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あんたがいちばんストレンジ


先日、遅ればせながらNetflixで配信されている『ストレンジャーシングス』というドラマの1話を観た。


私は、グーニーズとか、ジュラシックパークとか、冒険映画ないしドラマを観ることが好きだ。


正直お話自体が好きというよりかは、それについてくる体験をひっくるめて好きで、自分にとって癒しのエンタメなのだ。


基本映画館でものを観るほうが好きなのだが、配信されている冒険ものは、家のソファで、キャラメルポップコーン、は近所に売っていないのでたいてい東ハトのキャラメルコーンを食べながら、驚く時は声を上げ、笑い、べらべら喋りながら観るのが好きだ。


こういった作品を自宅で観る際には、ほぼ例外なく母を誘う。


現在も一緒に暮らしているのだが、母はこれといった趣味がなく、海外ドラマを好んで見るもののもはや作業的になってしまっているので、面白そうなものを見つけるとだいたい教えるようにしている。


私が先に1話観てしまったので、リビングで1人で1話を観てくれたのだが、すすめた手前、面白くなかったらどうしようと気にしてしまうあの気持ちを抱きながら、机に向かって作業していた。

ドアがガチャリと開いて、隙間からぱあっと明るい顔が見えたときはほっとした。


「面白かった!続き観よう!」といって古いソファの上の荷物をどけて隣を空けてくれたので、2人で腰掛けてマカダミアナッツチョコを片手に2話から観た。


こういうハラハラドキドキ楽しめる作品は、気のおけない間柄の人とキャーとかワーとか言いながら観ると、何倍にも楽しめる気がする。


私はそうでない推理もののドラマでも母には喋りかけてよく怒られたりするのだが。


私が、「これってさっきこうだったからこうじゃない?」とか、登場人物に向かって「えーそれってどうなんですかね?」とかべらべら喋っているあいだ、母は笑ったりはするもののたいして反応もしないであしらっている。

たまに喋ったと思ったら「この子ちょっとあんたに似てるかもね」「うわ〜すごい綺麗、全然似てなかったかも」とか言い出すので、好き勝手同士楽しんでいるということだろう。

私と仲良くしてくれる人はたいてい私より物静かなタイプなのでありがたいと常々思っている。


何話か続けて観たところで夕飯の支度の時間になった。

ソファから立ち上がって、キッチンに向かっていった母が、Uターンして、

「あのさ・・・夜ご飯食べ終わってからも、みる?」

と聞いてきた。


あ、観てる時は静かだけど相当面白かったんだなとわかり、笑ってしまった。

観よう観よう、と言って自分も立ち上がって準備し、夜ごはんを食べた。



食べ終わった直後、母は「お菓子買いに行く?」と言った。


これは私たちの中でわりと恒例なのだが、夜になにか観る時は、そのためだけにわざわざお菓子と飲み物を買いに行く。

部屋着だった私は上着を羽織って、雨が降っていないことを確認して外に出た。

近所のスーパーまで行って、お菓子コーナーを一通り見てまわり、ねー、またキャラメルポップコーンないよ、といつもと同じ文句を言って赤いパッケージが目立つ東ハトのキャラメルコーンを2袋カゴに入れる。


こういう時に限って、いつもスーパーについた途端忘れてしまう生活用品を思い出したりするので何だかんだ荷物が重くなり、私が持つはめになる。


青が点滅する前に小走りで横断歩道を渡って、少し歩いて帰宅した。

帰宅した直後、強い雨が降り出したので、運が良かったねと話しながら、買ってきたものをしまった。


飲み物を準備し、東ハトのキャラメルコーンの封を開けて、明日はお休みだからと日付けが変わるまで観続けた。


仲が良いように綴っているが、何を隠そう私の母は熱心な教育ママで、彼女自身かごの中のお上品なお姫様として育ってきた。(作中でいえば確実にナンシー、いや、バーバラだろう)

彼女にとっての私は、人生で最も理解できない大失敗作、自身が生み出した怪物であるという認識は幼い頃から変わっていない。

同じように私も、母を「普通」という概念を具現化したモンスターのように感じながら育ってきたのだから、お互いに恨みに近い部分だって持ち合わせているはずだ。


ただ、それは家族というくくり、母親と娘という関係性において出てくる問題で、人間、もっと言えば「ヒト」という生き物として相手を見る努力をすることさえできれば前に進むものだと思う。

人と人の関わりとしてはやはり相反するからこそ一緒にいて楽しいのだ。

私たちは(私だけかもしれないが)、違う星の住人であることにほんのここ数年でやっとあきらめがついたように感じる。


彼女は私といると苦労ばかりしているが、それでも新しい発見があるたびとても嬉しそうだ。
ライブを毎回見にきてくれて、あの子たちが面白いよね、なんて感想をくれることもある。

私も彼女を枠の外に連れ出したくなるし、笑っていると嬉しく感じる。
(私のネタは、よく分からないけどばかみたいで面白いらしい。)


さきほど、ご飯を食べ終わってすぐ、「これから・・・みる!?」と聞いてきたのでいいよと返した。

ぱたぱたとお風呂から上がってきた母は「あんたものんびり入ってないで早く出てよ」と言っていたのに、お湯に浸かりながらこんなものを書いてしまったので、私もいそいで準備しなければいけない。


違う星の住人のとなりで、東ハトのキャラメルコーンを食べながら、シーズン2の続きを観ようと思う。

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