N限転生炎獣のすゝめ

はじめに

2023年4月9日に行われたN限の大会で、転生炎獣を使用して優勝することができました。
レアリティを絞ったレギュレーション大会として、NRのカードのみを使用した構築はある程度メジャーではありますが、更にカードプールを狭めたN限定構築というものも存在します。レアリティに制限がかかるとデッキの主要パーツが使用できなくなる為、展開が遅くターンを応酬し合う対戦になる印象を抱かれるかもしれません。しかし、いざ蓋を開けてみるとやはりそこにあるのは遊戯王で、研究が進むにつれてN限環境においても展開は高速化しています。
今回はN限で転生炎獣を組むことになった経緯や、デッキの動かし方の説明をさせていただきます。

転生炎獣を組むことになった背景

今回使用した転生炎獣の構築は以下の通りです。

N限環境における最も強力なデッキは「破械メタル」と呼ばれる、安定感・展開力共に凄まじいデッキです。他にも「マジェメタル」などの派生もありますが、N限環境における強いデッキというのは、メタルというテーマの安定した展開力をサポート、利用する構築を指すことが一般的です。
優勝しておいて矛盾しているかもしれませんが、N限環境における転生炎獣は、”破械メタルに唯一抗うことができる可能性を秘めているデッキ”という位置づけだと考えています。
特別な対策をしていないミラーマッチにおいて、大会に出場しているプレイヤーであれば実力は拮抗していると仮定すると、勝負を左右する最も大きい要素は強いカードを引き込む”運”になります。
遊戯王における”運”をコントロールするには、構築の段階で緻密な確率計算を繰り返す必要がありますが、同じ構築の場合は単純に引きの勝負になってしまいます。
ピンポイントでメタを張る程のカードプールもないN限において、1強のデッキがあるのであれば単純な運勝負になっていくのは自然な流れなのかもしれません。
しかし、僕は自分が使うデッキのミラーマッチが想定される大会で、確実に勝つことのできるロジックのないデッキを大会に持ち込むことはしません。なぜなら、ドロー力が皆無だからです。滝でドロー練習する方がいたら遠慮なく僕を誘ってください。(GX感)
そのため破械メタルに勝ち越すことのできるデッキを組む必要があったことから、本構築の仮想敵は破械メタルとなっています。

破械メタルに勝つための後攻の動き

破械メタルの先攻の弱点は、初動に破械モンスターが絡むことにより、特殊召喚の悪魔族縛りが生まれることがあり、それ以上の展開ができないことです。
N限構築の先行の弱点は、強力な制圧モンスターが存在しないことです。
この二点から、後攻を取った場合でも破械モンスターを置きっぱなしになる盤面を上手く利用することで後攻から破械メタルに対して有利な展開を作っていくことができます。(そもそもN限環境で破械モンスター置きっぱなし自体がかなり強いんですが)
転生炎獣の展開の説明に入る前に、N限環境を知らない方が大半だと思うので、破械メタルの初動を載せておきます。
①メタルモンスターでスケールを張る
②破械モンスターを通常召喚
③スケールの効果で破械モンスターを破壊し、コンビネーションをセット
④破械モンスター(サラマorラキア)を特殊召喚
⑤破械モンスターの効果でコンビネーションを破壊
⑥破壊されたコンビネーションの効果でメタルのスケールをサーチ
⑦サーチしたスケールを張り、再び破械モンスターを破壊しカウンターをセット
カード二枚からスケール、カウンター、サラマの効果が絡めば破械モンスター二体が揃うので恐ろしい限りですね。
しかし、先述した通りここから無理に展開を伸ばしたところで強力な制圧モンスターがいるわけではないため、殆どの先攻展開はここで止まります。
相手の破械モンスターの位置は、破械モンスターをコーディネラルで取られてそのままリンク素材にされてしまうとアドバンテージを損し、尚且つ鬼人で大ダメージを受けることから、右端と左右どちらかのEXモンスターゾーンの下に配置されていることが多いです。

破械モンスター二体とカウンターの伏せられた盤面をひっくり返してワンキルすることができるデッキはN限には存在しないため、後攻展開ではこちらのリソースを稼ぎつつ次のターンに備える必要があります。
そのため、理想展開をした破械メタル対面の後攻1ターン目で目指すモンスターは、シューティングコードトーカーになります。

自身の攻撃権に加え、リンク先に相手の破械モンスター及び自分のモンスターがいれば、最大3体の破械モンスターを相手のデッキから削りつつ最大3枚のカードをドローすることができます。このドローが非常に強力で、デッキの核である「サラマングレイト・ギフト」にアクセスできる確率が上がり、勝ちが明確に見えてきます。
シューティングを出すには召喚権+2体の特殊召喚が必要になります。本構築でシューティングに到達するには「バックアップ・セクレタリー」「転生炎獣・ミーア」「フューリー・オブ・ファイア」を駆使する必要があります。モンスターのみで行う最も強いシューティングの出し方は、
①フェネックを通常召喚
②ミーアの効果でファルコを捨てて特殊召喚
③ファルコの効果で場のミーアを手札に戻して墓地から蘇生
④手札に加わったミーアの効果で再び特殊召喚
⑤スペース・インシュレーターを踏み台にシューティングをリンク召喚
が理想展開です。

もちろんフューリーを使用してファルコを出してフューリーを再セットする動きなんかも強いですが、フューリーの発動後はEXモンスターを1体しか特殊召喚できなくなるという制約が発生するため、インシュレーターを嚙まさずに直接シューティングを出さなければならないことに注意しなければいけません。

⑤でインシュレーターを一回出す必要に関しては後述します。
また、フェネックはサイバース族のリンク素材になると転生魔法カードをサーチすることができるため、ここで「転生炎獣の再起」をサーチします。

メインフェイズ2のシューティングのドローを見て、手札に「破械童子アルハ」「ダブルサイクロン」があれば、セットした再起を破壊することで必要があれば「ギフト」をサーチすることができます。ここのドローでギフトにアクセスできるかどうかが後の展開に大きく関わってくるため、気合を入れて右手を振り抜きましょう。

破械メタルに勝つための先攻の動き

先攻を取った場合は、上振れから順に目指す盤面を書いていきます。

  1. エンコードトーカー+電脳界甲-甲々

  2. シューティングコードトーカー

  3. 電脳界甲-甲々

1の布陣はとても硬く、甲々の戦闘破壊耐性をエンコードトーカーに付与することで、メタルの主な打点であるヴォルフレイムの2400打点から守ることができ、甲々を攻撃対象にされた場合はエンコードトーカーの効果で甲々を戦闘破壊から守り、甲々の効果で攻撃モンスターを除外できます。守備力が2400あるため、破械モンスターでは抜くことができません。

2では、相手がヴォルフレイムに到達しない限り抜かれることがなく、生き残れば次のターンにアドバンテージを大きく稼ぎつつ展開していくことができます。

3では、ややお祈りになってしまいますが、N限において戦闘を介さない1ターン目の破壊は少なく、優秀な壁となってくれることが多いです。出す位置はコーディネラルのケアをしながら次のターンにエンコードトーカーのリンク先になれる右端が最適です。

基本的には1or2の展開の途中でフォクシーやフェネックから再起をサーチして何とかギフトを回収しにいきます。
また、後攻展開の⑤と同様に、先行展開においてもインシュレーターを踏み台にしてリンク3を出すことは重要です。理由としては、リンク3が突破された後、ミーアを素材にトークバック・ランサーをリンク召喚し、インシュレーターの効果で蘇生、ランサーの効果でインシュレーターをリリースして墓地のコードトーカーモンスターを蘇生し、攻めに繋げることができるためです。

2ターン目以降の展開

1ターン目を乗り越えた後は、様々なパターンの盤面の候補からベストを選んで攻めていく必要があります。
①エンコードトーカー+甲々
②鬼神
③甲々

①で2ターン目に出すエンコードトーカー+甲々の破壊力は凄まじいです。
リンク2でアップデートジャマ―を経由している場合、甲々の攻撃時にエンコードトーカーの効果を発動し、甲々を戦闘破壊から守りつつエンコードトーカーの打点上昇、甲々の効果で相手のモンスターを除外した後に高打点となったエンコードトーカーの二回攻撃で一気に相手のライフを削ることができます。エンコードトーカーの攻撃力が4000を越えればいいため、相手のモンスターが一体のみの場合は、攻撃力1700以上のモンスターがいるだけでワンキルが成立するこのコンボはかなり強力です。

②の鬼神は、アップデートジャマーを経由すると3000打点の二回攻撃になり、リンク数が伸ばせない場合はこれを選ぶことが多いです。次のターンの壁にもなってくれる鬼神は頼りになります。

③で甲々を単純に出すだけでもそれなりに強く、破械メタルにも共通していますが、N限における最強の汎用EXモンスターである甲々を出しやすいデッキ=強いデッキといっても過言ではないくらいパワーのあるモンスターです。
メタル相手にはサンドバックになってしまいライフが追い付かないことも多々あるため、気持ちを堪えて守備表示で出す判断も時には必要です。

2ターン目以降はこれらの盤面を目指していくわけですが、①の盤面を作るには5体のモンスターが必要になります。
それだけの素材を供給するために必要となるのが「サラマングレイト・ギフト」です。

1ターンに一度、手札の転生炎獣を捨てることでデッキから転生炎獣を落とし、1枚ドローすることができます。
相手ターンにも使用できるため、ファルコを落としつつ再起やフューリーを回収できる他、フォクシーを蘇生するトリガーとなったり、展開に必要な転生炎獣を墓地に揃える重要な役割を担います。
繰り返しますが、ギフトにアクセスできるかどうかで勝敗が大きく分かれます。
ギフトが機能し、墓地にフェネック、ミーア、ウルヴィー、フォクシーなどがいる場合は最も強い展開が可能です。
①再起でフェネック、ウルヴィーを回収
②ウルヴィーでミーアを回収
③ミーアが手札に加わったことにより自身の効果で特殊召喚
④フェネックを通常召喚
⑤フェネック+ミーアでアップデートジャマ―をリンク召喚
⑥リンク素材となったフェネックの効果でフューリーをサーチ
⑦フォクシーの効果でウルヴィーを捨てて蘇生
⑧アップデートジャマ―+フォクシーでエンコードトーカーをリンク召喚
⑨フューリーを発動しフォクシーとフェネックを蘇生し甲々をエクシーズ召喚

このように、再起一枚で突破力のあるエンコードトーカー+甲々の布陣を用意できます。
展開の途中でフォクシーの効果で相手のスケールを割ることができるのも強みの一つですね。
もちろん他にリンク数を伸ばすことができるようであれば、フューリーで制約が掛かる前に打点を並べておけばワンキルも狙いやすくなります。

リソースの管理としては、
⒈フェネックを素材にしたリンク召喚
⒉ファルコを墓地に送る
⒊相手ターンにギフトでファルコを墓地に送る
1~3の内2つ以上を毎回行うことで、再起とフューリーを途切れさせないように補充することができるため、毎ターン強力な展開を行うことができます。

採用候補のカード

・バージェストマカナディア
 奈落の落とし穴との入れ替え候補です。今回はP召喚から出てくるメタルモンスターを止めるために奈落の落とし穴を採用しました。
しかし、奈落の落とし穴ではコードトーカーを蘇生できないように除外してくる甲々を止めることができません。甲々の効果で付与された戦闘破壊耐性はカナディアで裏側にした際に解除され、返しのターンに戦闘で甲々を突破できることを考えると奈落の落とし穴よりもカナディアの方が本構築では強いかもしれません。

・転生炎獣モル
 リンク先への特殊召喚ができることから、リンク数を伸ばすことができます。同様の召喚方法に魔境のパラディオンがいることから、破壊効果のあるパラディオンを採用しました。
両方ともウルヴィーの効果で墓地から回収することができるため、差別化を図るのであれば②の効果になります。しかし、実際②の効果を使う程墓地に転生炎獣が揃っている状況なのであれば、追加のドローが無くても十分強い盤面を作れることから採用となりませんでした。

・破械童子サラマ
 再起を破壊してギフトをサーチするギミックのためにアルハが3枚、ラキアが1枚入っています。アルハは召喚権を使わないので、初手でフェネックを絡めたリンク召喚に成功した時、再起をサーチするために展開の最後に特殊召喚します。シューティングが出せていれば、リンク先にモンスターを置くことができるのも採用の理由の一つです。
相手のターンに破壊された時に他の破械がいなければあまりにも弱いことから、初手に引いてしまった場合は召喚権を使うものの、能動的に再起を破壊することができるアルハも一枚採用しています。
しかし、転生炎獣の展開では基本的に召喚権をフェネックに使用するため、サラマやそれ以上のラキアを入れる必要はありません。採用するのであれば、全く違ったコンセプトのデッキとして組む必要があります。


終わりに

僕がN限定構築を始めたのはMDがリリースしたすぐ後だったと思います。
当時破械メタルを既に使いこなしていた方がTwitterでN限の募集をかけており、対戦した時にボコボコにされました。ミラー以外で何とか破械メタルに勝つことができるデッキを考えた際に辿り着いたデッキが本構築です。
お互い大きく事故らない場合は、先攻でギフトへアクセスできればほぼ勝つことができますが、後攻ではギフトにアクセスできたとしても勝率はそれほど高くありません。
そのため、僕は転生炎獣を”破械メタルに唯一抗うことができる可能性を秘めているデッキ”という評価をしています。
ミラーで自信の無い運ゲーをかますよりは勝率が高いと踏んで使用していますが、引きの運に自信のある方は事故率の低い破械メタルを使用した方がトータルの勝ち数は多くなると思います。
破械メタルを仮想敵として組んだ構築ではありますが、もちろん他のデッキへの応用も効きます。NRの対戦部屋で使用した際もそこそこの勝率だったため、転生炎獣に興味がある方は触ってみると面白いと思います。
僕がNRを始めた時にこのデッキを更に強化できるよう色々試しましたが、このコンセプトの構築としての完成度がとても高く(自分で言うのもですが)、せいぜい罠の枠を迷い風や激流葬に替えるくらいでした。
展開方法やギミックを活かして、NRで更に転生炎獣を発展させるためにこの記事が何かの参考になれば嬉しいです。


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