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井山棋士-五冠達成

2021/12/09(木)に囲碁の7大タイトルの1つ王座戦第5局最終局が、実施されました。芝野虎丸王座に井山四冠(棋聖・名人・本因坊・碁聖)が挑戦していた王座戦。均衡した名勝負の中、井山四冠が得意の稼いで凌ぐ内容で完勝し、五冠を達成し、日本囲碁界の第一人者の貫禄をみせた。

普段、麻雀のことを記載させて頂いている筆者ですが、是非囲碁を知らない方々にも日本の歴史に名を残す棋士が今まさに歴史を刻んでいるという事を少しでもご理解頂けたら幸いです。

1.2021年のタイトル戦

井山祐太棋士は、2021年1月1日時点では、棋聖・名人・本因坊戦のタイトルを保持していました。

1-1.棋聖戦

日本囲碁界の1年は、1月中旬から開始される棋聖戦から始まります。棋聖戦は、読売新聞社主催の一番賞金額の大きいタイトルです。日本囲碁界では、1局の勝敗を2日間合計16時間で競うタイトルの1つであり、3大タイトルと呼びます。

3大タイトルには、棋聖・名人・本因坊があります。棋士人生で最大の目標は、この3大タイトルの1つを棋士人生で1回でも獲ることです。井山祐太棋士の1年は、今年も棋聖戦から始まりました。

井山棋聖は、4-1の成績で2年連続に河野臨九段挑戦者の挑戦を退け、幸先の良い防衛となりました。この防衛により、九期連続棋聖保持者の記録となり、来年1月中旬に開催される一力遼九段と十期連続防衛の記録をかけた戦いがはじまります。

一力遼九段挑戦者は、2021年に碁聖保持、名人の挑戦者となりましたが全て井山棋士に奪取・防衛され若手の第一人者が苦汁を飲まされた結果となりましたので、来年1月から開始される棋聖戦では、並々ならぬ覚悟で挑む事でしょう。

1-2.本因坊戦

「本因坊」というタイトル戦は、1559年からその歴史が続いています。その歴史は、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康家に仕えた家系からきています。現代に至り、3大タイトルの1つとして本因坊戦になっています。

ここ10年以上の本因坊戦は、井山棋士のタイトルといっても過言ではない。

一力遼九段と並んで囲碁界若手No.1の実力を持つ芝野虎丸王座(当時21歳)を挑戦者に迎えての10連覇達成を向けて一大防衛戦であった。

第1局は、井山本因坊が幸先良い一勝を獲りました。しかしその後は、芝野挑戦者の完璧な内容で第2局、第3局、第4局を制しられ、井山本因坊からみて1勝3敗と完全に追い詰められました。

第5局は、井山本因坊の完勝した内容でまず1勝を返した。そして第6局、第7局と連勝し、3連敗からの3連勝と奇跡の大逆転を成し遂げました。幻になった本因坊10連覇を土俵際に踵一つで踏ん張った大横綱のような踏ん張りでした。

本因坊戦第5局は、井山祐太棋士の5冠達成のターニングポイントとなった1局でした。逆に若手筆頭の1人芝野虎丸棋士にとっては、本因坊奪取のチャンスを逃し、王座を井山本因坊に奪取される切っ掛けとなる第5局となってしまった。

囲碁というシビアな世界では、僅か1手1手の選択や1局1局の勝敗が以後のタイトル戦に大きな影響を及ぼす世界です。

本因坊戦の第5局を芝野棋士が制していると芝野棋士は、恐らく勢いを維持して本因坊・王座の2冠になっていました。逆に井山本因坊は、5冠ではなく棋聖のみの1冠になる恐れもある程であった。

筆者は、井山棋士を心の師として10年以上ファンをさせて頂いておりますが、恐らく過去10年を鑑みても2021年の本因坊戦第5局は、井山棋士にとっても歴史的な劇的な勝利だったと思います。

今回の本因坊戦のように追い詰められた時、そして追い詰めた棋士双方の底力が突然出現します。井山本因坊は本因坊10連覇の重圧にそして芝野棋士にとっては、本因坊奪取の重圧それぞれ感じていたタイトル戦でした。

1-3.名人戦と碁聖戦

名人戦は、日本囲碁界の3大タイトルの1つです。今回の名人戦は井山棋士からみても大変な日程でした。

2021年7月7日の本因坊戦第7局を制した井山棋士には、複数のタイトルフォルダーならではの重責が今年も訪れました。

2021年6月26日・・・碁聖戦第1局開始 
2021年7月7日・・・本因坊戦第7局 本因坊戦防衛
2021年7月12日・・・碁聖戦第2局 
2021年7月17日・・・碁聖戦第3局
2021年8月17日・・・碁聖戦第4局
2021年8月26,27日・・・名人戦第1局開始
2021年8月29日・・・碁聖戦第5局 碁聖奪取
2021年9月8,9日・・・名人戦第2局

本因坊戦防衛時点で一力碁聖への挑戦手合が開始されます。2つのタイトルが並行した日程進行になります。そして、本因坊戦を死闘の末制した後、碁聖戦1本かと思えば、名人戦の第1局が開始され再び2つのタイトルの日程進行となります。

元々、囲碁も将棋も複数のタイトルを1人の棋士が独占するような年間計画は考慮されていません。囲碁も将棋も30年以上前ではタイトル1つ獲って歴史的な棋士であり、多くても3つぐらいというのが昭和の時代でした。

それが、囲碁界では井山祐太棋士、そして将棋界では羽生善治棋士・藤井聡太棋士など複数のタイトルを独占する強さを魅せる棋士達が出現しだしました。

将棋・囲碁の2日制のタイトル戦では、棋士は体重の3kg前後痩せてしまう。棋士の多くは痩せ型の方が多く2日制の対局から最低1週間~2週間の休息を必要とされます。1日制のタイトル戦においても1~2kg前後痩せます。

上記日程の重複具合をもう一度ご確認頂きたい。大きなタイトルを防衛し休む間もなく次日程次日程と複数のタイトルフォルダーの覇者のみが起きるハードスケジュールとなります。

そして、3大タイトルの挑戦者に現れたのは、日本囲碁界の若手No1の一力遼(24歳)九段です。(碁聖戦時点では、碁聖・天元の2冠でした。)

今年の井山棋士は、日本囲碁界の若手No1の2人一力遼棋士、芝野虎丸棋士に継続して防衛戦と同時2人への挑戦をするという大変な1年間でした。

今年の名人戦の行方は、先に先行されていた碁聖戦の勝敗に大きく関わっていた。碁聖戦では一力碁聖が防衛側で井山挑戦者と対戦し、名人戦では井山名人が一力碁聖の挑戦を受けるという囲碁界を先導しているトップ棋士に起こるタイトルを跨いでのタイトル争いが継続している。

尚、一力遼九段は、今年の碁聖戦から開始して、2021年の碁聖戦・名人戦そして来年の棋聖戦挑戦と井山祐太棋士と合計3つのタイトルを連続して合計19試合連続の戦いとなっています。

このようにトップ棋士が複数のタイトル戦で激突すると、先に先行している日程におけるタイトル戦の影響がその後のタイトル戦の対局者の心理に大きく関わってきます。

碁聖戦は、7大タイトルの1つであり1日制の試合を最大5局で勝敗を決定します。碁聖戦は一力遼碁聖が大変充実した内容で第3局終了時点では、一力碁聖からみて2勝1敗の成績で防衛まで僅か1局でした。

その後天王山の第4局に関して井山祐太挑戦者が充実した内容で押し切りました。同時に名人戦第1局の日程も開始されます。そして、迎えた碁聖戦第5局は、挑戦者井山棋士が勝利を収め、棋聖防衛・本因坊防衛・碁聖奪取と名人戦も併せて4冠を成し遂げました。

碁聖戦に敗れた一力棋士の名人戦におけるメンタルが心配されましたが、流石若手No.1の実力者です。1局目で先行されたものの、第一人者の井山名人を最終局まで充実した内容で拮抗した勝負を継続していました。

名人戦第7局に関しては、本因坊戦の芝野虎丸挑戦者と同じ心理状態に入ったと思われます。井山名人のここ10年で培った技術と精神力にほんの僅かの差ですが、タイトル奪取の重圧に屈してしまいました。

1-4.天元戦と王座戦

名人戦の死闘が終わった後も、トップ棋士の2021年のタイトル争いは更に続きました。

井山4冠(棋聖・名人・本因坊・碁聖)は、先の本因坊戦の死闘を演じた芝野虎丸王座に王座戦の挑戦者として、そして一力遼天元は、井山4冠に名人を防衛され、碁聖を奪取された後ですが最後の1冠天元戦を若手の先鋭である関航太郎七段(20歳)を挑戦者に迎えての防衛戦が年内最後の戦いです。

天元戦は、先鋭の関航太郎棋士が、一力遼九段を3勝1敗で押し切り、嬉しい初タイトルとなりました。逆に一力遼九段にとっては、日本囲碁界最強棋士の井山祐太棋士と死闘が天元戦にも何かしらの影響を及ぼしたと考えられ、今後上の井山、下からは若手棋士という厳しい囲碁界に更なる成長を求められる事となります。

王座戦は、芝野虎丸棋士にとっては、最後の一冠となっていたので死守したい所でした。井山4冠と5番勝負の最終局までもつれ込みましたが、井山棋士が本因坊・碁聖・名人戦から継続した勝負強さを2021年最後までみせつけ、7大タイトル中5つを手中に収めました。

1-5.日本囲碁界2021年

2021年の内容を振り返ると井山棋士の追い込まれたからの土俵際の踏ん張りが秀でてた1年となりました。そして、年間を通じてのターニングポイントを考慮すると本因坊戦第5局に尽きると思います。

井山棋士ファン歴10年の私が素直に感じた事は、今年の井山5冠の強さは、5歳から精進してきた歴史的人物の棋道の積み重ねです。そして、過去の井山棋士との大きな違いは、一般人の奥様とご子息の支えが井山棋士に大きな力を与えたと思います。

独身時代の井山棋士は、とても強い棋士です。しかしながら、7冠を2度達成後には、過度なスケジュールと20代前半の強い挑戦達に少し疲れ気味で、3大タイトルにスコープをあて、無理して全冠制覇をしない感じを感じられました。

それが、父親になられてから、奥様とお子様に対して親父として良い所を現役でみせたいという親父としての強さとモチベーションを感じられました。

ターニングポイントとなった本因坊戦第5局の勝利の裏舞台には、奥様とお子様の存在という御家族の力をとても感じさせて頂きました。

2.世界戦でも活躍する井山棋士

囲碁は、歴史的に中国と韓国がとても棋士層が厚く、世界ランキングに多く名をはせています。そんな中、日本で上位に名を上げているのは、井山祐太棋士が9位、そして一力遼棋士が15位です。(2021年12月10日時点)

日本国内のタイトル戦で多忙な井山棋士ですが、囲碁の国際戦である農心杯に出場しました。この農心杯は、中国・韓国・日本の代表選手5名が1人ずつ対戦し、最後まで勝ち残った選手がいる国が優勝するというチーム戦です。

この大会は囲碁界の国を背負った大会です。中国の選手も韓国の選手もそれぞれの国の国内タイトル以上に威信が係った大会です。国内タイトル争いに多忙な井山棋士が、11月27日~11月30日の合計4日間対局して、中国そして韓国の選手に対して、4連勝を果たしました。

過去の国際戦の記録を振り返ってみても日本の選手は、3連勝が最大でありここ数年間にしてみれば1勝できれば良い成績という中国・韓国の選手に圧倒されていました。

スケジュールとしては、王座戦の真っ最中の井山棋士でしたが、この世界戦において世界の名立たる棋士に対して4連勝した事が王座戦奪取にもつながったように思います。

また、中国・韓国の棋士は大変強い棋士が多く日本の棋士に対して強いという認識は持たれていません。そんな中井山棋士は、中国そして韓国国内でもプロ棋士そしてアマチュア棋士からも敬意を置かれる偉大な棋士です。

3.最後に

最後まで長文をお読み頂き誠に有難うございました。囲碁の分からない方でも、1年間を通じてトップ棋士の大変さと勝負の厳しさをご理解頂けたら幸いです。

そして、私は囲碁を知らない方でも、歴史的人物である井山祐太棋士にお会いできるチャンスがありましたら、是非お会いして欲しいと思っています。

コロナ前には囲碁界のタイトル戦の就任式には、就任式の会費をお支払いすると先着順ですが参加する事ができます。そのような機会あるときや、何かしら大きな囲碁イベントがある時に偉大な棋士に人生で一度でも良いので一目お会いして欲しいのです。

5歳の頃から修行僧のように日々囲碁に鍛錬を積んできた偉大な棋士の内から溢れる豊かな人間性と努力する美しさを肌で感じると生涯必ずどのような形でも、糧になると思います。是非機会がございましたら囲碁を知らない方でも、そして是非子供達の教育のためにもお子様達とご一緒にリアル井山祐太棋士のイベント情報には耳を澄まし、会えるチャンスがあれば積極的にご参加下さい。


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