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高橋佑樹に会えるまで

社会人野球を見たことがなかった私。どうしても今年、社会人野球デビューをしたい理由があった。撮りたい野球選手がいるのだ。

高橋佑樹。JR東日本野球部ピッチャー。

いや、高橋佑樹の所属は、東京ガス硬式野球部のはずだ。しかし今日、東京ドームのマウンドに立つ高橋佑樹は、たしかに胸に「JR」と刻まれた縦縞のユニフォームを着ていた。

都市対抗野球大会には、「補強選手」という制度がある。都市対抗野球大会予選に出場したチームから、本大会に補強選手として呼ぶことができる。

第91回都市対抗野球大会 予選規約(抜粋)
9. 第1次および第2次予選に出場するチームは、試合に出場することができる全選手を記載した「出場承諾書」を作成し、それぞれ指定された期日までにエントリーしなければならない。
  ただし、代表権を獲得し本大会に出場する時は、第1次および第2次予選の出場チームから3名以内を選出し、補強選手として出場させることが出来る。
  この場合、選出された選手は必ず協力出場しなければならない。

高橋佑樹の所属する東京ガスは、東京都二次予選で敗れ、本選出場はかなわなかった。しかし、補強選手としてJR東日本から声がかかり、本選に出場することになった。

変則的ではあるが、社会人1年目ながら、この大舞台を踏むにふさわしいピッチャーなのだと、頼もしく思った。

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高橋佑樹は、仲間だと思っている。彼を知ったのは、2019年秋。東京六大学野球秋季リーグで優勝した、慶應義塾大学の先発ピッチャーが、高橋だった。

そこで知った、高橋のプロフィール。スワローズジュニア出身の彼は、生粋の“ちなヤク”!だった。
部屋の一角は、スワローズグッズにあふれた“スワ棚”。打撃フォームはあこがれの青木宣親を完コピ。慶応の優勝パレードには、自身のあだ名「Bomber」と書いた、これまた自身で赤と青に塗った(と思われる)ビニール傘を差していた。

これほど屈託のないヤクルト愛を前面に押し出す姿勢に、私も触発された。笑
ちょうど、野球を書く勉強を始めていた私は、ボンバーに負けてたまるか!という気持ちで、日々ヤクルト愛を文字に乗せている。

ヤクルトファン歴は私の方が長い。ボンバーが生まれる遥か昔から、ヤクルトを見つめている、ヤクルトおばさんだ。
でも、ヤクルト愛のお手本になる人、見習うべき人。それが、ボンバー!高橋佑樹だった。

高橋佑樹のピッチングを、写真に収める。初めて生で見るボンバーの投球。投げるかどうか分からなかったが、左ピッチャーということは知っていた。1塁側内野席を取って正解だった。

セットポジションに入る前、前かがみになる。そんなことも、今日初めて知った。

ボンバーの、「っしゃ!」という声が、はっきり聞こえる。無声の応援は、選手の声を引き立たせる利点がある。
これだよ、これ。この躍動感!野球場にいる野球選手は、いつも私をワクワクさせてくれるのだった。

高橋は、0-1で迎えた4回、Honda熊本の山本卓弥にソロホームランを浴び、同点に追いつかれる。
山本もまた、ルーキーイヤー。亜細亜大学から加入した同級生選手だ。右手のグラブでももを叩き、ベンチに戻ってくるボンバーは、心底悔しそうな顔をしていた。

次の5回、ノーアウト満塁でランナーを背負ったところで、ボンバーはマウンドを降りた。4回0/3、1失点。バックスクリーンを見つめた後、ベンチに戻るボンバーの左手と帽子のつばは、ロジンで真っ白だった。

その後、3点の追加点を許したJR東日本は、1-4で敗れ、第91回都市対抗野球大会を終えた。

自宅に戻ると、早速、今日の試合の記事が出ていた。ボンバーのコメントが紹介されている。

「申し訳ない」。そうなるだろう。補強選手として、チームの力になる。そのミッションを背負って臨んだ試合だったはずだ。トーナメント方式の都市対抗は、負けたら終わり。明日はない。敗戦の責任を一手に引き受けているようで、読んでいて胸が痛かった。

私は今日、高橋佑樹というちなヤク仲間の野球を、初めて見届けることができた。だから私は、明日から頑張れる。

ボンバーは、どうだろうか。悔しい気持ちを抱えて前を向かなければいけないのもまた、野球選手の試練だ。
ただ、ボンバーピッチを見た野球ファンが、ここまでワクワクし、「また野球を見たい」「ボンバーに会いたい」と胸躍らせている。そのことが、ボンバーの後押しになればいい。そう心から願っている。

そしていつか。いつか直接話を聞いてみたい。高橋佑樹に会えるその日まで、私は書くことの腕を磨き続けようと思う。
マスターピースができるまで。これが私の、今のビジョンだ。

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