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<3>友のダンナを狙ったら、イバラの道が開けた夜。

じじょうくみこが誕生して、この5月で丸10年。というわけで勝手に生誕記念⁉でウェブマガジン「どうする?Over40」に連載していた処女作の「崖っぷちほどいい天気」をこちらに転載しております。

2013年。不惑の40をとうにすぎても、路頭に迷いっぱなしの派遣独女・じじょうくみこでございます。一大決心で婚活を始めようとしたものの、いきなり結婚相談所などを利用する勇気もなく、最初に頼ったのは仲良しの女友だちでありました。ほんの勢いで相談したものの、事態は予想もしない方向へ転がり始め……。

そんなスットコドッコイな第3回をお送りいたします。
ちなみに友だちのチコとはすっかり疎遠になりました。

*** 2013年5月25日の記事***

友のダンナを狙ったら、イバラの道が開けた夜。

先日、友人ターコに孫ができました。

孫!

なんでこんなにかわいいのかよ

孫!


確かに若くして結婚・出産して、そのまた子供も若くして結婚・出産すれば、早い人なら40代でオバアチャンになれます。大人ですもの、それくらいはわかります、わかりますけど


グランマ!

親父にもぶたれたことないのに

グランマ!

ワイフにもマザーにもなったことのない人間にとって、グランドマザーなんて果てなさすぎて、思わず宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長よろしく「地球か…何もかもみな懐かしい…」とかつぶやいてしまう、じじょうくみこ@意外と真田志郎派です。

こういうニュースを聞くと、新しい生命の誕生を素直に祝いたい一方で、ターコが結婚して働きながら子供を育て上げ、その子供が新しい家庭を作っている間に自分はいったい何をしていたのかと、激しい虚無感に襲われます。

生きてきたことに後悔はしていない。いないけど「やるべきことをやってこなかった」という後ろめたさはある。この罪悪感はこの先きっと、死ぬまでついてまわるんだよなあ…。


                ハッ


あぶないあぶない、うっかりブラックホールに吸い込まれるところだった。おそるべし孫パワー。グランドマザーやマザーは無理でも、まだ私には「ワイフへの道」は残されている。はず! というわけで恥ずかしながら、コンカツを始めることにしたのです。合い言葉はそう、

NO DANNA , NO LIFE

ノー・ダンナ、ノーライフ! であります。DANNAをガイジンぽく「ダーナ」と発音するとモチベーションが上がります。

つっても、いきなり結婚相談所やお見合いパーティに走るには財政的・コンプレックス的にアレなんで、まずは「友人の紹介」から攻めることに。なにしろその道のプロ、All Aboutの恋愛ガイドさんが「年齢を重ねるほど、友達の紹介で恋がうまくいく!」と言っているのです。こういう時に身近なネットワークを使わない手はありません。

ところが。

友人の反応は想像以上に冷ややかなものでした。最も多かったのが「探してみるね」と言ったきり連絡ないパターン。そりゃね、アラフィフ女に「誰か紹介して」って言われても普通困りますよね、私なら困る。

次に多かったのが「いるにはいるんだけど…会わせられない」と言われるパターン。「いない」んじゃなくて「紹介できない」ときました。出た出た、四十路独身に対する「あいつ絶対何かあるよねフィルター」。ええ、ご事情お察しします。ここまで結婚できない人間は紹介できないっていうご配慮ですよね。私のことを案じてくださるその思い、嬉しい限りです。

そんなこんなで、早くもたちこめた暗雲に酸っぱい気分になっていたら、友人のチコがぽろりと言ったのです。

「私の友達にはいないんだけどさ、ダンナの会社に独身者がゴロゴロいるってよ」

神、降臨


考えてみれば男同士のほうが、知り合いは多いに決まっている。「友のダンナの友」という豊穣なる大地。なぜ今までそこに気づかなかったのか、今さらながらおのれの視野の狭さにがく然とするばかりです。

チコのダンナ、ショージさん53歳は、誰もが名を知る大手メーカー勤務。しかも管理職の彼の下には、技術職の四十路メンズがわんさかいるという。一流企業の技術職なんて「ハイスペックなのに女っ気なくていき遅れる」典型的なパターンじゃないですか。

入れ食い 

チャンス到来♪


ショージさんはいつもニコニコ話を聞いてくれて、面倒見よさそうな御仁。チコを介して何度か食事をしたこともあり、私の人となりはよく存じ上げておられる。幸いなことにショージさんも「うちでホームパーティでもして、カジュアルな出会いにしたらどうか」なんて提案までしてくれたというから、これは期待しないわけにはいきません!

そこで数日後、ホームパーティの打ち合わせがてら、チコの家でショージさんと飲むことになったのです。ワイン好きの彼には賄賂、もといワインを献上。穏やかな陽気の中で始まった家飲みはゆるゆると続き、喉をすべる極上のワインがショージさんの心をゆるゆると緩めていくのがわかりました。

うしし


チコ「ねえ、ホームパーティいつにしようか。何人くらい来れそうかな」

ショージ「んんんん〜」

チコ「なに?」

ショ「ん〜ちょっとさあ、連れてこれないかも」

チコ「え、だってこないだ会わせてもいいよって言ってたじゃん」

ショ「いるにはいるんだけど、ちょっと紹介できないんだよね」


くみ「や、やだ、気楽に考えてくださっていいんですよお〜」

ショ「クセがありすぎるんだよ。みんな。くみちゃんには会わせられないなあ」

くみ「大丈夫ですよ、大げさなんだからショージさんたらあ〜」

ショ「いや、オレが責任とれないし」

くみ「別に責任とれなんて言いませんよ」

ショ「ムリ、ダメダメ」

くみ「そんなこと言わないで、会ってみなきゃわかんないですしねっ、ねっ」

ショ「絶対会ってもムダだって。気楽に生きてきちゃってる男ばっかだから」

くみ「気楽って言うなや」

ショージ「えっ」


くみ「独身が気楽だって決めつけんのやめろや」

チコ「ど、どうした」

くみ「独身は確かに気ままですよ、ええ、ええ、誰にも合わせず気ままに生きてますよ、でもね、気楽じゃないんですよそこだけは言っておく! どうせアレでしょ、自分たちの20代の記憶たどって気楽だとか言っちゃうんでしょ、でもね、40代で独身ってすんごいキツいの、しんどいの、人生のぜんぶをひとりでケツまくっていかなきゃいけないの、それわかって言ってんのか、えっ! だいたい合うかどうかはアタシが決めるんじゃ、てめえが勝手に決めんなや! 土壇場で手のひらかえすような男なら返せ、今すぐ飲み干したワイン返せ〜〜っっっ」


ショ・チコ「…………………………………」



                 ハッ



しまった心の声ダダモレだったああぁぁぁ〜〜〜(号泣)


結局、恋がうまくいくはずの友達紹介ルートは壊滅状態に。出足からつまずいた四十路独女のコンカツは、やがてイバラの道へとつき進むことになったのでありました…。つづく

By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

元記事はこちら。

これまでのお話はこちら。


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