く「明日学校か〜」「明日から仕事だわ〜嫌だな〜」と言うように、私もずっとそれなのです。もしくはそれをより強くしたものかもしれません。
私のこの感情には、誰にでもあるなんとなくのダルさの上に、
「何故自分がこんなことをしなきゃいけないのか?」
「これをさせるために親は自分を産んだのか?」
「もっと楽させろ」
など、そんなの持っていてもしょうがないというような怒りの要素が多分に含まれています。これは、持ち前の自我と、自分を大切にする強すぎる気持ちのせいかもしれせん。
その感情は、不登校になるくらいには内容と環境が嫌だった中学を卒業してからも変わりません。私が今までやっていた3つのバイトは全て内容も環境もかなり良い方だったと思います。その上学校とは違って時給が発生するのです。
それでも尚、あの気持ちは無くなりませんでした。要するにもう、労働というそれその物が私の中では悪になっていたのです。

私はつい最近、
「人間は、それが好きという訳でもないのに人生のほとんどのリソースを学校や仕事に割いている人がほとんどよね?キモ。」
と言う真実に気付き、なぜ自分は週の半分以上バイトに行っているのだとリビングで喚いた結果、他人の仕事辞めさせ師の勧めと、その人に辞めさせられた経験のある人が打った文章で店長に仕事辞めLINEを送りました。その気持ちよさに、思わずしばらくの間体を反転させたままでいました。(サムネの写真がそれです。)
私は怠惰なので、続けていたことを辞める瞬間がたまらなく気持ちいいのです。

今のは余談でしたが、私が言いたいのはあの鍵カッコの中のことです。
お前、それでいいのか?もっと休み作って私と遊んでくれや、の意味も含んだりします。
好きな人には、できるだけ好きなことをしていて欲しいし、それが出来る時間と体力を余していて欲しいのです。

そして少し話は戻り、最近の私がより労働に対して嫌悪を抱くようになった大きな要因について。単純な話、労働時間が長すぎる上に環境も良くない仕事をしていて潰されている人に何人か会ったからです。
この世にそういう人が沢山いるとは分かっていても、やはり実際に会って直に話を聞くとまた違います。そうしていると、本当に
「もうとにかく労働をやめて!」
以外の感情が無くなります。
私の隣の部屋に住んでいる労働者は、2日おきくらいでしか帰って来ず、それも深夜1時前後にやっと帰ってきたと思えば、その日の昼にはまたいつものカバンを背負って出ていきます。もうそれを見ているだけで私の労働を敵視する気持ちが強くなっていく訳です。
何が彼女をそうさせているのか、他ならぬ労働です。

この様にして私は、他人が労働により睡眠や時間や健康を害されている話が、ヤングケアラーの話ぐらい嫌いになったのです。



そんな意識を強く持っている私の、これを書いている前の日の話です。私はなんとなく1、2年前の自分のツイートを見返し、キモさと臭さとおもんなさで体調を悪くして動けなくなっていました。私にしては本当に珍しいことが、それによって食欲も失せて、昼の二時以降何も食べずに横になったままでいました。
しかしその日の夜10時は、私の好きなアイドルの特番が始まる時間。且つ我が家のエセルンバ「ユフィラティ」が床を這い出す時間なので、私は「今じゃない!今じゃない!」と発狂しながら床を片して、座椅子に縦になりました。
ここからは、その特番を見て、既に不安定になっていた感情がデカくなってしまった私の話に入ります。

内容としては、ダンスを得意とするグループのアイドルと、全国1位の高校ダンス部と、ダンス得意芸能人チームの本気の三つ巴対決というものでした。予告では、出演者たちが本当に真面目に企画と向き合っていたようで、涙ながらにコメントするシーンが使われており、私は普段そういったもので泣かないので、これは自分とこの人たちとの温度差でちょっと冷めてしまうやつじゃないかと思っていました。なのでオンエアも正直期待していませんでした。

そんな、番組が始まって数分。忙しいアイドル達の練習が長引き、時計が深夜1時を回っているのを映すシーンがありました。ここでの私の感情はもうお察しと思います。
一般世間に多い朝何時から夜何時までという労働形態は、彼らのような売れっ子芸能人のそれとはどうしても違うものであることや、どう見てたって忙しい彼らには、視聴者側には見えない部分の労働が沢山あることなどは、そう考えずとも分かります。それでも、映像として分かりやすく「長時間労働」を見せられると、労働のアンチのオタクからすればたまったもんじゃないのです。
そして、私の感情のトリガーとなってしまったシーンがすぐこの後です。


「○○さん、明日(もはや今日)朝6時からドラマですよね?」
「○○さんは明日は?」「北海道です。」

泣きました。言葉通りの意味で、文章における感情の表現としてでは無く、本当に声を出して泣きました。
やめてくれ、私は労働で人が寝れない話が嫌いなのに。私の好きな人たちがまさにそうなっているのをわざわざ映像にして突き刺して来ないでくれ。そんな涙でした。
ちなみにここで1度泣いていたことで、番組の雰囲気と私の温度差が無くなり、以降かなり見やすくなります。

そして対決本番。彼らのダンスは本当にすごいと思っているし、私でも知っている有名な振付師が作ったものを披露するとのことで、番組の面白さはさておきそのパフォーマンスには元々期待していました。
彼らの披露順は最後で、斜め一列に座り、センターの1人だけが立った状態で始まります。まずその時点で立ち姿が美しすぎて、1発狂しました。
そのすぐ後です。最初は右端にいた1人が、華麗にセンターの位置に着きました。先の労働後即北海道労働男です。
彼は、「自分はこのグループの中で、ダンスでは劣る方だ。しかしダンスを持ち味とするグループなので、自分が足を引っ張る訳にはいかない。」と言っており、そういった自己評価を持ち、そういった気持ちも抱えてパフォーマンスの向上に励んでいる人でした。
その上、この時期の彼はいくつかの映画やドラマなどの単独の仕事が重なっており、ただでさえ多忙な彼らの中でも最も時間の無いメンバーです。

そんな彼の最初の見せ場が、あまりに良すぎたのです。泣きました。ここから彼らのパフォーマンスが終わるまで、声を出して赤子のように泣きました。普段、心はしっかり動いているのに何故かそれが涙腺には繋がらず、なかなか泣くことの無い私が、心配して部屋から人出てくるんじゃないかと思うくらい泣きました。部屋には誰もいなかったので心配されませんでした。

しかしこれは、パフォーマンスが素晴らしすぎて泣いていたのではありません。それがゼロとは言いませんが、割合のほとんど、労働が憎くて泣いていたのです。
パフォーマンス中の彼らは、とにかく美しくて愛おしくて、力に満ち満ちているように見えました。
一方私は、労働=悪というとても短絡的な意識を持っています。そこで私に発生した感情はこうです。

「こんなに素晴らしくて大切な美しいものたちに、労働をさせるな!!!!!」

デカいでしょう。しかしまだあります。アイドルのことを語る私のこの文章に、ずっと疑問を持っていた人はいなかったでしょうか。
「アイドルが視聴者に見えるところでやっていること、それの全てがお前が忌み嫌う労働だろう」
と。そうなのです。私がこんなにも愛しているその対象であるアイドル達の姿は、全てが「アイドル」を職業でやっている人間の、労働をしている間の姿なのです。
誰かの趣味は、また別の誰かの労働あってのものです。

そんな正に労働中の彼らの映像を見て。見るからに楽しそうに、きっと目には見えない、形の無いものをフルパワーで放出して踊っている彼らを見て。
いつも嬉しそうに仲良さそうに踊り、踊りが好きだと言い、それが自分たちの持ち味だと、プライドと信念を持って言っている彼らに、オタクはもう
「ずっと9人でこうして楽しく踊ってて欲しいだけなんじゃん…もうそれ以外のしたくないこと何もしないでいて欲しいんじゃん…こういうの以外の労働…すな…」
の感情になりました。

労働はクソだ、みんな嫌々なくせにほぼ毎日やらされてるんだ。みんなの楽しみと健康を邪魔するのはいつだってこれだ。と疑いもなく言うような私がいて、そこに、確実に「望んで楽しんでやっている、素晴らしい労働」があることを叩きつけられたのです。
もう感情がデカい上にグチャグチャにならざるを得ませんでした。

好きな人により良い人生を送っていて欲しい、よって労働しないで欲しい。
そんな私の欲望ってなんですか?そう思うできごとでした。
それでも、彼らや私の好きな人たちが、したくないことはせず、且つそれで生活ができるようなファンシーな世界があれば、すぐにでも労働をやめて欲しいものです。

まあこれを読んでいるようなあなたたちはだいたい望まぬ労働をしているだろうと思うので早くやめてください。

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