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チョコレート含有率は幸せに比例しない、という救い


今日はめくるめく冒険の日であった。

いや〜〜。

マスクの下、いや〜〜、とつぶやきながら帰路についた。
ちょっとお笑い(?いや、人間)の話をしてしまう。


今日はピンの芸人になって、初めてひとりでしっかりお話する機会を設けてもらったのだが、緊張の臨界点を突破し、正直ほとんど記憶がない。大反省するほかない。

こういう時、改めて孤独を感じた。

お笑い芸人として、おしゃべりする瞬間はたいてい、喋らない側が存在するものだが、複数人のなかで唯一のピン芸人としてその場に存在して、後ろ盾が無いことに気がついた時血の気がひいた。(おそい・・・。)

ある程度長い年月共にしているコンビが多かったこともあり、「あ、自分のことをこと細かに知ってる人はこの場に存在しないんだな」という思いが開始直後に押し寄せてきて、肩がギャーンと上がってしまった。

普段からあがりがちではあるが、呼吸とかどうしていたんだっけとなるくらいには緊張した。(どうしてなの〜)

自分は入学後の短期間しか組んだ経験が無く、本格的なライブ開始前には解散したので、人と一緒に舞台に立った経験が周囲に比べて少ない。
そのため理解者は今までも無かったはずなのに、その場に放り出された瞬間、冷静になって体感した時とてもこわかった。


自分のライブを見返すといつだって楽しそうにしているのだが(そこは自分に対してとても魅力的だと感じる)、本当に、今この時間だけ自由です!という時間以外、どうしたらいいかわからなくなってしまうタイプということがよくよくわかったので、ここから改善していくのみだとポジティブに捉えようと思う。


こんな経験も貴重なので、イマジナリー秋野(もうひとりのアバター的自分、分からなくてオッケーです)に、よかったね、そうだよ、今怖い思いができて良かったじゃない、と励ましながら帰宅した。

駅に着く頃にはほとんどのお店が閉まっていたが、どうにかハッピーな記憶に終わりたかったので、コンビニへ足を運んだ。


夏に食べるアイスには、ほんの少しでもフルーツの余韻を感じたいと常々思っている自分だが、今日はそれ以上にクリームの優しさを欲していた。


クリームを味わえて、かつ帰り道に堪能できるコンビニアイスといえば、ジャイアントコーンの右に出るものはいないだろう。


コンビニに入ってまっすぐアイスコーナーに足を運んだ。


驚いた。


ジャイアントコーンが・・・3つもある


自分の知るジャイアントコーンはあの赤いジャイアントコーンのみだ。


上に申し訳程度のナッツが乗っていて、上のパリパリチョコレートゾーンを食べたあとは底のチョコだまりまでコーンの周りについたチョコ以外の本格的チョコレートはおあずけになる、あの赤いジャイアントコーンだ。
脳裏には綾瀬はるかのはじける笑顔。


自分が知る赤以外に、黄色と青が存在していた。
選択できる喜びがプラスされている。


黄色は、上がナッツの代わりにアーモンドクランチになっていて、ミルクアイスとパリパリチョコが縞模様になっていた。

青は、上がチョコクッキーとパリパリチョコで、全体も全てチョコアイスで構成されており、真ん中に贅沢にも生チョコが入っている。


え・・・?


自分は100年続く女子校の出身である。
基本的にスタンダード、伝統を愛する人間だ。


しかし、同時に極度の貧乏性でもある。


チョコクッキーとチョコに全部チョコで中にもチョコ・・・?


チョコレートでゲシュタルト崩壊を起こしそうになり、気づけば青のジャイアントコーンを深夜のセルフレジに運んでいた。


そのまま持ち帰ろうとしたが、いますぐ食べて帰りたい気持ちが勝り、まごついていると、おそらく他国籍のスタッフの方に「ゴミ箱はここですよ」と案内された。


そうと決まればコンビニ内でジャイアントコーンのあの帽子の部分の包装をはがし、自動ドアを出てむあっとした空気を感じた瞬間かぶりついた。


チョコだ!


脳みそがスパークし、疲れた体にチョコレートの甘さが染み渡ってきた。


今日はゆっくり帰るため横断歩道は渡らず、回り道して歩道橋から辺りを眺めて歩いた。


ああおいしいな、チョコって人を幸せにするな、素晴らしいよ、あ〜ず〜っとチョコだ、おいしい〜、さっきなんであんなこと言ったんだろう・・、いいいい、いまはチョコに専念しよう、濃厚だ〜、チョコってなんでこんなにも黒いのかしら、本格チョコって意外と甘くないけど自分は断固甘いほうが好きですけどね、貧乏性だな、ああ、あのとき絶対こうすべきだったのに・・・、いいいい、いまはチョコに専念しよう、チョコ、チョコ・・・チョコ


チョコ、くどいかもしれない。


とにかく甘さに溺れたいと思って選んだチョコまみれのジャイアントコーンも、その主張があまりに強すぎたため飽きてしまった。


赤いジャイアントコーンのミルクアイスとチョコの比率に対し、いつも余白の切なさを感じていた。

もう少しチョコの比率を上げてほしい。

チョコなんて多ければ多いほど幸せなのだから!


違った。自分が間違っていた。

あのくらいの主張で、すこし足りないくらいが丁度いいのだ。

また一つ大人になった。

この世には一生大人になる機会がある。大人として、いや生き物として不十分な自分は、その機会に巡り合うたび安心感を得られるのだった。


な〜んだ、あのチョコですらその世界における比率を間違える(れっきとした正解のひとつです)んだから、自分が間違えることなんてちっぽけなことじゃん!


エレベーターで階を上がり、ちょうど家の前についたころ最後のひと口を頬張った。


ああおいしかった、気づいたら駅から家の前にワープしていた。

一生懸命やってめちゃくちゃ間違えたならそれでいいじゃん、チョコ、入れ過ぎたら今度から減らせばいいじゃん。

また明日から頑張ろう。くしゃくしゃになった青いジャイアントコーンの包み紙を片手に、そう胸に誓ったのであった。



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