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映画 人間失格を見たもので、 読んでほしい坂口安吾作品を書いていく

あの映画のラストの時間軸後に、是非読んでいただきたい坂口安吾氏の文章

(映画では藤原竜也さんが楽しそうに演じてくれてましたね)

を読み返しがてら、つらつらと並べていっただけのnoteです。

青空文庫で読めるもの中心です。

(青空文庫は、誰にでもアクセスできる自由な電子本を、図書館のようにインターネット上に集めようとする活動です。著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、テキストとXHTML(一部はHTML)形式に電子化した上で揃えています。:青空文庫早分かりより)


(あれを観に行く方は、詳しい方か、元々そちらに興味のある方が多いかなぁ…とも思ったけど、それでも書く。好きだから。)

長いものを読む気力のない方向けに、私の好きなところの抜粋も。

不良少年とキリスト

他の坂口安吾氏の随筆を読んだことがあると、書き殴った感とか、感情のままに、まとまりきらなかったんだろうなぁ…とか、わかるんですが、とりあえずこれを読まねば始まらない。

(途中、沢尻エリカさん演じる太田静子が「私は不良が、いいの」と言ったのは、コレ意識かなぁと、後から思いました。)

以下好きなところを、好きなように抜粋したもの。

「もう十日、歯がいたい。右頬に氷をのせ、ズルフォン剤をのんで、ねている。ねていたくないのだが、氷をのせると、ねる以外に仕方がない。ねて本を読む。太宰の本をあらかた読み返した。」

「かの三文文士は、歯痛によって、ついに、クビをくくって死せり。決死の血相、ものすごし。闘志充分なりき。偉大。

ほめて、くれねえだろうな。誰も。」

「太宰の死は、誰より早く、私が知った。まだ新聞へでないうちに、新潮の記者が知らせに来たのである。それをきくと、私はただちに置手紙を残して行方をくらました。新聞、雑誌が太宰のことで襲撃すると直覚に及んだからで、太宰のことは当分語りたくないから、と来訪の記者諸氏に宛て、書き残して、家を出たのである。」

「新聞記者は私の置手紙の日附が新聞記事よりも早いので、怪しんだのだ。太宰の自殺が狂言で、私が二人をかくまっていると思ったのである。

新聞記者のカンチガイが本当であったら、大いに、よかった。一年間ぐらい太宰を隠しておいて、ヒョイと生きかえらせたら、新聞記者や世の良識ある人々はカンカンと怒るかもしれないが、たまにはそんなことが有っても、いいではないか。本当の自殺よりも、狂言自殺をたくらむだけのイタズラができたら、太宰の文学はもっと傑れたものになったろうと私は思っている。」

「フツカヨイをとり去れば、太宰は健全にして整然たる常識人、つまり、マットウの人間であった。小林秀雄が、そうである。太宰は小林の常識性を笑っていたが、それはマチガイである。真に正しく整然たる常識人でなければ、まことの文学は、書ける筈がない。」

「私は生きているのだぜ。さっきも言う通り、人生五十年、タカが知れてらア、そう言うのが、あんまり易しいから、そう言いたくないと言ってるじゃないか。幼稚でも、青臭くても、泥くさくても、なんとか生きているアカシを立てようと心がけているのだ。」

「第一、ほんとに惚れて、死ぬなんて、ナンセンスさ。惚れたら、生きることです。」

「ヘーゲル、西田幾多郎、なんだい、バカバカしい。六十になっても、人間なんて、不良少年、それだけのことじゃないか。大人ぶるない。」

「芥川も、太宰も、不良少年の自殺であった。不良少年の中でも、特別、弱虫、泣き虫小僧であったのである。」

「死ぬ、とか、自殺、とか、くだらぬことだ。負けたから、死ぬのである。勝てば、死にはせぬ。死の勝利、そんなバカな論理を信じるのは、オタスケじいさんの虫からを信じるよりも阿保らしい。

人間は生きることが、全部である。死ねば、なくなる。名声だの、芸術は長し、バカバカしい。私は、ユーレイはキライだよ。死んでも、生きてるなんて、ユーレイはキライだよ。」

「然し、生きていると、疲れるね。かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるですよ。戦いぬく、言うは易く、疲れるね。然し、度胸は、きめている。是が非でも、生きる時間を、生きぬくよ。そして、戦うよ。決して、負けぬ。負けぬとは、戦う、ということです。それ以上に、勝負など、ありやせぬ。戦っていれば、負けないのです。決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません。ただ、負けないのだ。」

……………全然、抜粋しても短くならなかった(もはや要約か?)…ごめんなさい 笑

興味の湧いた方は是非、全文を読んで頂ければ。

以下、抜粋あったりなかったり、映画と関連ありそうなのも、ないのも。

私の好みのおすすめです。

人の子の親となりて

短い。すぐ読めます。一番好き。

映画の中で太宰先生に、偉そうにあんな壊しちゃいけない家族なぞ、作家は持つもんじゃない、とかなんとか(うろ覚えです、すみません)言っておきながら、その後、子どもが出来て溺愛ぶりを書いちゃう坂口安吾さん。

「二ヵ月ぐらいたつうちに笑顔を見せるようになった。そうなると可愛くなった。」って、チョロすぎる 笑

囲碁修行

エッセイで一番好き。映画と全然関係ない。人の子の親となりてよりは長いけど、テンポの良さでさらさら読める。愉快な囲碁のお仲間とのやり取りを想像するのが楽しい。

ピエロ伝道者

「空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。」

軽やかな安吾節がきいていて、読みやすく、安吾の思想がわかりやすいかな、と思う一作。

作家 太宰治に、こうあってほしい、と思っていたところに、近いのでは……というところでもある。


志賀直哉に文学の問題はない

タイトルから、「おっ、坂口安吾は太宰派ではなく、志賀直哉擁護派か…?」と思わせておいてからの内容、最後に、なるほどそういう意味での「志賀直哉には、文学の問題などはないのである」という意見なのね、というところがとてもらしくて良い。

堕落論

長め。坂口安吾氏の代表作にして、出世作。映画で「堕落ってなんだよ……」となった方に 笑。「坂口さんのより売れましたしね」もおそらくコレと比べての発言?

少し堅苦しく感じるかもしれませんが、戦後、やっと文壇が生き返ってきた頃に、坂口安吾氏が世間の人々に伝えたかったこととは……という目線で読んで頂ければ。彼は、弱い人間に優しい文豪なんですよ(と私は思っている)。


百万人の文学

非常に短いです。最後の数文が書きたかったがためだろうなぁ、というのが……。


有名どころ多めでしたが、お付き合いいただきありがとうございました。

他にも、ご興味ありましたら、青空文庫で読めるもの、沢山ありますので、気ままに手を伸ばしてみて頂けたら嬉しい限りです。


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