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Tonight Alive『Limitless』(2016)

オーストラリア発のロック/ポップパンクバンド、Tonight Alive

ギターのJake HardyWhakaio Taahi、ベースのCameron Adlerが中心となり、シドニーにて2008年に結成。
その後、バンドのアイデンティティでもある透き通るような美声が特徴のリードシンガーJenna McDougallとドラムのMatty Bestがジョインし初期ラインナップが固まりEP『Consider this』をリリースする。
この一枚が業界で高評価を得ると、その年のKerrang!誌で最優秀新人バンドにも選ばれ、Fearless Record、ソニーと契約を果たす。

2011年から2012年にかけては、Blink-182や、最近ではAll Time Lowのプロデューサーとしてパンク界では名高い、Mark Trombinoを迎え、フルレンクスデビューアルバム『What Are You so Scared Of?』をリリースする傍ら、Bamboozle festivalへの出演や、blessthefall、 The Word Alive、 Motionless In White、Chunk! No, Captain Chunk等のメタルコアバンドとツアーを重ねるなど一気にワールドワイドなバンドとして認知されるようになる。
2013年には『The Other Side 』を立て続けにリリース、各国のチャートでも軒並み上位にランクインし、女性リードシンガー擁するパンクバンドとして人気を博す。
このツアーではOne OK Rockとも共演を果たしている。


本作はその後2016年に『Limitless』と銘打ってリリースされた3rdアルバム。
プロデューサーはBMTHも手がけているDavid Bendeth
このアルバムリリースに伴うツアーでSummer Sonic2016、Punkspring2016で再来日も果たしている。
地元オーストラリアのチャートでは6位、USロックチャートでも23位に入る快挙を見せたが、作風は初期に比べるとだいぶPops寄りになってきており、トゲトゲしいギターリフやソロもなければ、ある意味、大衆的になっているため、初期の原理主義的なパンカー達からはやや距離を置かれてしまっているらしい。

でも、、アリだけどね!!この作風!

Limitless



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* Jenna McDougall – lead vocals, keyboards
* Whakaio Taahi – lead guitar
* Jake Hardy – rhythm guitar
* Cam Adler – bass
* Matty Best – drums, percussion
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■To Be Free
開幕から透明感のあるJennaの美声が響もす爽やかなワールドミュージック風の一曲。
初期の頃にあった「綺麗な旋律の奥底に潜む毒を含んだとげとげしさ」のようなものはほぼ浄化され、クリアな大人の音楽が奏でられる。


■Oxygen
ポップ要素強めのミドルテンポチューン。
Jennaの声は、「○○に似ている」的なことを言い出すと無限にいろんなアーティストが出てきて野暮なのであえては言わないが、ただよくあるアメリカンポップ・ミュージックの女性ヴォーカルにグリグリっと寄せてきている
『What Are You so Scared Of?』の頃のような荒削りなパンキッシュな香りはほぼ皆無。


■Human Interaction
まったりチル感溢れる曲。
中間部で微エロなハスキーボイスを挟んで、ひとつまみのパンクスピリットを見せてくるあたりにパンクバンドの意地を感じる。


■Drive
キラキラキーボードをちりばめながら、POPに広がるサウンドを絶妙にコントロールしつつ、キャッチーで耳に残るフレーズをしっかりと打ち込んでくる、ある意味これまでとは異なるクリエイティビティが遺憾無く発揮された曲。
大の日本好きなJennaは、本人の希望でこの『Drive』のアコースティックバージョンを日本でレコーディングしたらしい。


■How Does It Feel?
切れ味良いギターリフにEDM的なシンセと電子音が炸裂して混じり合う爽快極まる曲。
コーラスのコードワークはエモすぎる。
ラストのコーラスで笑いながら叫ぶJenna、可愛すぎる。


■Waves
大自然に包まれるような圧倒的な安心感と静かな昂揚感が全身の血管に流れ込んでくるような壮大なチューン。


■Everywhere
優しいピアノに導かれ、ひたすら癒しが雪崩を打って襲ってくる果てしなくチルい曲。


■Power Of One
「I believe in the power of One」といった歌詞がもつ強さと、サウンドの透明感・爽快感が完璧にミックスされたバラード。


■I Defy
これまでの流れから一点、
新世代のモダンコアを連想させるような野心的なイントロと、煽るようなバスドラ、分厚いサウンドスケープが渾然一体となり脳に直接送り届けられる。
本作で唯一といっていいくらいちょいハードな曲。


■We Are
早秋のわずかな寒気を含んだ涼やかな風を思わせる清涼感あふれるポップチューン。


■The Greatest
Jennaがやさしく口遊むエンディング曲。
シンプルなポップバラードだが、アルバムのジャケットとリンクしているかのような宇宙で浮遊している感覚で満足度の高い一曲。


総合満足度:83点(前作までの棘がなくなって丸くなったTonight Aliveを聞きたい方向け)

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