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予算の見方について【歳入】

 はい、ということで唐突に始まったこのコラム。不定期掲載ですが元地方自治体の財政担当からみた地方自治体の予算の見方について、独断と偏見で掲載していこうと思います。真面目に予算について勉強したいんだーという方は少しお値段が張りますが学陽書房さんからでている「予算の見方・つくり方」を見てくださいね。財政担当の教科書のようなものです。

単式簿記と複式簿記

 それでは地方自治体の予算について、初めにお伝えしたいのはいわゆる「単式簿記」で予算を作ります。役所は単式簿記だから経営感覚がないんだという方も一定数いますが、これには当然利点があるからで、個人的には一番の理由はある程度見込まれる歳入(収入のことです)を1年間計画的に使うためにはとても便利です。町内会や一般の団体などの会計もこの方式ですね。
 ただ、この方法には欠点もあり、一番大きな部分は予算決算ではキャッシュフローがわからないことです。昔は決算の繰越金や基金(貯金)の残高などで説明していましたが、決算時期がずれていることを悪用し財政赤字を隠していた自治体があったため、現在は公会計という仕組みで財務4表の作成が義務付けられています。それも議員でも財務諸表を読めない方が多いので水道事業など複式簿記で経理する企業会計ではキャッシュフロー計算書なるものもつけていたりします。
 要は慣れなのですがぱっと見、普段の生活ではあまり見ることのない単語が並んでいるので難しく感じるみたいです。

森町の令和6年度予算書

自主財源と依存財源

 では歳入のお話から。お役所用語で収入のことを歳入と呼びます。歳入の分類は適当につけている訳ではなく、地方自治法と地方自治法施行令によって決められています。なので北海道でも東京でも予算規模は違っても予算の種類の順番はほとんど同じです。あまり議会では歳入の話はでませんが、歳入あっての歳出なので本当はとても大事です。ない袖は振れないですからね。
 そして歳入は性質的に自主財源と依存財源に分かれていて、自主財源とは自治体が自主的に徴収できる財源で地方税や使用料及び手数料、負担金及び分担金、財産収入、寄付金、繰入金、繰越金、諸収入などがあります。もう一つの依存財源とは国や都道府県などからの意思決定による収入で、各譲与税や地方交付税、補助金、地方債などがこれに分類されます。
 一般的な財政の解説書では、自主財源の割合がその自治体の自主性の尺度として、自主性が高くなると予算の自由度が高くなるということがいわれています。が、話はそんな単純なことではなかったりします。

地方交付税とは

 東京都の自治体等は、人や会社がたくさん集まっているため税収が高く、国からお金を支援してもらわなくても、歳出に必要な歳入を調達することができます。一般に普通交付税の不交付団体といわれるもので、このような自治体は国の方針にとらわれず、ある程度自主的に事業を実施することができます。
 地方税ですべてを賄えない自治体も必ずやらなければならない自治事務(障がい者など福祉サービスや公共施設の管理など)や国や都道府県から受託する法定受託事務(国の選挙や戸籍事務、パスポートの発行など)があり、これら不足分は国で定めた算式で計算され「基準財政需要額」として算出されます。これから地方税の調定見込み額(地方税の課税額の合計)の75%を引いた額「基準財政収入額」が普通交付税として自治体に交付されます。
 この仕組みは理論的にはわかるのですが、税収が上がるとその分普通交付税が減るので普通交付税の不交付団体にでもならない限り、自治体の裁量で使える予算は増えないことになります。まあ、税収の25%分は差し引く額からカットされているので全くない訳ではないんですけれどね。
 普通交付税で調整されるから税金の徴収がんばらなくても良いかというとそうではなく、算出基準は「調定額=納付書の発行した金額」なので徴収率が低いとどんどん使えるお金が減っていきます。なので税等の徴収率は予算の質疑でも重要な部分ではないかと思います。
 あと普通交付税は国の予算における全体の総額が決まっているため、実質自治体同士での取り合いにしかなっていないのが現状です。令和6年度は地方全体で18兆円程となっています。
 詳しくは総務省HPに地方財政計画の概要があるので、気になる方は見てくださいね。全国の財政担当以外でこのHP見ている人いるのかな?財政担当はこれが出ないと予算作れないほど大事な情報です。

 という訳で今回は自主財源と依存財源、普通交付税について独自見解で説明しました。あくまでも個人的な解説なのでそう考える担当もいるんだなー程度にしていただけると幸いです。


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