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Nightrage『Descent Into Chaos』(2005)

スウェーデン寄りのギリシャ発メロディックデスラッシュメタルバンド。

2000年にギリシャ人ギタリストのMarios Iliopoulosを中心に結成、2003年にデビューアルバム『Sweet Vengeance』をリリース、元At The GatesのTomas LindbergをVoに迎え制作されたこの一枚は、イエーテボリサウンド・ギリシャ支店と言った形で、北欧にとどまらず、ヨーロッパ全体に、古くも、新たな風を吹き起こすことに成功する。
続く、2005年にCentury Mediaからリリースされた本作『Descent Into Chaos』は、前作ではゲスト扱いであった、Gus G. (g/FIREWIND、 MYSTIC PROPHECY、Dream Evilなど) を正式メンバーとして迎え制作した一枚。
叙情メロディを弾かせたら世界中でも指折りの名手である彼の加入は、改めて言うまでもなく、バンドの表現力を飛躍的に高めており、彼のギターが主張することでサウンドのまとまりや緊張感といったものが確実にレベルアップしている。
久々に曲が始まった瞬間に、拳を握りしめながらギターソロを楽しみに聴き進めることができるギターオリエンティッドなアルバムに出会えました。

また、バンドのサウンド的なところで、元In FlamesのFredrik Nordströmがなんとキーボードとして参加しており、Gus.Gの立ち位置を侵さず、しかししっかりと北欧のエッセンスを注入するという強力なサポートをしている。

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Tomas Lindberg − vocals
Marios Iliopoulos − guitars
Gus G. − guitars
Henric Karlsson − bass
Fotis Benardo − drums
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■Being Nothing
開幕のブラストで強制的なヘッドバンギングが発生してしまい、続けざまに流れ出る初期のSoilworkやAt the gates由来の叙情に満ちたギターサウンドに感涙とメロイックサインを禁じ得ない。

■Phantasma
ミドルテンポで展開する親しみやすいパワーメタル。
各パート頭に入る謎の鐘の音が不思議な異国情緒を呼び起こし、メタルってどんなサウンドを入れてもいいんだなと、勝手な納得をしている。
Tomas Lindbergのガナリ系デス声はこういうミドルテンポの方が聴き易いのかも。


■Poems
ハードロック調のゴリっとしたギターリフで始まる疾走曲。
Gus. Gの暖かみのある、しかしキレのあるギターサウンドが曲全体に緊張感を与え、もはやなくてはならないエッセンスの一つになっている。
華麗な上昇フレーズを軸に組み立てるギターソロからも彼のホームであるFirewindの香りが立ち込める。


■Descent into Chaos
Fotis Benardoが叩き出す焦燥感のある2ビートが情操を煽るタイトル疾走チューン。
リフやヴァースがとてつもなく期待を煽るスリリングな展開だけに、コーラスがやや弱いか。。?


■Frozen
Gus. Gが本気を出してIn Flamesを弾いてみた曲。
Dark Tranquilityのミカエルスタンネ(しかもクリーンVoも)もゲスト参加しているし、この一曲がまさにNightrageをイエーテボリスタイルへの接近を確実にしたと言っても過言でない。
コード進行自体はそんな複雑ではないが、曲に深い味わいがある。

■Drug
メロディアスにザクザク刻む系の所謂王道のメタルリフに、シンプルなコーラスが乗る。
曲中に2度現れるガスさんの叙情み溢れるギターソロに、身体中の穴という穴から液体を吹き出しながら首がちぎれるまで降り続けてしまう。


■Silent Solitude
やや落ち着いたテンポの80年代ハードロックへの憧憬も見え隠れする佳曲。
こういうちょっと聞かせる系になると、Tomas Lindbergのガナリ声がやや単調に聞こえてきてしまって、あまり合ってないんだなと思ってもしまったり…


■Omen
2ビートで走る疾走曲。
前のめり感はとても良きなんだけど、もう一盛り上がりが欲しかったちょい惜しいヘドバンチューン。


■Release
ミドルテンポで1stヴァース、2ndヴァースはさほど起伏がないものの、ここでもガスさんの狂気のクリエイティビティが遺憾無く発揮されてしまう。
これはギターソロを聴くためのメタル。


■Solus (instrumental)
滑らかに、流麗に、華麗に、叙情的に、煽情的に広がるギターインスト曲。


■Jubilant Cry
ブルータルを全面に出した曲。
こういう激しめのブルデス寄りの曲ではTomasの咆哮が活き、曲の残虐性が高まってとてもいいです。


■Reality Versus Truth
フックのあるギターリフを軸にした、アルバムを豪快にしめる疾走曲。
また次回作で会おうな!とでも言っているようなお別れの挨拶的なガスの最後の叙情メロディが染み渡る。。。


総合満足度 87点

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