サラリーマン プー太郎

 私は、初めて仕事で会う人から、ほぼ100%の確率で「あれ!今日は出張ですか?」と訊かれる。その理由は、いつも巨大なキャリーバッグを持ち歩いているからだ。

 20年近く前から、「いつでも、どこでもオフィス」を追求してきた。皆さん、「いったい何が入っているの?」と聞いてくる。私が、「家財道具一式です」と答えてツッコミを待っていると、「なるほど」と納得されてしまうのは、ちょっとつらい。

 必要な書類は基本的にPDF化をしており、紙媒体では持ち歩いていないが、顧客にプレゼンするために小型プロジェクターは常に持ち歩いている。コンサルタントはノートPCを酷使する仕事なので、いつ壊れても大丈夫なように常に2台以上、バッテリー類は4つ以上ある。

 「バッテリーが切れた」「データが飛んだ」となると、大きなロスが生じてしまうからだ。こうした重装備で、アポとアポの間の「スキマ時間」を使い、街角どこででも仕事をする。

 見栄えは・・・あまり良くない。私は新聞オタクで、情報収集のために毎日、10紙以上、時には週刊誌も数冊、持参している。このため、一見すると駅で新聞や雑誌を集めている人に見えるらしい。以前、電車の中で、見知らぬサラリーマンから、読み終わった新聞を「はい、これどうぞ」と手渡された。

 親切そうなその人のニコニコ顔を見ていると、断るのは悪いと思い、ついつい「あっ、ありがとうございます」と受け取ってしまい、周囲のサラリーマンたちから、「じゃあ、これもどうぞ」「読み終わった雑誌ですけど、どうぞ」と小さな親切攻撃が続く。私は周囲に笑顔を振りまきつつも、かなり複雑な心境だった。

 以前、年越し派遣村の近くを通りかかった際には、「こちらに並んでください」と案内されたこともある。以来、「サラリーマンぷー太郎」を自任している。

 街角でビッグイシューを売っている方々を見かけると、一方的な親近感に駆り立てられ、必ず買うことにしている私である。

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