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みんな静か

ストンと秋になった。夕方になって、散歩に出かける。知らない路地に入って進むと、知っている場所に出た。「ああ、ここに繋がるんだ」と一人納得する。

薄い青から薄いオレンジのグラデーションの空は、よく言われるように、夏のそれより高くにあるような気がする。道すがらに見る植物達も、それぞれのやるべきことに静かに集中しているような感じで、適度な距離感がある。気持ちの良い無関心という感じ。春の植物達は、うかうかとしていて思わずフレンドリーになってしまっている感じがする。それはそれでおおらかさがあって、楽しいし気持ちが良い。

時々通る道に、お年寄りしかいない古い喫茶店がある。通りに面して薄い茶色のガラス張りで、オープンな割に常連さんしか入れない雰囲気がある。ガラスも元から茶色のはずなのだが、店が古くなるとともに段々と色づいていったような雰囲気をたたえている。いつも2、3人のお年寄りが、それぞれ離れた席で新聞を読んだりお茶を飲んだりしている。一人一人がそれぞれのやることに集中している感じがする。入るにはとても壁が高いが、一度入ってしまえば居心地の良い店なんだろうなと思う。

途中でパン屋で買い物をする。パンはいつ食べても美味しいけれど、季節の中では秋がとても似合う。

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