[第2話]ライブを支える。

ある夜、こんな依頼が。

それは音楽イベントのスタッフが足りないから来て欲しいというもの。
ステージの設営や受付、その他お手伝いをする人員が少しでも欲しいんだとか。

こう見えて、僕は元バンドマン。ライブの基本的な流れやら何やらは人より分かる、はず。これは役に立てるぞ!と息巻いて依頼を快諾した。

会場は岐阜県某所。送られてきたスケジュールを見ると開始が早かったので前日夜から前乗り。演奏とか聞けちゃうのかしら、なんてルンルン気分で家を出た。

ライブを支える。

ステージ作り編
当日朝、会場到着。
搬入口では既に機材をどんどんと入れていた。知らない環境に飛び込むのは毎回慣れないもの。ただ、ここでウジウジしていては何でも屋の名が廃る。思い切って普段の2倍の声で挨拶した。
「おはようございまーす、お願いしまーす!」
そう言い切るちょっと前に、
「はあい、よろしくねーじゃあこれ運んで!」
その間、ものの数秒。

こうしてイベントスタッフとしての1日がスタートした。

最初の仕事は音響、照明機材をステージまで運び、設置。ステージを作るお手伝い。
運ぶもの全部重い。これは絶対明日筋肉痛だ、、、
ヒイヒイ言いながら運んでは戻り、運んでは戻りを繰り返していく。僕より何周りも上の業者さんたちがせかせかと動いている。やっぱプロだなあと思っているとすぐに声がかかる。

「じゃあ、君。ここのゴッパーをスタンドにつけて。」
「ちょっと3階からハコウマを6個持ってきて。」
「あーここはサブロクバンにしたいから、二人でこれどかして。」

ゴ、ゴゴゴ、ゴッパー?ハコウマ???サブロクバン?????

とはならなかった。思っていた通り経験が役立っていた。ゴッパーはSHUREのSM58というマイク。箱馬はステージの板を載せる箱状の木。サブロクバンは3尺×6尺の板だ。尺貫法は学生時代に学んだ知識が蘇った。(ちなみに1尺は大体30.3cm、3尺×6尺で畳1枚分くらいの大きさになる)

写真がハコウマ。

分かる、分かるぞ…!
作業を初めてにしてはサクサクとこなすことができた。
「次なにしましょう!」
「じゃあ、あっちのザルとケーイーエス、持ってきて。」

調子に乗りました、それは分からん。
そんなこんなでステージ作りを黙々と進めた。

受付編
ステージは完成し、演者の方々がリハーサルの準備を始めている。リハでは客席に出る音の調整や本番の流れの確認をしていく。スモークが焚かれ、照明が点くと本番さながらの華やかさだ。ステージの準備が進むにつれて、全体的にヒリつく感じが肌から伝わる。

なんかいいな、こうゆうの。
この時点で今日このイベントに参加できたことを嬉しく思った。

本番前、お客さんの入場時間が近づいた。
僕は受付を担当することに。指定の格好に着替える。

ハイ!こんな真面目な格好も出来るんです、実は。
そして本番前に腹ごしらえ。お弁当の差し入れを頂いた。

そんなに睨まなくても、誰も盗らないよ、あつしくん。
お弁当美味しかったです。

受付では、お客様1人1人に検温と手指の消毒のご案内をしていく。現在コロナ禍でイベント業はかなりシビアになっている。
こんな対策、大袈裟じゃない?なんて2019年とかだったら言っていただろうな。
常識はガラリと変わる。
とにかくイベントを無事に成功させること。イベントに来た人、またその周りの人を誰一人不幸にさせない。このイベントに関わるそれぞれの強い思いをこの経験を通して体感できた。

そして本番。
流石に客席では聞けなかったが、コロナ対策で開放していた扉のおかげで受付をしていても演奏している音がよく聞こえた。

確かこの曲は
Earth, Wind & FireのSeptember

だっけ。

僕の大好きな曲だ。歌詞は正直洋楽で歌詞の内容は分からない。
でもこの曲を聴くと何故だか元気が出る。とにかく楽しい。サビとか底無しに明るい。
ああ、こんなにパワーを貰えるんだなあとイベント、ライブの素晴らしさを思い出せた1日だった。

本番終了後は準備と逆。もう一度あの戦いが始まる。家に帰るまでがイベントなのだ。もらったパワーを半分くらい使って無事終えることが出来た。その後無事帰宅。余ったお弁当いただいてしまいました。がめつくてすみません笑

依頼はこれにて完了。ご依頼いただきありがとうございました。

つづく。

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