見出し画像

エビデンスと意思決定Report No,2 『リハビリテーションにおけるエビデンスと意思決定』


今回は、『Ebidence Based Medicine(EBM)はエビデンスだけでは成り立たない』というテーマでまとめております。
そもそもEBMはエビデンスのことではないの?と思われた方は、是非前回のも合わせて読んでいただけますと、理解が深まると思います。

最後までご一読いただき、改めて自己に疑問を投げかけていただければ幸いです。

1.EBMの誤解

皆様の職場でこのようなことを言う方はいませんか?
『エビデンスに基づいた介入をすればEBMだ』、『療法士の経験で臨床をしてはいけない』、『エビデンスが低い介入はダメだ』、『エビデンスでは個別性に対応できない』
いかがでしょうか?これらすべてEBMに対する誤解になります。
前回のコラムでもお伝えしたように、EBMは下記のような4つの要素を統合することと定義されています1)。

画像1

 
つまり、エビデンス“だけ”、臨床経験“だけ”ではなく、それらを含め臨床状況や患者の価値観を統合して最適な医療を提供することが求められます。
また、エビデンスもBest available evidenceということに着目してほしいです。エビデンスには下記のような階層が存在しており、それらの中で、目の前の患者に“最適な”エビデンスを考える必要があります。

画像2

 
また、リハビリテーションにおけるエビデンスはまだまだ不十分であり、不確実性を多く含んでいます。すなわち、不十分なエビデンスだけで医療者が治療を展開することの危うさが理解できるかと思いますし、患者の価値観が重要になることも理解できるかと思います。

2.エビデンスの活用

では、どのようにしてエビデンスと患者の価値観、臨床状況を統合すれば良いのでしょうか?
そこで近年リハビリテーション分野で注目されだしているのが、Shared decision making(SDM)という意思決定手法になります。
SDMとは『治療オプション、利益と害、患者の価値観、希望、状況を踏まえ、臨床家と患者が一緒に健康に関わる意思決定プロセス』と定義されています2)。
SDMに必須4要素として下記のこと言われています。

画像3

 つまり、EBMにおいて、医療者と患者は対等に情報提供し、その情報をもとに医療者は患者の意思決定を支援していくことが求められています。その際に、医療者はエビデンスに関する情報、今までの臨床経験の情報を提供し、患者は治療や病気に関する価値観、希望に関する情報提供が必要です。
実際のプロセスは次回のコラムと、セミナー当日でお伝えいたします。

3.まとめ

 今回は『EBMはエビデンスだけでは成り立たない』という内容を中心にまとめさせていただきました。EBMにおけるエビデンスの立ち位置、患者の価値観の重要性について少しでも理解が深まったなら嬉しいです。
EBMの4要素を常に考え、目の前の患者に最適なエビデンスと患者の価値観、臨床状況を踏まえ、SDMを通じて意思決定支援を行っていくことがEBMの本質ではないかと思います。
次回はEBMの実践について解説したいと思いますので、是非楽しみにお待ちいただければと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


引用・参考文献
1) Muir Gray, Evidence-Based Healthcare, 2001
2) Charles C et al., Shared decision-making in the medical encounter: What does it mean? (or it takes at least two to tango). Social Science & Medicine, 44(5), 681–692.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?