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総工費3446億円!SPHERE@ラスベガス 総まとめ


概要

  • 2023年9月29日、ラスベガスのストリップ地区にあるザ・ベネチアン・リゾート内に球体型の巨大なアリーナ「Sphere(スフィア)」がオープン

  • 外側の面積が約5万4000㎡、高さ約112m、幅は約157mの2KのLED

  • 総工費は約3446億円(23億ドル)で、東京スカイツリー(総事業費650億円)がなんと!5つ作れる金額

  • 内部のステージ側にはIMAXのスクリーン9枚分16K×16Kの解像度のLEDスクリーンがあり、16万8000個のスピーカーが埋め込まれている

  • 収容人数は約2万人

  • こけら落としはロックバンドのU2が担当

  • チケット代金は日本円で6万円近くから

  • 「The Sphere Experience」というイベントも週に5日開催しており、最新のAI技術を用いたロボット「Aura」や映画監督ダーレン・アロノフスキーが手掛けた映像作品『ポストカード・フロム・アース』も上映

  • 同規模の施設をロンドンでも開発する計画があるが、住民による反対運動も起きている

ステージデザイン by Stufish

Stufish

STUFISHはエンターテイメント建築の分野のリーディングカンパニー
ロンドンに拠点を置きセットデザインを手がけている
彼らのプロジェクトではBLACKPINKの「コーチェラ・フェスティバル」での歴史的なステージやビヨンセの「コーチェラ2018」ヘッドライナーのセットデザイン。他にも、マドンナ、エルトン・ジョン、アデル、ロザリア、日本では嵐のラストライブを手がけている

偉大なデザイナー Mark Fisher
Mark Fisherは、エンターテイメント建築の分野で非常に影響力のある人物で、The Mark Fisher Studio設立。その後STUFISH Entertainment Architectsとして知られるようになりました。彼のコンサートツアー用の建築プロジェクトには複雑なスタジアムロックショーが12回含まれています

Projects;
ザ・ローリングストーンズ
ピンク・フロイド
U2 360°ツアー
AC/DC
マドンナ
レディー・ガガなど大物アーティストのステージデザインを手がけている

彼のLegacyをまとめたページ
->THE ARCHITECT OF ENTERTAINMENT – Stufish

SPHEREのステージデザイン

U2のプロダクションデザイナーであるウィリー・ウィリアムズと故マーク・フィッシャーが設計した有名な「クローセット」を備えた360°ツアーなど、Zoo TVからPopMartまでのデザインに値するツアーがあることから、最高のコンサートデザインの一つとされている。

マーク・フィッシャーがU2と初めてツアーしたのは1992年のZoo TVで、その後もPopMart、Elevation、Vertigo、360°ツアーなど、StufishとU2との協力関係が続いている。Stufish V2は、ウィリアムズとU2との協力関係を続け、「Innocence + Experience」ツアーや「Joshua Tree」ツアー、「Experience + Innocence」ツアー、「Bono’s Stories Of Surrender」ブックツアー、「U2:UV Achtung Baby Live in Las Vegas」などを手掛けている。
このプロジェクトは約18か月前に始まり、ショーがどのように見えるかについてのアイデアを1年間開発してきました。新しい会場でルールがわからなかったため、舞台がそのエリア内にあるべきかどうか、キャットウォークや複数のステージ、上下に動くステージなどが要求された。

Photo courtesy of Stufish
  • スフィアスクリーンの寸法は、幅350フィート幅×天高250フィート

  • ステージはブライアン・イーノの照明付きターンテーブル(2021年作)ステージは30フィートの円形ターンテーブルで46フィートの正方形上に設置されカスタムビデオスクリーンがステージ床を覆っている。ROE Vanishで作られた4フィートのLEDサーフェスを周囲に持つことで浮かんでいるように見える

  • スピーカーはステージ下に配置されビデオサイドスクリーンを通じて音を出すことができる

  • バックラインテクニシャンたちはステージの後端部分にいることができそこは7フィート6インチまで傾斜しステージは非常に純粋でシンプルな外観を持ち、前部にリフトとロボットカメラが設置されている

Rendering courtesy of Stufish
  • ビジュアルイメージ(上図)では、スクリーンの1フィート×3フィートのハッチを通したベッドシーツで作られた長いロープがあり、そのロープは風船の紐として描かれています。これはスクリーンとステージを物理的につなぐ方法です。

  • ステージとスクリーンのレイアウトは観客の視線(サイトライン)の問題を引き起こさず、バンドがスクリーンと比較して小さすぎないようにすることを重要としてデザインされている。

  • ステージは「スフィア表面のイメージ」「バンド」「観客」との結びつきを作る役割を果たしています。

ステージとバックヤードレイアウト

制作チームクレジット

ステージデザイン:

  • ステージデザイン:Stufish Entertainment Architects

  • ステージ構築:TAIT

  • スクリーン:FUSE

  • 照明ランプポスト:Y-Lines, Belgium

  • バリア:EPS

  • 追加の風景要素:SRS Fabrication and Electric Sky

  • ドラムライザーとクリアPlexi:SRS

  • 中央ターンテーブル:All Access, LEDストリップはElectric Sky

  • ソフトグッズ:Rosebrand

クリエイティブチーム:

  • クリエイティブディレクター:Willie Williams

  • セットデザイナー:STUFISH

  • エグゼクティブディレクターおよびバンドコンサルタント:Gavin Friday

  • クリエイティブコンサルタント/ビデオアーティスト:Es Devlin

  • クリエイティブコンサルタントおよび振付師:Morleigh Steinberg

  • クリエイティブコンサルタント、スタイリスト、ワードローブヘッド:Sharon Blankson

  • サウンドデザイン:Joe O’Herlihy

  • ビデオライブディレクター:Stefaan “Smasher” Desmedt

  • サウンドコンサルタント:Steve Lillywhite, Jacknife Lee Live

  • コンテンツプロデューサー:Treatment Studio

  • ビデオアーティスト:John Gerrard, Marco Brambilla, Industrial Light and Magic

  • プロダクションマネージャー:Jake Berry

  • アソシエイトディレクター:Mike Smith

  • ツアーディレクター:Ciaran Flaherty

  • ツアープロデューサー/プロモーター:Arthur Fogel for Live Nation Management


Photo by Kevin Mazur, Getty Images (Nevada Ark by Es Devlin)

167000chのパワーアンプ by Powersoft

Powersoft

Powersoftは、イタリアに拠点を置くアンプメーカーで、世界で初めてPWM(Pulse Width Modulation)技術とPFC(Power Factor Correction)技術を開発し、電源からの総エネルギーを余すことなく出力パワーへの変換を実現。これにより、エネルギー消費を最小限に抑え、ユーザーへ向けた直接的な電気料金の節約と、地球環境保護への貢献を実現していると言われている。

https://www.powersoft.com/en/about/technologies/class-d/

皮膚感覚フィードバック ハプティックス技術

ハプティクス(Haptics)は、振動や動きで皮膚感覚フィードバックを得るテクノロジーで、触覚技術(Haptic Technology)とも呼ばれる。具体的な例としては、iPhoneのホームボタンで物理的なボタンが存在しないにも関わらず、ユーザーが指でボタンを押し込んでいるような感触を得ること。

https://ascii.jp/elem/000/001/228/1228610/

Sphereで使用されているPowersoftの没入型ハプティック技術とパワーアンププラットフォームについて;
会場の10,000席のハプティックシートは、Powersoftのインフラサウンドシステムと連携しており、視覚的および音響的な刺激を超えて感覚を引き付ける、よりリアルな体験を提供している。PowersoftのMoverは、観客が視覚や聴覚の刺激を超えた、より説得力のあるリアルな体験を提供するための画期的な小型トランデューサー。この技術は、各パフォーマンスに応じて椅子を振動させたり揺れさせたりすることで、観客をまるで別世界へ誘うような体験を作っている。低周波振動システムに加えて、718台のQuattrocanaliアンプで2,500のオーディオ・チャンネルを座席に供給

超低周波振動トランスデューサーMover

Immersive Soundを駆動パワーアンプ

HOLOPLOTによるSphere Immersive Sound用のパワーアンプとして統合されており 167,000チャンネルを16チャンネルアンプによって構成されている。HOLOPLOT X1 Matrix Arrayに統合された16チャンネルアンプに加えて、PowersoftはX1システムのサブウーファーで使用される特許取得済みのIPAL(Integrated Powered Adaptive Loudspeaker)技術を提供。これにより、音響性能が向上し音響負荷や条件に関係なく音響システム再生の制御が追加される。

Powersoft HP

ショーデザイン Willie Williams

Willie WilliamsとU2

U2の1982年から始まった大規模ツアー Zoo TVPopMartElevationU2 360°などでウィリー・ウィリアムズTreatment Studioは視覚的に拡張させたショーをデザインしてきた。40年たち、彼らの新しいショー「U2:UV Achtung Baby Live」がスフィアのこけら落としとなった。

最初は乗る気じゃなかった…こけら落とし公演のショーデザイン

2年前に初めてSphereでショーをする話が来たが最初はあまり乗り気ではなかった。すでにスペックインしている機材ベースにショーを考えることは不安を感じた。機材というよりはショーのベースは映像のアイデアから始まった。学生にもいつも「機材リストからデザインを始めることはできない」と言っている。

バンドとの最初の会話から、私たちは小さなボートではなく大型客船を作っているということを強調。大規模ビデオプロジェクトはバンドにとって初めてではなかったのでこれを完全に理解し、デザインプロセス全体を通じてバンドが関与し続けた。

大物3人がタッグを組んだ!Es Devlin / Ric Lipson

Willie Williamsと共にEs Devlin*StufishRic Lipsonがタッグを組みストーリーボードを開発し、数ヶ月にわたったプロセスだった。この新しいスフィアの会場をイメージしながらのプロセスだった。
*Es Devlin:英国出身アーティストでステージデザイナー。彼女の作品は多岐にわたり光や映像を動的な形状にマッピングするなど特徴をもつ。劇場とオペラからキャリアをスタートしロンドンのBush Theatreで働いた後は1998年にはナショナル・シアターでハロルド・ピンターの「Betrayal」のセットデザインを手がけた。Beyoncé・Kanye West・Adele・U2・The Weeknd・Lorde・Pet Shop Boysなど大規模なツアーステージのデザインを担当。2020年のWorld Expo in DubaiではUK Pavilionのデザインを手がけ世界博覧会が始まった1851年以来初めて女性がUKから委託されました。

UK Pavilion@Dubai expo2020

力を入れた場所は?

一貫性のあるストーリーラインを持つ全体を包括するショーを作りたかったと言われておりデジタルアーティストのグループ展示のようなものでもあり直接一緒に働いたアーティストもいれば、間接的に関わったアーティストもいた。Bonoはショーの途中で「建物を消して外の世界を照らす」ことを強く提案。特に「フラッグ」を含むデジタル風景を作るアイルランドのアーティストであるジョン・ジェラードの作品を取り入れることにも力を入れた。これは環境問題にも関連しているようだ。

Photo courtesy of Stufish

レンダリング時間が課題となる大規模解像度

Treatment Studioはショーのすべてのビデオコンテンツを制作するという壮大な課題を引き受けビデオシーケンスの大部分はTreatmentチームのビデオクリエイティブが制作。Marco BrambillaEs DevlinJohn Gerrardは、各自の既存作品をベースに提供したもののスクリーンの解像度が非常に高いためすべてを一から作り直す必要があった。Bonoの「消える建物」のパートではIndustrial Light & MagicにCGIシーケンスの制作を依頼された。
大きな課題はレンダリング時間を合理化すること。一部のシーケンスではフレームあたり最大15分(映像の1分あたり約2週間)のレンダリング時間が計算されていたがこれは現実的でなかった・・・Treatmentの技術リード Brandon Kraemer・Smasher Desmedt・disguise・Fuseで実行可能なワークフローを作成した。ワークフローにおいてVRはショーのデザインに非常に役立った。VRの解像度は非常に低いが何かがどれだけ大きくなるべきとか何かがどれだけ速く動くべきかを決定するのに頻繁に役立った。建物全体から要素を見ることができ階段を上り下りすることなくできた。

Photo courtesy of Stufish

照明について

Sphereには約150の照明装置があるがそのほとんどがバルコニーレールに沿って配置されているため平面のフロントライトを提供するかスクリーンを照らすしかできないので特に役立つものではなかった。この建物で後方照明を配置する場所としてLED壁の前にトラスを吊れないため無い。
結果的に合計12のバックライトでライブエンターテイメントを検討。iMagとカメラの照明はバンドにとって非常に大きな懸念事項だった。昨今ショー全体で観客によって撮影されるためあらゆる考えられる角度から撮影されることを考える必要がある。
照明はAlex MurphyEthan WeberMatt Beecherで進めた。

映像再生システム開発 by 7thSense

最大の技術的な課題はライブショーの運営に適した再生システムだった。7thSenseによる非常に高解像度の映画を表示するようなシステム設計は通常コンサートツアーで使用されるタイムラインベースのシステムではなかった。TreatmentのBrandon Kraemerが率いるチームはSmasher・Disguise・Fuseと共同で約23台のdisguise g X3メディアサーバーを一緒に活用するシステムを作り出した。これにより必要な解像度(12K x 12K)を提供するだけでなくツアーで慣れ親しんだカメラの統合や画像の操作も可能となった

Willieのコメント「このショーは絶賛のレビューを得ているだけでなく、何十年もの間で概念的で技術的な境界を押し広げてきた人々の遺産がついに認識されている。それの一部であることは非常に満足感がある。」

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