☆佐藤敦子☆中央区議会一般質問の答弁

中央区議会議員の佐藤敦子です。

2023年2月21日に行なった一般質問における「問い」に対する「答弁」を掲載いたします。赤字で示した部分が答弁に当たります。
「問い」と「答弁」を比較して読み進めると、問いたかった論点と区が答えたかった論点がどのように整合している(いない)かなど、さまざまな解釈があり得ます(解釈のあり方は読者の皆様に委ねます)。
私自身の解釈を付したものは、次回の「note」にて公開いたします。
ご関心のある方は、ぜひこの「note」をフォローしてください。


佐藤敦子☆一般質問

中央区が要請される「多様性」と「効率性」

--手作り感覚と真心感覚の中央区

1999年の平成の大合併以降、推進された地方分権とは、改めて考えると、なんとも不思議な概念であったと感じます。我々区民は、あらかじめ制度的に仕切られた基礎自治体という「空間」の単位で、自律的・任意的にコミュニティを作ったり、共助・公助をしたりして、暮らしています。

行政や議会もまた、あらかじめ制度的に仕切られた空間で組織化し、法的枠組みに則し行動します。つまり地方分権とは、これまでの国家中央集権型システムを地方分権型システムヘと転換させる、マクロな目的で捉えられてきた一方で、意識的・無意識的にかかわらず、ミクロな視点からは、その分権化された空間内部での政治参加を、規定したり促進したりするという権力作用や業務の効率化をもたらすものであったと、総括できます。

基礎自治体は、地方分権に伴う効率化が、問われ続けています。それぞれのあり方で効率化を推進してきた自治体に、今度はD X(デジタルトランスフォーメーション)を用いて効率化せよ、と言うのは、捉え方によっては、さらに困難な課題を突きつけられているかに感じるものです。

言うまでもなく、基礎自治体は、区民にとり最も身近な「空間」であり、業務は必然的に多岐にわたります。D X(デジタルトランスフォーメーション)は多様な業務に対処するための、更なる効率化を目指すためものであり、また更なる「官から民へ」の移行を要請するものであります。

効率化が評価の指標となるような「自治体像」は、自治体間で取り組みの先進性を比較しあったり、いち早く好事例を取り入れたりといった、自治体間競争の潮流を、明確に示しました。このような潮流で、本区は、まさに職員おひとりおひとりの技量とパッションでもって、適切な裁量権を行使し、望ましい政策を実現していっている。真心感覚と手作り感覚を持ち合わせた基礎自治体であると、私は評価をしています。

多様化と効率化が求められる中央区が抱える諸課題とは

--特定のアクターを視点とした政策を、より一般化すること

多様化と効率化は、S D Gsの重要概念でもありますし、またポストS D Gsとされる「Well-Being」 ––すなわち幸福、豊かさ、より良い福祉–– を構築するための指標でもあります。多様化と効率化が評価されるのは、世界的な潮流といえます。こうした問題背景に則し、分権型社会における多様化と効率化がもたらす諸問題を、この質問機会を通じ、再点検するとともに、区長の政治哲学をお伺いして参りたいと思います。

まずは区民に対する合意形成をどれだけ重要なものとして捉えているかについてです。公共問題の解決には、その目的に即した手段が多数あり得るし、一つの手段は多数の目的に寄与するものです。

あらゆる目的と手段の組み合わせから、より多くの区民の利益となり得る組み合わせを厳選し、合意形成をし、予算を執行することが、望ましい姿であると、私は考えます。

より多くの区民の利益、という視座にたてば、少子化対策はとかく、実質的に出産や育児を担う女性の支援に焦点を当てがちですが、それを「家族のための政策」として一般化することにより、男性も含めた家族の経済的・社会的状況に対処することが可能になりますし、より多くのアクターの関心を高めることが可能です。その反面、女性を対象とした政策であるという論点は、相対化され希薄になっていきます。

「女性センター」を「男女平等センター」という名称に変更するなどの一例も、そうすることにより、多くのアクターを対象とした施策であることが一般化される反面、女性、という文言が消去されたことで、女性という論点が男女を対象とした問題へと相対化されます。

これら女性と男性を一例として示した一般化−相対化の関係性は、若者−高齢者、富裕層−貧困層、居住者−在勤者、新しく移住してきた区民−長く暮らしている区民などにも援用可能です。つまり、より多くのアクターを対象とした公共問題解決を志向することにより、上記に挙げたような多様な利害関係の分断を回避できます。

「合意形成」に対する区長の政治哲学を問う

––民意を的確に捉えるための合意形成の重要性をどう認識し実践しているか?

特定のアクターを視野に入れた政策は、より一般化される必要があると思います。以上のような問題意識に則し、区長にお聞きしたいのは、第一に、合意形成に対する政治哲学です。とりわけ、人口動態の変化や、新しい住民の流入など、一般的な基礎自治体とは異なる本区の特性を踏まえると、民意を的確に捉えること自体の重要性は言うまでもありませんが、特定の区民によらず、あくまでも最大多数の最大幸福を志向し、着地点を模索することが、分断を回避する唯一の方策であると、私は考えます。区長は、民意を的確に把握することの重要性を、なぜ、どのように捉えておられますでしょうか。またどのように実践していますでしょうか。お聞かせください。

「発信や説明責任」に対する区長の政治哲学を問う

––日頃からどのような発信や説明のあり方を重要とし実践しているか?

力点をおいている合意形成過程のあり方についてお聞きします。言い換えれば、最も民主主義的な合意形成は、より望ましい形での発信や説明責任に裏付けられているものであり、これがいわゆる透明化の重要性が主張される由来であると、私は考えます。

区長は、属性や立場が異なる区民間の合意形成を得るには、どのような発信や説明のあり方が望ましいとお考えですか。これまでのご自身の発信や説明を振り返りながら、今後の理想とするあり方との比較検討を踏まえ、お聞かせください。

「自己変革能力」の自己評価を問う

––日頃からどのような発信や説明のあり方を重要とし実践しているか?

変革する社会的環境への自己変革能力をどう認識・評価しているかをお伺いします。これは、不確実性を増す社会的環境の変化の中で、どれだけ自己が変革できるかという、自己変革能力への問いかけであると、言い換えられます。

例えば、瞬く間に世界中に広がりパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症が、日本で初めて確認された2020年1月15日以降、政府は国民への金銭的な保障やワクチン接種を、次々と検討し、決定をしました。

政府の方針をリアルに実働する基礎自治体は、とても翻弄され、本区においては、基本計画2018では、予期されていなかったパンデミックが実際に起こってしまったわけであり、予期せぬ出来事でありました。

より具体的には、日々移り変わる国や都からの要請にだけでなく、異なる立場の区民からも、それぞれの必要性に則したニーズが寄せられ、多様な業務に忙殺されたことは、我々も十分に認識をしています。そういった困難を乗り越えられたのは、職員の皆様の士気の高さと、丁寧かつ慎重な姿勢であることに、気付かされました。

今後、このような予期せぬ困難に対処する際も、職員の、いわば献身的なご努力がその成否を決定づけることは間違いありません。それが本区の特性であることを誇りとして認識しつつも、属人的な資質を重視しながらも、冒頭に述べた更なる「効率化」の要請に適合していくことは重要な論点です。

区長は、そうした要請に対する(デジタルトランスフォーメーション)化やイノベーション化への自己の変革能力を、どのように評価・認識していますか。またどのような政治理念に照らし、その重要性を捉えていますか。お聞かせください。

区民の政治参加意欲への高まりを区政に生かす方策を問う

––区民間の分断や政策の先鋭化へと帰結しないために

効率化・多様化という社会的要請や予期せぬ災害は、人々の政治参加「意欲」を高めたと言えます。

これまで安心・安全であるとされてきた社会インフラや制度が、揺らぐ現状を目の当たりにすれば、人間ならば誰しも、そうした状況が、なぜ、どのように揺らいでいるのか、どうしたら復元するのかを、知りたくなります。

その上、生活が不安やストレスにさらされれば、身近な政治代表に働きかけ、自分たちの生活をより安定したものとするため、議会活動への影響力を行使したいとの意欲が、誘発されるでしょう。

多くの場合、個人が置かれた立場や境遇が、政治参加意欲に影響を与えます。例えば、外出自粛による「おうち時間」を、休校への対処や家族のケアのために歓迎するお母さんがいる一方で、ドメスティックバイオレンスや虐待という境遇にいる人ならば、到底、歓迎することはできません。政治参加意欲の高まりは、同一の施策への捉え方を先鋭化させる作用があるものです。

政治参加の多様化という観点からすると、例えば、Twitterや各種SNSへの投稿をつうじて行われる場合もあれば、N P O、地域連携組織などのいわゆる「新しい公共」をつうじて行われる場合もあります。無論、それらは現状、政策立案の主戦場ではないし、今後もそうなる可能性は限りなく低いのですが、区民参加という一面において、行政への影響を増すことが明確でありますから、やはり可能な限り、動向を注視する必要があるでしょう。

そこでお伺いします。

近年の、こうした多様な区民の政治参加のあり方は、これからますます影響力を増し、先鋭化していくものと考えられます。区民の政治参加意欲への高まりが、翻って区民間の分断や政策の先鋭化へと帰結しないためには、幅広い情報の取り方を工夫し、分析し、状況に応じた適切な発信と説明をすることが重要ですが、その視点に立った、本区の対応と今後の展開をお聞かせください。

「企画部門」の政策立案機能を向上させる必要性を問う

––他自治体の好事例を参照しているかを問う

ここまで、多様性という社会的要請に則し、組織全体が民主主義的な合意形成や自己変革を求められていることを、概説してきました。

組織に目を向けると、こうした社会的環境の変化の潮流においてこそ、「企画部門」の政策立案機能が重要となっています。

なぜなら政策立案機能は、歴史的に基礎自治体の分権化が進められたことに相関し、発展したからです。

その証左に、基礎自治体の「企画部」に相当する部署や機能は、国家機能たる日本政府にはありません。あえて言えば、内閣官房・内閣府が その一翼を担うものの、 長期的な統計に基づき計画を策定する機能を保有しているわけではありません。むしろ時流に即した国家課題をベースとし、各省庁から人員を募り、一時的な組織体を形作るといった方が適切でしょう。

ご質問したいのは、企画部の政策立案機能の強化についてです。

というのも「企画部」の政策立案機能は、区の公共課題を適切に把握し、課題に対する内発的な変化をもたらす、いわば組織外部と組織内部の境界を連結させる機能であると言えるからです。

例えば、香川県三豊市では、コミュニティ不足が積年の行政課題となっていたことから、人とまちが繋がる空間として「乗合・ちょいのりタクシー」を官民連携で実現させました。コミュニティ不足を解消すると同時に、短い距離の移動に困っていた市民の一助となりうる、画期的でユーモアに溢れたこの政策を実現へと至らしめたのは、三豊市の政策立案部門とタクシー会社12社、そして慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの卒業生が関わりました。

その他にも、教職現場などの働き方改革、探求型学習が課題であった岐阜県庁が、マイクロソフトと慶應義塾大学との連携により、オンラインを積極的に取り入れ、職場改善や教育資源の充実を実現させた事例もあります。これも立案当初は、企画部門の発案でした。これら2事例には、私も2年半に渡り関わっていますが、学生や民間との連携は新しい知見や活力を取り入れることにも繋がります。

本区においても、地域特性に即した課題を解消し、より良い区民生活の一助となるような立案機能を向上させていただきたいと考えていますが、本区におけるその重要性の認識と実践をお聞かせください。

「こども家庭庁」の創設に伴う諸理念の整理

--子育てにおける家庭の役割の認識を問う

日本が「子どもの権利条約」を批准してから28年もの年月が経過した昨年の春、国会に「こども家庭庁設置法案」と「こども基本法案」が提出され、「こども家庭庁」がこの4月から稼働します。

私自身は、初期のプロセスから、設立準備室担当政務官との情報共有を通じ、いくつかの問題意識を持ってきました。最も重要なものが、子育てにおける「家庭」が果たす役割です。

というのも、「こども家庭庁」は当初、その名称が「こども庁」とされる予定でした。それはつまり、子どもを個人として捉え、その尊厳に焦点を当てたためです。その後、様々な検討が加えられ、「家庭」という文言が入り、最終的に「こども家庭庁」となったのは、こどもを育てる責任主体が「家庭」であることが、強調されたためです。

こうした我が国における「家庭」の位置付けは、伝統的文化的な起源によるものです。私自身も、家庭が責任主体となり子育てを担うという伝統文化を尊重して参りましたが、一方で近年は、家庭が責任主体であるという認識すら共有ができない家庭があるために引き起こされる、深刻な虐待や育児放棄が増加しています。

また、家庭の教育方針や新興宗教における「信教の自由」という名のもとに、こどもの権利が尊重されない、という難しい事例が指摘されています。こうした問題が難しいとされるのは、家庭がどこまで、家庭ならではの規範や倫理を、子どもに決定づけていいのか、さらには、その表裏において、子どもはどこまで家庭の影響に従わなければならないか、という権利の問題が衝突するからです。

そういった困難な問題をロジカルに整理するためには、まず家庭という外部からは見えにくい環境の中で、真に子どもの権利が守られているかどうかを認知する必要があり、行政の介入がどの視点からならば可能であるのか、という一線を明確にしなければならないわけです。

今般の「こども家庭庁」の設立は、そうしたこれまでに明文化され難かった家庭と子どもの問題を、子どもの権利という視点から明確化しようとする、極めて先進的な試みです。

そうした問題背景において基礎自治体は、まさにフロントラインに立ち、重要な役割を担うことになります。

そこで大きく2つお聞きします。

第一に、本区における子どもと家庭の基本的な捉え方を、上記問題意識に即してお示しください。

第二に、家庭が担う子育ての主体的役割との比較において、子どもの権利という概念をどう咀嚼しているか、お聞かせください。

「こども家庭庁」の創設に伴う各論を問う

--実質的に児童相談所の役割を担う「子育て支援センター」の機能と組織体制について

基礎自治体の役割という観点から、各論をお聞きします。

これまで述べてきたように、乳幼児を含む、就学前のすべての子どもの育ちを保障することが明文化され、子どもと家庭の関係から、虐待・孤立・貧困・心身の不調を的確に把握することが、基礎自治体に求められます。

こうした観点からは、未就園児の動向を悉皆調査、いわゆるポピュレーションアプローチで認識することが推奨されるでしょうし、もし注意を要する案件があれば、的確に関係各所の支援に繋げなければなりません。

ある自治体では、ポピュレーションアプローチを施したところ、極めて具体的な子どもと家庭の実態が明らかになったといいます。

例えば、望まぬ妊娠をしていた女児、妊娠中に深刻な抑鬱状態を発症し、飢餓状態にあった妊婦さんなど、孤立にも三者三様の存在の仕方があったわけです。

すべての人を取り残さない、との趣旨から悉皆調査が望ましいとされていますが、これは人材面でも予算面でもそれなりの負担となることが考えられます。

そこでお伺いします。第一に、未就園児の動向の、より的確な把握への対応の仕方をお答えください。

第二に、調査・分析の必要性を想定した場合の「子ども家庭支援センター」の組織体制ついて、お聞かせください。

さらに、相談窓口の体制づくりについてもお伺いして参ります。

基本計画2023にも明記されているよう、本区では、「子ども家庭支援センター」を主体とし、相談体制の強化に取り組まれていますが、こどもの「権利擁護」という新たな視点をどのように咀嚼し、相談体制に活かしていくのか、問題意識に則しお答えください。

教育現場でマスクフリーが成立する成立要件を問う

--判断基準は何か? いつ、どのように判断するか?

「効率性」と「多様性」という社会的要請に比較する形での区政運営を、ここまでに2分野8項目の視座から質問をしました。

コロナ禍の「効率性」という文脈は、実は教育現場においても「新たな視点」を提供します。コロナ禍は子どもたちにあらゆる形での制約を課してきました。多くの制約は、子ども達が集まって遊んだり、話し合ったり、ご飯を食べたりといった、子どもならではの楽しみに強い影響を及ぼしました。無論、効率的に感染を防ぎ、可能な限りの学校生活を持続させるために、仕方がないことではありました。

一方で、こうした影響の適用時期を、どこまでと捉え、線引きをしていくのかは、判断であり、私はむしろ、マスクの着用などは、いつどのような基準で緩和するのかこそが、難しいことと存じます。

そこで簡潔に、2点お聞きします。

第一に、本区は、給食時の黙食を継続させている、23特別区の7区のうちの1区です。このような判断に至った合理的な理由と、逆にどのような要件がそろえば、黙食を緩和できるのか、成立要件に触れながら、お考えをお聞かせください。

また、そろそろ卒業式・入学式のシーズンとなることから、式典におけるマスク着用を判断なさった背景も、同様にお聞かせいただくとともに、どの要件がそろえば、式典をマスクフリーで挙行できるのか、その成立要件に触れながら、お考えをお聞かせください。

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