窓際のメモ

細長い間取りの部屋に住んでいる。窓は一面にしかない。毎年この季節はほとんど一日中開けはなしてある。小さな虫が網戸をくぐり抜けてこようとするのを、デコピンで落としたりする。遠くで救急車がサイレンを鳴らしている。

ベランダに足を投げ出して本を読む。洗濯物が風で揺れる。ハンガーがカチャカチャと音を立てる。紫外線で脆くなり砕けた洗濯バサミの破片が落ちている。子供が道を楽しそうに通る声を聞きながら、ページをめくる。お茶を入れに行く。遠くで救急車がサイレンを鳴らしている。

真夜中、友人に手紙を書く。書きたいことを書けていない気がしてもどかしい。独り言みたいな文章で、抽象的で、こんな手紙を出して良いのだろうかと思う。大きなため息をつきながら窓際に行く。花の匂いが漂ってくる。秋に匂う花はキンモクセイだが、この時期に匂う花はなんという花だろうと思う。検索すればすぐにわかると思うが特に調べない。ベランダに出てヤンキー座りをする。向かいの家の窓の電気が消える。明日は手紙を投函しに外に行こうと思う。遠くで救急車がサイレンを鳴らしている。

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