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囲碁HotWeek(2023年11月31日)

今週の囲碁界は、プロの棋戦では王座戦そしてアマチュアの大会では芝野虎丸カップが賑わっていた週だった。

1.今週の棋戦

1-1.王座戦

井山裕太王座に余正麒八段が、挑戦している王座戦第4局は、余八段が勝てば王座奪還となり、井山王座としては何としても勝って最終局へ繋げたい局だった。

序盤は、均衡した名勝負であり双方じっくりとした構えからスタートしました。白48と肩をついたところから局面が動きました。

白52にと黒地の削減と白石の根拠を求めに行った手に対して、黒53が負ければ敗着となるゴッツイ手だった。黒53と黒55と分断したものの、黒55一路上の切り味をみた上で、右上隅を軽くみて白56,58と軽やかに荒らしたのは機敏な一手だった。

更に、白62も隅の陣地を辛く削り取った上で、白66が形の急所であり白68と渡って、外壁の黒の陣地と目を無くして白が有利な形勢となった。

白76のぶつかりはこの一手ですが、白78と白80の一流のプロらしい技をしかけて白石本体の死活の形作りにいった白番に対して、井山王座の棒ツギ黒81から85手までの反発が非常に厳しく、ここで再逆転して黒番が優勢になる。

手厚い碁になってからの井山王座の収束のさせ方が非常に上手かった。
まずは、下辺から中央に伸びる大石の活きを強要した上で、黒141,143,145が手筋で更に黒147の二段バネも厳しかった。最後は、右上から中央にかける大石が御用となり、井山裕太王座が勝ち切り2勝2敗のタイの成績となり、王座防衛の望みを最終局までつないだ。

本局は、非常に名局です。白120から最終手まで簡単な手順のように思えて、実践のように正確に打たなければ黒は地合いで圧倒いう間に捲られます。アマチュアの大切な中盤から終盤にかけての収束力の勉強になりますので、この碁は是非繰り返し並べて勉強してみて下さい。

最終局は、2023年12月8日(金)に日本棋院囲碁チャンネル【公式】よりLive配信される予定です。

1-2.天元戦

関航太郎天元に一力遼棋聖が挑戦する第49期天元戦の第4局は、12月6日(水)に日本棋院囲碁チャンネル【公式】よりLive配信される予定です。
一力遼棋聖が勝てば棋聖・本因坊に続き三冠制覇となります。関天元としては今期まで温めてきた天元を何としても凌いで最終局まで繋げて防衛した所でしょう。

1-3.呉清源杯

女性国際戦の一つである呉清源杯が30日中国で行なわれ、藤沢里菜女流本因坊が日本勢初の決勝進出を果たしました。決勝戦は12月2,3,4日世界女流最強と名高い韓国棋士の崔精(チェ・ジョン)棋士と優勝を競います。
最強の相手ですが、勢いを維持して優勝して欲しいですね。

1-4.その他

鈴木歩先生、500勝おめでとうございます。
ちょっと鈴木歩先生の歴史と筆者の絡みを述べてみたい。
鈴木先生が小学校4年生頃だったかな、都内の小中高生が参加する大会は、殆ど顔を出されていたと思います。当時は今のように小中高生の大会が充実していなかったので、つるりん大会、芝野虎丸カップみたいなのは無くて、小さな大会や碁会所主催の大会位しか無かったです。

当時私は高校一年生位で、何回か直接対局したのですが、陣地に非常に辛い打ち手でした。当時の想い出は、か弱い小さな女の子というイメージで、背丈が本当に小さかったです。30年以上経た今でも私の鈴木先生のイメージって背丈が小さいイメージのまんまなんですよ。いつ成人したのだろうか?

そして鈴木先生が院生に成られて、プロに入段されるまでは非常に早かった印象があります。プロに入段されてからの棋風の印象は、「中央の戦いに力強くなった」と直ぐに感じました。

アマチュア時代の鈴木先生は、陣地取りとしての囲碁はずば抜けて上手かったです。陣地には成らない手で中盤戦以降の中央の戦いに役立つ手即ち厚みや自陣を強化する守りが、苦手だった点が有ったのですが、プロに入段されてから三段になる位までは、劇的に戦いに強くなった印象を受けました。

その後、林 漢傑八段とご結婚されてからも更に強くなった印象を受けました。接近戦が更に強くなった上に地で先行する囲碁だけでなく、囲碁の幅に深みが増して、幅広い棋風が打てるようになったと感じました。

一番嬉しかったのは、第23期 ドコモ杯 女流棋聖戦において、ハンマーで有名な女流最強と名高い上野 愛咲美女流棋聖を倒して初タイトルを獲得された時には、親戚のおっちゃんのように嬉しかったです。

今、女流棋戦でも若手が成長が著しい時代ですが、もういちど何かのタイトルに絡んで欲しいと思っています。また夫婦仲良く、健康を大切にして現役最高齢の女流棋士である杉内寿子八段(96)のように婆様になっても、末永く囲碁を元気に打ち続けて欲しいです。

2.今週のイベント・大会

2-1.芝野虎丸カップ

小さなお子さんが沢山参加して大盛況な大会でした。
当日、負けて悔しくて泣いた小学生もいたそうです。
そうですよね、各クラス別に優勝すると現役名人である芝野虎丸名人から直接指導を受けられるチャンスですから。
本当にこのような大会は尊いです。

やさぐれたおじさん、おばさん向けの集え中高年大会というのも企画して欲しいです。

2-2.群遊2023

年1回のチーム戦が2023年12月16日(土)に開催されます。
出場される選手や、解説・実況・MCが豪華ですね。
当日には、井山裕太王座、戸島花さん、三島響(初段)、安田 明夏(初段)を始めた豪華キャストが多く参加されます。

OVER THE LEGENDチームの選手構成が面白過ぎです。芝野虎丸名人と許 家元九段がチームにおり、この2人は必ず2勝の勝ち星を期待した上で、レジェンド三人の内一人が勝てばチームが勝ちという絶妙なチーム構成が面白いです。4チームともどれも強いチームですが、仲邑 菫棋士がいる女子チームが頑張って欲しいです。

3.その他

やはり仕事のできる一流の男は、ネクタイ大事ですね。

気が付けば、11月も終わり今年も12月で最後となります。
健康で真剣な囲碁を大きな大会やイベントで打てることって本当に幸せな事だと思います。

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