なにこれ?

サルベージ・ザ・キオクニナイブンショウ


「幻想は偶然にだけ起因する」

「君と君の犬とでさ、会話は成立しないと思うけど、僕との間では成立するよな」
「とつぜんだな」
「そんなに突然じゃないだろ。置いとけ? それでな、うーん。『でもな』って言いたかったんだよ本当は」
「でもな。続けて?」
「でもでも。僕らの方は言葉があるから伝わってるってわかるけどさ、犬の場合確かめようがないだけで本当は理解してるかもしれないよな」
「そうかもしれんがな」
「が、なに?」
「先に続きを聞く」
「じゃあ邪魔すんなや。訓練によって音に意味を付与することはできるわけじゃん。『おさんぽ』とか。問題は犬のモチベーションってだけで」
「餌でつらないと動かないってことを言いたいのか?」
「いや。『言葉を理解すればもっとすごい褒美がもらえる』ってモチベーションを理解できれば、犬も言語を会得できるよ思うんだよ」
「確かに?」
「それで思ったんだよ。箇条書きでメモったから待ってな」
「しょうもなかったらキレるけどな」

「1.人が言葉を覚えるモチベーションとは。2.じゃあ犬の心を人と同じようにみるとき、『モチベーション』をつかさどる部分が欠落しているかもしれない。3.知性があればモチベーションを会得できると言っていいのか。4.長い時間を見通す力は人の特権で言葉の起因と言うのか。5.人間より知性がある生物は原初段階で言葉を選んだか」

「おめえ難しいことばっか考えて脳みそ焦げたんだな。生まれた時に『てんじょうてんげゆいがうんたらなんたら』って言って入院したタイプだろ」
「生まれつき言葉を持ってたらいまごろ英語も日本語もなかっただろうな。たぶん言語に名前がつかない」
「神様毎に言葉があるかもしれないだろ」
「神の証明になって、それこそ世界観が違うだろうな」
「話し戻していいぞ。1番から話してこう。もっかいどうぞ」
「おまえどうして言葉を覚えた?」
「『ウキー』って石碑に刻むためだよ。不便だろ。喧嘩売ってんのか」
「話を聞け。モチベーションありきで言葉を覚えたわけじゃないだろ。親たち先人が何度も教えるからいつのまにか覚えていたよな。あかちゃんに言葉を理解するたびご褒美をあげるって話も聞かないし、本能の部分で言葉を覚えるんだろう」
「野生児は喋れないっていうよな。当然教えられなきゃ覚えない。もはや算数的な考え方だけど。なければない」
「…とにかく。赤子の周りで喋る人たちってできるだけ簡単な単語を使うだろ。食べ物=まんま、みたいな。知性レベルでだけ考えるなら犬にも同じことをすればいい。インコが耳と口だけで喋るのと違って犬には知性があるはずなんだ。モチベーションを考えようと思ったが、赤子にあるとはおもえない。あるとすればまわりの人だと思うんだよ」
「俺はねえよ。仮に妹ができたとしたら中国語を教えてやる。次の日にはアラビア語だな。曜日替わりで7カ国語」
「愛があるのかないのかわからんな。でもわりと面白いかもしれん。次は2だが、モチベーションというか長期的な思考だな。目的のために行動しないのかってことだ」
「するだろ。穴掘って飯を蓄えてる。たまに布団を掘るけどな」
「そうだな。生きるために必須な欲のためとはいえ犬も計画する。経験型AIのように偶然の成功例を記憶して遺伝させてるだけかもしれないが。しかもそれはほんの一部のいい例をみているだけで、考えない行動の方が多い。ゴミ袋を破って散らかしたり、お菓子を盗み食ったりな」
「しつけはしたほうがいいぞ」
「僕は飼ってない。それにしつけの話はしようとしたところだ。叱れば『叱られたくない』というモチベーションから、褒美をやれば『褒美が欲しい』というモチベーションから行動を変えることが出来る」
「エゴだな」
「野生で生きるよりはましだ」
「人間を野に放てよ。モンキーっぽい顔のやつを見ると『進化論』って正しいなって思うぜ」
「あの偉人って遠回しにサル顔の隣人を煽ってるよな。授業で出た時、あだ名が猿の奴は集中砲火されること間違いなしだ」
「世間からのバッシングが怖いから本日の授業はキャンセルとなります。って担任の公式アカウントが投稿するんだよな。『#拡散希望』で」
「褒美があるからこそバッシングするべし。犬かなにかかな」
「危ないから話し戻そうぜ」
「炎上するぞ。」
「いいから」
「炎上するぞ」
「…」
「炎上」
「もうやめて!うるさいよ!」
「はい」
「うん」
「『言葉を覚えたら褒美』を伝える方法が言葉しかないのがつらいよな。仮に言葉より優秀な伝達方法があれば解決できるのかもしれないと考えると、宇宙人とかいたとき超怖い。喋りだす動物たちは地球へのデンジャーサインかもな」
「そのネタで映画つくろうぜ」
「レプティリアンとか陰謀論とかで何回もやられてるだろ。しらんが」
「じゃあ次3」
「賢ければモチベーションを得られるとは思う。最初から賢いやつのほうが勉強するしな」
「俺は勉強結構すきだぜ」
「逆説的にかしこくなるのやめな」
「小学生の時『+』と『-』が好きでさ、次は何だと思ったら『÷』と『×』なわけ。次が続かなかったとき俺の中で勉強は終わったよね。あんなわくわくさせて4つで終わりってそりゃないぜ」
「まあ四則演算っていうくらいだからな。5つ目を発見して偉大になろうぜ。記号は☆かZがいいな」
「プレイアビリティを追求するなら♂と♀かな。ちょうどジェンダーフリーだとか男女平等とかが叫ばれてる時代だし、算数の教科書にのったら流石に興味なくすでしょ。『58+47♀88=957÷4♂0』とか言われたら萎え萎えよ」
「うーん。黙ってもらっていいか」
「はあ。さては賢き者だな。こんな話するからだよ」
「3.知性があればモチベーションを得られるか」
「はいはい。集中力と別で考えていいなら違うと思うけどな。行動力だけある馬鹿は仰山いる」
「おまえにはなさそうだが?」
「逆説的に馬鹿…ってまあ結構かっこいいフレーズだし名乗っていくわ」
「バカ説的には行動力と考えたか。犬に当てはても行動力はあるな。欲に直行するぶん人間よりもあるかもしれない」
「じゃあ行動力のある馬鹿は犬か」
「言葉を繰る犬な」
「一気に賢い」
「でも可愛くないぜ」
「萎えぽよじゃん」
「日本には質のいいのたくさんあるからさ、本場はアメリカだっていうし渡米してこいよ」
「伏せすぎてよくわからんぞ多分」
「ならいいんだよな? それで行動力と知性ある行動とは決定的に違うんだって事だよな。そしてモチベーションは知性ある思考によってもたらされる」
「やっぱり知性の話になるじゃねえか。どうすんだオチ」
「期待してろ。保証はせんがな。というか5覚えてないだろ。だいぶ丸投げできるぞ」
「6まであると思ってたくらいだからな」
「怪談かよ」
「『怪談!実は6まであった箇条書きの話題!』ってタイトルで話し始めたら流石にテレビ消すわ」
「どっちかっていうと階段の怪談だよ」
「テレビつけたわ。っていうかさ面白い話し始めると視聴率上がる理屈ってなに? SNSとかあればあがるかもしれないけどさ、俺そんなに毎秒毎にチェックしないぞ」
「チャンネルのダイヤルをくるくるしてる人が視聴率変化させるほど人数いるとは思えないしな」
「5.人間より知性のある何かのせいで視聴率は変化していた」
「芸能人が全員ニャルラトホテプだったらわくわくするけどね」
「SAN値へってるじゃん。たぶんもう0付近だろ」
「実際のところ精神力は高いほうだぜ。なんだってお前と友達やってるくらいだからな」
「化けの皮剥いだら死ぬって言いたいのか」
「いや単純にお前の性格が悪いって言いてえんだよ」
「SAN値チェックふりまーす。おっと16。GM裁量によって一時的な狂気はなしです」
「話を16まで飛ばすな」
「だから怪談ではない。話は5までしかない」
「んで4は」
「なぜ言葉は生まれたかってはなし」
「常々思ってるんだけど、天才っているよな。そいつらが偶然二人いて、10年くらいかかったらひな形くらいは完成するんじゃないかなってさ」
「アダムとイブの話する?」
「無宗教主義なもので」
「あっそう。でも確かになあ。星を見て地球を考えた奴がいるくらいだし、記録なんてない時代も含めたらなんでもありな気がしてくる」
「だろ? んで周囲1万年の主人公はそいつら二人なわけ。流石に男女のペアだったら映画化決定だよ」
「たぶん俺はみねえけどな。つかずっと全裸じゃん」
「いやそこはなんとかするでしょ。宇宙からやってきた服型寄生体とかでさ」
「そこまでするなら宇宙人が言葉を教えた。って説を映画化しろよ」
「それは電波すぎるよ」
「雷を落とすぞ」
「十万ボルトw! リメイク系の映画ってどうにも好きになれないんだよね」
「成功した映画って大抵映像も良かったりするよな」
「それ。やっぱ懐古厨でなきゃね。時代についていけないって痛感するより、自分の好きなものを語ったほうがいい」
「ふむふむ。じゃあつぎ5.超生命体な」
「実際のところさ、神様いる派の教徒の方たちはどう考えてるんだろうな。神の創ったものにしては欠点多すぎでしょ」
「…上位存在を現実的な話に持ち込むの無理がありすぎない?」
「ああ。当然オチもない」

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