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障がい者の服創りに思う事

「障がい者との初めての出会い」

それは、私がまだ見習いの頃、

父(先代)がお得意様の息子さんから、スーツの注文を頂いてきました。
「就職が決まったので、新しくスーツを創りたい」とのことです。


その方は(大阪のT様)、私とほぼ同年代で、子供のころに、ポリオ(灰白骨髄炎)に罹られて、右上半身の発達が遅れ、上半身の左右差が大きく、右腕もほぼ動かない状態です。

身体を真上から見た体型が、卵を横にしたような左胸と右胸の厚みが異なったお身体でした。

注文から納品まで300 - コピー(RGB)(noise_scale)(Level1)(width 500)

「採寸」

まず通常通り全身の20か所を採寸。そのうえで、背筋を中心に左右別々に肩幅、胸幅、背幅、アームホール、袖丈袖周り、すべて個々に採寸しました。

しかし、その差寸をそのまま洋服に仕上げてしまったら、不格好でアンバランスなものが出来上がります。

そこで、登場するのがマニプレーション技法です。
縫い目線、切り替え線を利用して左右差を付け、パットや芯創りで出来るだけ左右のバランスの良い服を創るのです。

下記製図のように、右の胸幅、背幅は左のそれと1センチ以上の差を付け、袖周りも小さく短くしました。

ツシ様製図 (2)

「フルハンドメイドスーツ」
本来ハンドメイドと言っても、すべての縫い目を手縫い(グシ縫い)ですることではありません。

お客様ユーザーの、ひとり一人の身体に沿った動きやすい創るために、裁断(製図)でマニプレーションを施し、縫製では大きな縫い目線はミシンでしっかりと縫い、身体の丸いところなどは、グシ縫いでいせたり、コテ(アイロン)使いでクセ取りをしたりして、立体的なバランスの良いスーツを創っています。

人の身体は、必ず左右の差があります。また前後差、傾斜度など・・・
それが大きいか、少ないかの差です。

極論を言えば、左右対称の身体などあり得ないのです。

私に言わせれば、すべての人は健常者で、障がい者だと思っています。

その考えをコンセプトに、私どもでは服創りをしています。

ちなみに、このお客様の2着目から、私が担当することになり、定年過ぎてなお現在もお付き合いさせています。

歳を重ねるごとにに変わられる体型に(肥えられて、お腹が出て、背中が丸く猫背ぎみ・・・))に合わせた服を創っています。

松葉づえ3

私の兄弟子もポリオを罹患していました。
歩行が少し困難で、片足をいつも少し引きずって歩いています。
また、業界の先輩の中にも、松葉杖を使用している方も居られ、身体に障がいを持っている方がたは、いつも身近に存在していました。
また、くる病の方を始め障がい者のスーツも数多く創りました。

ちなみに、父も1986年10月に脳内出血を患い、左半身機能マヒの状態なりました。(左半身機能障害2級)
その後、リハビリを行ってきましたが、回復することなく2009年に亡くなるまで車いす生活を送っていました。

また、妻もその父を介助の作業中に、左股関節を亜脱臼し、それが悪化、左股関節全置換手術を15年間に2回の手術を受けました。(左下肢機能障害4級)

現在は、日々の行動には杖を離すことは出来ず、階段の昇り降りには苦慮している生活を送っております。


その様子、心情、介護の経験を生かして、車いすユーザーの服創りをしています。

車いすスーツ

「障がい者、車いすユーザーの服創り」
車いすユーザーの方は、日常生活ではほとんど座っているため、それを考慮したスーツをお創りいたします。

身体に障がいのある方は、どうしても動きがぎこちないので、着脱重視の方向でデザインをしています。

下半身が不自由な方。手にも障がいがある方。介護を要する方など、

機能的には、その障がいの程度に合わせての着脱。車椅子の操作など。

レッグバッグ2

その方にお会いしたとき最初ににお聞きすることは、「トイレ」排泄の事です。

導尿管を使用か?レッグバッグ(上記写真)の位置は?又はおしめなのか?または?です。

すべてそこから服創りを考えなければなりません。

夕川様

車いすユーザーは基本座位で生活されいています。
一般的なスーツは立居を基本に製図されています。
従って自ずと導線が違ってきます。

立ってきれいな線が、座ったら醜いしわとなって現れたり、立ってバランスの良い上着丈でも座るとやたら長かったり、衿が後ろに覗いたりします。

戸田様完成

座って、バランスの良い上着。胸のVゾーンの治まり具合。

車いす裾500

座っても引き攣らないヒップ周り。足台とズボン丈のバランス。
車いすの車輪との関係。腕の上げ下ろしの度合い。アームホールの大きさ。
ヘルパーと必要度などに合わせた服創りをしています。

1戸田様背開き

ご自分で着脱が困難な方には、背縫い線を大きくファスナーで開閉できるように・・・

背割りカッター

カッターシャツも背中を開けました。

スラックスも脇縫い目線を大きく開閉できるようにしました。

脇面ファスナ

大阪のT様の障がい者仕様のスーツを手掛けて以来、今日まで100着を超えるスーツ(洋服)を創ってきました。

私どもでは、そのスーツ(洋服)を着用されるシーンに合わせたスーツをおお勧めしています。

城倉様仮縫い

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

http://www.oatsuraetanaka.com/als.html

の患者の方、脊髄損傷の方、脳障害による神経麻痺の方・・・原因は種々、障害の程度も様々です。

http://www.oatsuraetanaka.com/carvoice/

画像13

そのためにも、上着の背中を開けたり、スラックスの脇を開閉出来るようにしたり、マグネットボタンを取り付けたり、いろいろなオプションや細工を施し、障がいのある方が着易く、ヘルパーの方も着せ易い、かっこいい服創りをしています。

しかし、まだまだ勉強です。

コロナ禍の6月、息子さんの結婚式に出席するための礼服のご注文を頂き、千葉県までお伺いしました。



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