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<24>珍獣オンリー、独女はロンリー、来てよ私のヘブンリー。

じじょうくみこが誕生して丸10年。というわけで勝手に生誕記念⁉でウェブマガジン「どうする?Over40」に連載していた処女作の「崖っぷちほどいい天気」をこちらに転載しております。

10周年イヤーのうちに済ませるはずが、12月というのに半分も終わってない現実に気づき、静かに焦っております。ペースあげてまいります!
ちなみに本編では23回で数えるのをあきらめたうようですが、こちらではわかりやすくナンバリングしてまいります。というわけで今日は24回。

現在、四十路ハケンOL編が進行しております。崖から飛び降りる覚悟で無縁だった大企業に飛び込んだわたくしですが、なんの因果かまわりは変人だらけで「会社員とは」と自問自答する日々。今回はそんな珍獣パラダイスの面々をご紹介します。

ちなみに数年後、珍獣のひとりがシマ島に友だちを連れて遊びにきてくれたことがありまして、珍獣の友だちは珍獣なのだと実感した次第であります。


*** 2013年11月2日の記事***

珍獣オンリー、独女はロンリー、来てよ私のヘブンリー。


先日、ひょんなことから小学生の授業を見学したのです。
キャリア教育の一貫として子供たちに人生設計を考えてもらおうというもので、たとえば将来の夢がサッカー選手なら何歳でどこの学校に入って、どんなクラブでどんな成績を残して、何歳くらいでJリーグの選手になって、家族は何人で…といった案配。

しばらくすると、私の近くにいたグループから、こんな会話が聞こえてきました。

男子「ねえねえ、つきあって結婚するまで何年くらいかけるもの?」
女子「んー2年くらいじゃない?」
男子「じゃあ遅くとも28までには相手見つけないとな。30まで結婚しないなんて、ありえないよなあ
女子「なんで30なの? 別に30代でもいいじゃない。まあでも結婚は20代かなあ。(おもむろに女生徒立ち上がり)せんせーい、
38歳とかで結婚だとマズいですかあーー?


(ノ-_・)/|)‥‥…>>━→   >>-(゚ロ゚)→トスッ


おお〜う
完全に油断しておりましたので、わたくしざっくり斬られた気分です。悲しくて悲しくて


おにいさま……涙が……とまりません……


最近GYAOで『おにいさまへ…』の無料放送を食い入るように見ておりますので、つい。『おにいさま』ご存じでしょうか。ベルばらでおなじみの池田理代子が70年代に連載していた、お嬢様学校の壮絶ドロドロ愛憎マンガでございます。

サン・ジュストさま……薫の君……宮様……ああ、どうして私なんかがソロリティ・メンバーに。おにいさま、奈々子はもう、たまりません……

おっと失敬。私がいたのはソロリティじゃなくて珍獣パラダイスでした。そして私は奈々子じゃなくてくみこなのです、ごきげんよう。

さて、あんなことやこんなことがあって20年ぶりにスタートした会社員生活ですが、ダメ社員エジマックスの助っ人として呼ばれた私は、本来ならばエジマックスが人事異動でいなくなった時点でお役ご免のはずでした。

ところがこの珍獣たち、「ハケンさんに仕事を頼めるらしい」と味をしめたようで、その後も職場残留が決定。エジマックスにつきっきりだったこれまでと違い、いろんなメンズと仕事をすることになったのです。

思えば20代の会社員生活は、目の前のことで手一杯。30代のフリーランス生活は、食べていくので精一杯。40代にして初めて、自分ではない誰かをサポートするという新しい扉が開いたわけです。せっかくの初体験なので、そのお相手となるメンズをじっくり観察してみることにいたしました。


じーっ

たとえば珍獣の長・ワタさんはベビーフェイスのアラサー男子。華奢な骨格で声も清らか、へたするとボーイッシュな女子に間違えられそうな愛らしさがあります。どことなく育ちのよさそうな空気をまとっており、社内の女子には下町のプリンスという、いいのか悪いのかよくわからない呼ばれ方をしていました。

見た目はかわいくてもこの男、珍獣男子を操るだけあって、ただ者ではありません。この人に頼まれる仕事は、指示が的確で全てがスムーズ。問題が起きた時も、その場で回答を出してくれるので業務が滞ることがありません。こういう人の仕事は素直に指示に従っていれば、素直によいものができあがるので大変気持ちがよろしい。

ただしこの男、ただのデキる人ではありません。珍獣男子を自由に泳がせているかと思えば、時々気まぐれにターゲットを決めて、相手が絶句するような無理難題をふっかけます。そうして男子がヒーヒー言いながら必死に働くさまを眺め、ひとりクックッと笑っている姿を何度か見かけたことがあります。ちょっと敵には回したくないタイプです。

あと、その会社のエレベーターでは若手社員がボタン操作を担当するという暗黙のルールがありましたが、ワタさんは必ずボタンの前に陣取り、「代わります」と誰が声をかけても「いやですっ」全力で拒否。なんなんだ、その情熱。

さて、何事もスマートにこなすワタさんとは対照的に、とにかく型破りなのがマツタケです。この男は、なんといっても居所がつかめません。今日会社に来るのか来ないのか誰にもわからないという、会社員とは思えない自由奔放さ。それが許されているのは、それだけの結果を出しているからだ、と他の部署の人に聞きました。

大胆なアイデアで社長を唸らせたとか、超有名企業に単身乗り込んで商談を成立させたとか、数々の伝説もある様子。特にタフなネゴシエーションが大好物で、「よっしゃ、一発かましてきますわ!」などと嬉々として出かけていくあたりはイケズ京男のDNAか。

そんな豪放磊落キャラなのに、仕事ぶりは意外なほど神経質。こだわりが強い男だとわかったので、一緒に仕事する時は彼のアイデアを形にすることに専念するのですが、作っては壊し、作っては壊し、あまりの粘着質にイライラすることしばしば。

でも何度かの逡巡を経てようやく最終形ができあがり、「これで本当にいいんだね。後悔しない?」と念を押すと、涙目になってじっと見つめ

「じじょうさん、僕はね、すぐに後悔する男ですよ。心配…」

……面白いじゃねえかコノヤロウ


面白いといえば、もうひとり。エジマックスと交代で異動してきたミヤという男子がおりました。その男は精悍なイケメンで、カラダを鍛えているらしい細マッチョ系。社内でファンも多いという噂でしたが、女子にはいつも無愛想で、話しかけても「はあ」「まあ」と短い答えが返るのみ。仕事もひとりでコツコツ緻密に積み上げていきたいらしく、周囲からは正体不明のミステリアス男子と認知されておりました。

しばらくして彼はたびたび海外出張に出るようになったのですが、なぜかミャンマーに行くたび髪が短くなる、という不思議な現象が起きたのです。ヘアスタイルにこだわっていたと思われるイケメンが、ミャンマーから帰るたびにどんどん短髪になるのですから、そりゃ目立ちます。そうしてついには坊主に近くなった時、社内ではいつしか「あいつミャンマーで出家するんじゃないか」と噂されるように。

それ以来、あるスジで彼はひそかに ミズシマ と呼ばれるようになりました。


いっしょにニッポンに帰ろう〜


まだまだ書ききれないので他の男子は機会があればご紹介したいと思いますが、こういう個性的なメンズ、嫌いじゃないです。めんどくさいけど。それはそれでなかなか面白いです。めんどくさいけど。

ただひとつ、残念なことがあります。他部署の女子があこがれるメンズの素顔を、どうして私が見られるのか。それは

わたしが恋愛対象外のオバチャンだから、であります。



(ノ-_・)/|)‥‥…>>━→ ━→ ━→  >>-(゚ロ゚)→トストスッ


おお〜う

まあこっちもね、ひとまわりも年下の男子つかまえてどうこうって気はないですしね、むこうも若くてかわいくて仕事のできるハイスペック女子が周囲にわんさかいるわけですしね、だから女子の前ではカッコつけてる彼らが油断して素顔見せちゃったりするんでしょうけどね。ですけどなんだろうこの、トキメキ物質ゼロの異性間に漂う残念フィーリング

そうかそうか、40代で会社に入るとこういう扱いになるのかと実感すると同時に、ガッカリしたってことはつまり期待してたってことで、そんな乙女な自分に気づいて「やん」と顔を赤らめてしまったあの日。


おにいさま…くみこ、四十路になっても

涙が…とまりません…!


1974年連載開始。50年前でも色あせない名作ですな

おにいさまへ… 1 (中公文庫 コミック版 い 1-43)

By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

★おまけの相関図★

珍獣パラダイスゾーンまだまだ増えます


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