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ALS(筋萎縮側索硬化症)にり患している父が長男の結婚式にディレクタースーツで出席することが出来ました。

私どもでは、ご注文を頂いてから納品までの期間を通常2か月ほどいただいております。
http://www.oatsuraetanaka.com/nagare.html


2015年8月8日(土)朝 岐阜県のH様から、
「9月16日(大安)に息子が結婚するので、結婚式に出席するために何とか間に合わせてください。」とお電話をいただきました。

よくよくお聞きしますと、ALS(側索筋委縮硬化症)ALSと言う病に罹られて、全身の筋肉が硬直した状態なので、今持っているスーツ、礼服はすべて着られないとのことです。

筋肉は硬直しているが、息子への愛情は人一倍。何とか結婚式に出席して新しい門出を祝ってやりたい。

ただ、日程が迫っている。

早速、その日のうちに岐阜県のご自宅まで礼服用の生地及び生地見本を持参しました。

1手が上がらない

写真のように硬直が進んで、腕も肩まで上がらない、肘も思うように曲げられない。

http://www.oatsuraetanaka.com/als.html

正直、私は、この時までALS(筋萎縮性側索硬化症)のことの知識はありませんでした。

この日、最初にH様にお会いしたとき、呼吸器を装着し硬直したお身体を拝見し一瞬戸惑いました。

ALSは自分の思い通りに動かす筋肉の神経が侵される病で、難病指定されています。

しかし、知覚神経や自立神経は侵されないので眼球の動きによる「瞬きワープロ」を使って意思表示を行っています。

IMG_0497 - コピー

採寸です。

大柄なH様。まず、ベッドの寝た状態で全身を可能な限り、ヘルパーの方の手助けで、身体を少し起こしたり(車椅子に座った状態)して、細かく採寸しました。

今回は、筋萎縮で硬直した身体に、如何に着せ易く、かっこよく着られているかが要求されます。

介護服のニット製品のパジャマなどは、内側からファスナーですべて開閉できるようになっていますが、洋服地はニットのような伸縮性がありません。

ファスナーや綿テープなどを使ったり、普段常識では考えられられない様な細工、オプションを施さなければと考えました。

1背開き2

硬直が、筋委縮が少なければ、いままで行ってきた背縫い線をファスナーで開閉できるようにすればよいのですが、

左右分割2

左右別々に作って、後ろで合わせた服。

今回の場合、上着は左右別々に衿と一緒に作って、襟ごと後ろ縫い目で合わせる方法しかないと考えました。

身体を片側に横になった状態で、右袖(左袖)を通して右半身を着せます。

その後、反対側に寝返りをして、左袖(右袖)を通し、まっすぐの状態で少し起こして、背縫い線に取り付けている面ファスナー(マジックテープ)を合わせれば完成です。

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スラックスもヘルパーの方が穿かせやすいように、脇縫い目を大きくファスナーで開閉できるようにして、脇に上部を面ファスナー(マジックテープ)で固定できるようにしました。

1仮縫い

仮縫いも、私一人では合わせることができませんので、ヘルパーの方々の手助けを借りて、身体の向きを変えたり、起したりして、着せ易さン確認、バランをと合わせることが出来ました。

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結婚式の予行演習

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結婚式式には数人のヘルパーの方々が、ディレクタースーツの着脱をお手伝いされるようですので、限られた時間内での着脱をするためにも、結婚式にお手伝いされるヘルパーさんが全員揃う日に合わせて納品することにしました。
お盆休みも返上して、その間仮縫いも2回行いましたが、何とか結婚式の1週間前に納品することが出来ました。

ディレクタースーツ

車いすユーザーのうってつけの礼服。ディレクタースーツ

本来、花婿の父はモーニングを着用しますが、車いすを使用してるので、モーニングのコロモしっぽの部分が隠れてしまいます。

そのスタイルは、ディレクタースーツを着用してる姿と同じに見えます。ディレクタースーツは、モーニングに次ぐ礼服ですので、この場合うってつけの礼服に当たります。

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後日、奥様から歓びのお礼のメールをいただきました。

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