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「俺は今のロック・シーンで失われた女性ロック・アーティストを発掘したいと思い続けていた」-ダニー・レクソン(シェイ・ケイン プロデューサー)インタビュー

-あなたが長年温めていたプロジェクトのアルバムが遂に完成しました。シェイ・ケインのアルバムは80年代の要素がたっぷり詰まったアルバムですね。日本は冬真っ只中ですが(インタビューは2月下旬に行われました)、今すぐオープンカーで走りたいくらいのゴキゲンなアルバムです。このプロジェクトの発端から教えてもらえますか?

ダニー・レクソン: まず最初に、本当にありがとう。気に入って貰えてうれしいよ。そうだな、このプロジェクトを始めたのは2019年の終わり頃、所属レーベルのFrontiers Recordsからソロ・アーティストをプロデュースしてみないか?という提案があったからなんだ。興味はあるとは答えたけど、俺は今のロック・シーンで失われた女性ロック・アーティストを発掘したいと思い続けていた。俺は何曲か書いて、何人かのヴォーカリストに当たっていたんだ。そんな中で2020年の初頭にシェイに連絡した。そしてすぐに「まさに彼女だ」って思ったね。

-なるほど、このプロジェクトにはシェイ以外にも複数候補がいたという事ですね?

ダニー: ああ。何人か候補はいたよ。でもその中でシェイが間違いなく一番フィットした人物さ。

-どうやってシェイを知りましたか? 彼女にした決め手は?

ダニー: YouTubeで彼女のカヴァー動画を見たからだね。すぐに彼女の卓越したヴォーカル技術にピンと来たし、一緒に仕事をするようになって、彼女はとてもプロフェッショナルでとても仕事がし易い相手だと分かったよ。ただ新型コロナウイルスのせいでアルバムが完成した数ヶ月後まで、実際に会うことは出来なかったけどね。通常とは違うなかなか奇妙な制作過程だったよ。

-クレジットによると、あなたはすべての楽器をプレイしたとありますが、これはヴォーカルを除いたすべての楽器をという事ですか?

ダニー: 正確には、ほぼ全部だね。サックスは吹けないから、そこはTHE MIDNIGHTというバンドなどで活動しているジェシー・モロイに手伝ってもらった。あとバッキング・ヴォーカルのために結構シンガーも雇った。そこを除けば君が言った通り、リード・ヴォーカル以外は自分が演奏したということになるね。

-アルバムはどのようにして制作しましたか? 最初からヴォーカル以外を完成した状態で彼女に曲を送ったのでしょうか?

ダニー: 大まかにはイエスだね。デモ・ヴァージョンは俺が歌って彼女にそれを送った。途中、彼女の声域に合うようにキーを変える必要があることもよくあった。だからデモの状態で曲の雰囲気は掴めただろうし、正しいキーも分かったはず。男と女のシンガーのレンジは通常違うからね。彼女が最終的に自宅スタジオで歌入れ録音し、俺に送ってくれたものに関してはお互い満足しているよ。

-アルバムに収録した曲は全て新曲ですか? 過去未発表だった曲は有るのでしょうか?

ダニー: 曲は全部新曲で、今まで表に出した曲は無いよ。ただ何曲かはCRAZY LIXXで使おうとしていたけれど、お蔵入りになったアイデアをこちらで使ったものはある。実際先行シングル2曲“Too Late For Love”と“Rocket On The Radio”はCRAZY LIXXのアルバム『FOREVER WILD』用にデモまで作った曲だったんだけど、両曲ともちょっと古臭かったんだ。でもそれ以外の曲は2019年末から2020年初めに4〜5ヶ月かけて書いたものだよ。

-お互い別々にレコーディングを進めたという事ですが、具体的にはどういう風に進めましたか?

ダニー: うん。彼女がすべてのヴォーカルを録音して、俺に送ってくれた。通常はフィードバックを彼女に返して、どうやり直すべきかとか、他のやり方を指示するんだ。でも何回かやり取りしただけで、結果はお互いにとってとても良いものになった。ヴォーカルのレコーディングは1ヶ月かそこらで終わったんじゃないかな。その間はほぼ毎日彼女と連絡を取り合っていたよ。でも想像しやすいと思うけど、実際スタジオに入って作業するのに比べて、ファイルをアップロードだ、ダウンロードだ、ってことを毎回やらなきゃいけなかったんで、進行状況はゆっくりだったよ。

-クレジットによるとこのアルバムの制作には2019年から2020年までとありますが、実際完成までどれくらい時間がかかったのでしょうか?

ダニー: それはどこからを起点にするかによるかな。最初に書いた曲(少なくともまったく新しく書いた曲)は、記憶違いでなければ2019年の9月からだ。ただその時点ではまだ構想の段階で、数ヶ月後にシェイをシンガーとして決定する前になる。さっき答えたように、その時俺はデモを作って何人かのシンガー候補を試していたからね。実際のレコーディングが始まったのは2020年3月頃で、最終的にミックスとマスタリングまで終わったのは同年の6月だよ。

-あなたはアルバムのブックレットのデザインも担当していますね。特に拘ったところはありますか?

ダニー: クラシックな80年代風の見た目に拘った。アルバム・ジャケットに彼女を載せるのが重要だったんだ。でもその時イギリスはロックダウンの真っ只中で…ただ幸運なことに彼女の家で写真を撮る算段が付いたんだ。イギリスでは通販で買うことはまだ可能だったんで、何とか注文して、無地の背景やら衣装、アクセサリーを撮影用に揃えたよ。結果としてはとても上手く行ったね。

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-アルバムの歌詞について、CRAZY LIXXの歌詞は男性目線ですが、このアルバムでは彼女に合わせて女性目線で書かれています。あなたにとってこの歌詞の使い分けは大変でしたか?

ダニー: そうでもなかったよ。多くのテーマは男女でそれほど違いは無いと思っている。完璧に女性の視点からは見ることはできないけど、このアルバムに収録されている曲の大半、俺たちが抱いている、愛だったり、希望、恐れ…こういったトピックに関しての感情の多くは共通すると思っているよ。

-最初のシングルである“Too Late For Love”のビデオ撮影は、あなたが監督をしていますね。どのようなコンセプトの下に作りましたか?

ダニー: このビデオは俺にとって初監督作品でもあるんだ。みんなに気に入って貰えて嬉しいよ。で、このビデオがどこから影響されたかというと、もちろん若い頃に見ていた80年代のロック・ビデオで、見てもらえばわかるように、ライティング、セッティング、スモークや美術用具…あらゆる映るものさ。2020年9月に短い時間枠が取れて、その間にシェイが実際にスウェーデンへ来ることが出来たので、週末の撮影でなんとか形にすることができた。 もっとあれこれ出来たらと思ったけど、今の状況では、次のアルバムのためにそれらのアイデアを取っておくしかないかな。

-そのビデオであなたは実際カメラを握って撮影までしていましたね。最初からそう決めていたのですか?

ダニー: その通り。新しい技術を学んだり、挑戦するのは好きだし、飛び込んで行って試行錯誤するのが、ベストな方法だと思ったんだ。ライティングやカメラワーク関連の本をたくさん読んでベストだと思う方法を試したよ(多少前知識はあったけどね)。あとイェンス(CRAZY LIXXのベーシスト)と彼の兄弟のニルスにも手伝ってもらった。ニルスは才能溢れる写真家でカメラ技術にも精通しているんだ。

-エリック・モーテンソン(ECLIPSE)がアルバムのマスタリングを担当していますね。彼を採用した経緯は? また話は変わりますが、あなたとエリックで作品を作ったら面白いと思うのですが、そのような予定は無いですか?

ダニー: そうだな、単純に彼が素晴らしい仕事をすることを知っていたから…かな。このアルバムをミックスしているときに、彼とは何回か連絡を取り合ったけど、サウンドに関するあらゆることについて、彼は素晴らしいインプットとアドヴァイスをくれたよ。俺たちは今までコラボして作品を作ったことは無いけど、将来的にはそういうこともあり得るかもね。

-間違いなくこのアルバムの曲はライヴ映えするものばかりですが、先日ネット上でシェイとあなたはライヴのためのバンド・メンバーを募集していましたね。これもあなた主導のアイデアなのですか?

ダニー: 俺はこのオーディションやライヴには直接関わってない。俺の役割は純粋にソングライターとプロデューサーさ。彼女は俺から得たアドヴァイスやインプットをもとにメンバーを募集したんだ。彼女の役に立って良かったよ。でもライヴに関しては彼女の領分だ。

-シェイはFrontiers Recordsとマルチ・アルバム・ディールを結びました。次の彼女のアルバムもあなたが担当するのでしょうか? もしそうなら、もう既に取りかかっていますか? いつか彼女にCRAZY LIXXの曲を正式に歌ってほしいとも思うのですが、どうでしょう?

ダニー: 劇的に状況が変化しない限り、またプロデュースする事になると思う。今言えることは既に何曲か書き始めているということだね。ただ今のところCRAZY LIXXの曲を正式にカヴァーするアイデアは無いね。でも将来どうなるかは分からないよ。彼女のYouTubeチャンネルでやることも出来るだろうしね。

-将来的にもっと他のミュージシャンを、今回のようにプロデュースする計画は有りますか?

ダニー: ああ。もし興味がある人たちが出てきたら喜んでね。こういったビジネスの音楽プロデューサーをすることは本当に楽しいし、もっともっと何か出来るんじゃないかと思っている。

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-さて最後に、CRAZY LIXXは現在レコーディング中という事ですが、今年の終わり頃にはリリースされるのでしょうか?

ダニー: うん。そんな感じで考えている。ただツアーをすることによって(例えば再来日公演とかね)アルバムの然るべきプロモーションをしたいとも考えているんだ。もしそれが無理な場合、すぐにアルバムをリリースするかは分からない。どちらにせよ、夏前にはどうするか決める予定だけど、実際アルバムの発売日を今言う事は不可能だ。出来れば年内には出したいけどね。

-ありがとうございました。

ダニー: こちらこそ。前に訪れた時は、日本では楽しませてもらったよ。早くまた行きたいね。次のシェイのアルバムでもまた会えるといいね。

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