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【カーボンニュートラル推進企業紹介⑲】東立化工株式会社 ~石油由来の原料を削減、目指すは一歩先のプラスチック~

カーボンニュートラル―。脱炭素への取り組みは国際レベルのものから個人での活動まで様々です。
 厚木市内で脱炭素の取り組みを進めている企業に、どのように「脱炭素への挑戦」をしているかをインタビューしました。取り組む理由や具体的な進め方、これから取り組む企業へのメッセージなど、1社ずつご紹介。取り組みを始める一歩に、また活動を促進させるヒントにしてはいかがでしょうか?

 19社目は、愛甲東で樹脂成型を専門としているメーカー、東立化工株式会社です。樹脂製品には様々なジャンルがありますが、同社が手掛けている分野は「射出成型」という製造方法です。

 

射出成型の機材 タンクのような部分にペレットという樹脂の粒が入っている

樹脂を熱して管型に送り込み、冷えて完成するもので、取材時は文房具でおなじみのバインダーの「パチン」と綴じる器具部分などを製造していました。出来立てはまだ熱々です。


熱した樹脂を入れて成型するための金型


 他にも 香水のケースで使われるような透明度の高い製品、カバー類(外装部品)やギア部品(内蔵部品)など様々なものを作り出し、協力会社と連携した金型起工も得意分野です。

 同社が創業43年目にして挑戦しているのが、従来のポリプロピレン樹脂にデンプンや紙、おがくずなどを配合した新しい製品づくり。配合することでプラスチック量そのものを減らすことができるのです。

 まず製品のサンプルとして見せてもらったのが、トウモロコシのデンプンを配合したポリプロピレンの文房具でした。もうトウモロコシ由来とは思えない手触りと見た目で、こうした自然素材から成分を抽出したエコ材料をバイオマス材と呼ぶそうです。バイオマス材とポリプロピレンを使い透明度のある容器などを作る企業もあるようです。

 紙を51%配合した樹脂による文具も、見た目、手で触れた感触も通常のプラスチックと大差ありません。中には竹100%と添加剤を使った製品もあり、土に溶ける製品もあります。いずれの原材料も専門企業が製造したものです。

 

木とプラスチックが融合。コースターの試作品

さらにポリプロピレンに、県内産のおがくずを60%も混ぜた素材で作ったコースターも見せてもらいました。こちらはバイオマス材ではなく「リユース材」と呼ばれます。60%配合という事は、60%もの石油製品を削減しているわけです。触ると硬さがあり、レーザー加工で絵をつけることも可能とのこと。壁にも貼れるように八角形にデザインされています。サンプルのコースターは木になじむので、山小屋やカフェなど自然を感じさせる店舗のアイテムにぴったりですね。


卵の殻を使った製品も

 同社では常に「プラスチックの新しい形」を視野に入れてきました。ひと昔前まで金属で作られたギヤなどの製品を、軽量で強い樹脂に替えてゆく時代がありました。同社ではこれからエコ材料が使われる可能性を意識しているのです。職員の方は「ギヤなどは耐熱性や強度が重要。そこまで性能を備えたエコ材料が出てきてくれたら」と期待しています。

 環境問題もある。石油は無尽蔵ではない。若い世代ほど環境への意識が高い。消費の意識も変わりつつある――「製造する側がそうした流れを意識しなければ」という方針で目指し始めたキーワードが「プラ製品をワンステップ先へ」でした。

このスマホスタンドは 木材とポリプロピレンを組み合わせた材料を使用

 小売店などで買い物した時に「エコ材料を使っている」と謳った製品を見かけた事がある人も多いでしょう。同社によれば、重要なのはこうした素材の配合率です。わずかなエコ材料では意味がありません。どれだけ多くエコ材料を使い、または配合できるかが、まさに努力の指標であり、技術力なのです。今後はこうした配合率などの数値も重要視されるのではないでしょうか。

 射出成型のメリットは、その量産性の高さにあります。原理としては、ペレット状の材料をシリンダで温め、金型に送るというもの。ただしエコ材は従来の石油製品とは違った個性があり、課題でもあります。例えば配合する「おがくず」は元々は木であり、ある一定の割合を入れると、ヤニや、こびりつきが生じ、これがなかなか取れない苦労も経験しました。同社では改善を重ねて課題を乗り越えており、量産化への実績を積み重ねています。私たちの身の回りの樹脂製品が、いつの間にか石油由来から離れている・・そんな時代が近く到来するかもしれません。


同社ではこのほか、照明のLED化を順次進めており、CO2削減に努めているとのこと。多角的な挑戦が続いています。

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