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The Cat Sleeps Tonight

「お、寝てるなぁ」
「お疲れ様です」
 ビジネス街のファミリーレストランはランチタイム以外は人がおらず、バイト終わりの先輩が顔を出しても特に気にされないし配膳用の猫型ロボットの顔モニターには鼻ちょうちんで寝ている間の抜けた顔が映し出されている。細かいプログラムだがここを利用するのは打ち合わせのサラリーマンくらいだから表情を気に留めている人もいないだろう。少なくとも顔には出さない。ごくごく稀にビル街に隠れるように存在する神社などへの観光客が騒いだりするくらいだ。
「写真撮ろ」
「通して欲しいにゃ~」
 先輩がスマホを取り出した途端猫がぱちっと目を覚まして動き出した。キッチンへの動線を塞いでいた先輩が横へよけるとするするとキッチンへ向かう。それを見送って先輩が呟いた。
「タイミング」
 さして残念そうでもなさそうに先輩がスマホをしまう。その時に時間を確認したのか今度は残念そうに肩を落とした。
「バスの時間過ぎた。まあいいや、明日夜勤だし歩いて帰る」
「歩いて帰ったら猫いるかもしれませんよ」
「探すかー」
 丁度お客さんが入ってきたので先輩は出口に向かいこちらはお客さんの相手に向かう。配膳を終えた猫はそこのお客さんに耳を擽られていた。

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