見出し画像

しまっちゃうおじさん

ぼのぼのという作品に出てくるしまっちゃうおじさんは死のメタファーですか、という問いに作者であるいがらしみきお氏はいいえと答えている。確かに小さい頃自発的に子ども部屋のボーギーを作り出していたな、と思う。クローゼットやベッドの下にいるおしおき妖怪。

小学生の時にはアニメを観ていた気がする。それこそしまっちゃうおじさんが大量発生して歌ったりしていた。アニメも扱いかねていたのだろうか。後何故か我が家では今でも「ばっちぐ、ばっちぐ」が使われている。しかし原作に触れたのは中学生の頃だった。貸してくれた友人が「最初の頃は面白くない」と言っていたが最初の方から面白かった。ぼのぼのの不安は私の不安でもあったからだ。

だからこれは全ての子どもが抱える不安なのだと信じているのだが、小さい頃「自分が見ていない間世界は本当に自分が見ている世界と同じだろうか」という不安が漠然と常に付きまとっていた。一緒に寝ている母が私が寝息を立て始めた頃恐ろしいお化けになってはいないか、玄関のドアを開ける直前まで世界はおどろおどろしい緑色をしていないか。ぼのぼのを描くいがらしみきお氏程の語彙を持っていなかった子ども時代の私はそれを周囲に上手く説明出来なかったが、今なら該当巻を差し出すだけでいい。尤も私も流石に大人になったので量子力学を齧って安堵している。

ぼのぼのが感じていた不安をなんとなく愛しく思うくらいに大人になった私は、そろそろシマリス君が今抱いている不安と向き合いつつある。しかしあの森のみんなと一緒に年を取っていけるような感覚がある内はばっちぐだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?