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The Amity Affliction 『Let The Ocean Take Me』(2014)

オーストラリアはQueenslandで結成されたポストハードコアバンドThe Amity Affliction

2003年頃、高校時代の友人であった Ahren Stringer(Vo、Ba、Gt)、Joseph LilwallTroy Brady(Gt.)の3人が中心となりバンド活動を行なっていたが、ある時、バンドメンバーと親しい友人が交通事故で死亡するという苦難が襲う。
その友人への愛(Amity)と苦しみ(Affliction)を抱えながら活動する、という意味を込めてバンド名を決定し、Ahren Stringerは、「自分達が音楽をやる事は、逝ってしまった友人への鎮魂歌と悲しみのカタルシスである」と語っている。

2005年にはもう1人のグロウル担当Vocal、Joel Birchを加え、Garth Buchanan(bass)とLachlan Faulkner(Drum/すぐに脱退、Garth Buchananに交代)、を加え、初期ラインナップを固めると何枚かのEPを出した後、2008年に『Severed Ties』でデビュー。
オーストラリアのチャートで26位という上々の滑り出しを飾る。

激しいグロウルと、透明感溢れるボーカルが交互に織りなす極上のメロディは、荘厳や幻想的といった言葉で形容し尽くせない、神々しささえ感じるサウンド。
オーストラリアにはParkway DriveOrpheus Omegaのような上質なメロディメーカーがいるが、そういった美メロバンドに比肩する。

本作は2014年発表の4作目にあたる『Let The Ocean Take Me』で、
その完成度やメロディ、アグレッシブネス、世界観、全てが彼ら史上最高の出来なんじゃないかと思わせる楽曲が並ぶ。
メタルコアファンならずともぜひ聞いて欲しい一枚。

Let The Ocean Take Me


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* Joel Birch – unclean vocals, art direction
* Ahren Stringer – clean vocals, bass, art direction
* Troy Brady – lead guitar
* Dan Brown – rhythm guitar
* Ryan Burt – drums, percussion
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■Pittsburgh
美しいメロディラインをクリーンボイスとグロウルで交互に丁寧に染め上げるまばゆい糸のような繊細な曲。
サウンド自体はもちろん太くてブ厚いのだが、歌詞に練り込まれた永遠に続く葛藤や後悔の「波」で溺れそうな程の苦しみが、いい意味で曲をやつれさせている。
個人的な解釈だが、アルバム最後の曲『Give it all』とリンクしているのではと思っている。


■Lost & Fading
Ahren Stringerが高らかに激エモ旋律を歌い上げるミドルテンポチューン。
強靭なメロディラインをしっかりとボトムから固めるリズム隊の頼もしさ。
派手なギターソロも無ければ複雑なリズムもないが、気を衒わず、曝け出した剥き出しのメロコアで勝負する勇壮な一曲。


■Don't Lean On Me
冒頭の滴り落ちる様なピアノにシンクロした壮麗なイントロにJoel Birchの豪唱グロウルが絡みつき、クリーンボーカルへの華麗な導入に繋がる。
歌心、そう圧倒的な歌心がそこにはある。
コーラスで印象的な美しい旋律と共に「Let The Ocean Take Me」のフレーズを繰り返し歌い上げる事からも、実質この曲がアルバムのリーディングトラック。
しかしpvは謎すぎるw
なぜ悩める少年の部屋でひたすらバンドが激奏してるのか。静かにしておいてやれww


■The Weigh Down
ポップバラード的な優雅な入りから、突如として地を揺るがし、大気を痺れさせる咆哮が隆起する。
コーラスは、遠い夢の中で聞いた様な、いつまでも枕上をさらないような甘い声が幾度となく繰り返される幻想的なメロディがこだまするTAAのクリエイティビティの結晶のような曲。


■Never Alone
優しいポップなイントロから猛々しいグロウルが響き渡る。
それを優しくなだめるかの様な清涼感溢れるAhrenのクリアボイスが揺らぐビューティフルミドルテンポチューン。
ギターノイズや電子的な効果音も裏側に散りばめ、しっかりと落とすブレイクダウンも挟み、モダンっぽさも忘れていない丁寧な創りになっている。
歌詞も涙が出るほど前向きでまっすぐで、非の打ち所がないメロコアチューン。歌い出しの主語がつねに「We」なのが本当に泣ける。
最後のボイスメッセージが…


■Death's Hand
強烈なタックルのようなドラムと濁流のようなギターサウンドのうねりに煌びやかに横たわる一本のメロディ、そして生々しいグロウルボイスの荒々しい飛沫。
アグレッションがフィーチャリングされた一曲。

■F.M.L.
クリーンボイスの涙腺直撃型アメイジングメロディには全俺が咽び泣きを強制されるが、
さらにグロウルパートですら美しいと思ってしまう美麗なサウンド。
2:07あたりからの凶悪ブレイクダウンももはやオシャレ。


■My Father's Son
不協和音にも似たギターノイズ多めのイントロから爽やかに疾走し、コーラスではいつもの美しいビューティフルメタルクワイヤ。

「俺は俺の父親の息子。俺の父親の失敗作」「俺は自分が作り出したこんな地獄みたいな所からいなくなりたい」
後悔と懺悔、絶望と悲嘆、様々な自己嫌悪の言葉が歌詞に並ぶが、友人を無くしたバンドのカタルシスとしての音楽は、その想いが強い程より一層輝きを放つ。


■Forest Fire
誰の心にも棲む暗い感情や、もはや人の手ではなかなか御しきれぬ森林火災のような燃え盛る想いが入り乱れる、人の心理の激流、複雑さ、混沌模様を描いた曲。


■Give It All
音の厚み、奥行き、その臨場感ある音像に精神が飲み込まれそうになるくらいダイナミックだが、それにもまして神々しさすら感じる程、歌詞が強い。

あなたに全て差し出す、自分の心も言葉も、何も残らなくなるまで。

主語を恋人にすれば美しいラブソングだが、、おそらくこのバンドが歌う相手はそうではないだろう。


総合満足度 90点(果てぬ絶望の中に希望を見出せるレベル)

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