【カーボンニュートラル推進企業紹介⑳】田中紙業株式会社~石油由来のものからオールダンボール化へ~

 カーボンニュートラル―。脱炭素への取り組みは国際レベルのものから個人での活動まで様々です。
 厚木市内で脱炭素の取り組みを進めている企業に、どのように「脱炭素への挑戦」をしているかをインタビューしました。取り組む理由や具体的な進め方、これから取り組む企業へのメッセージなど、1社ずつご紹介。取り組みを始める一歩に、また活動を促進させるヒントにしてみてはいかがでしょうか?
 
 20社目は、ダンボール箱を中心とした、包装や梱包資材全般を扱っている、ダンボール・印刷紙器メーカーの田中紙業株式会社です。厚木市上依知に厚木工場を構えています。

 

工場内の様子

石油由来のものから脱却


 ダンボールは、CO2の排出量が少なく環境にとても優しい梱包資材であることをご存知でしょうか。通販サイトからの商品購入の需要が増えている近年、外装に使われていることで目にする機会も多いと思います。
 ダンボールは主原料として古紙が使われています。紙が素材なのでリサイクルに適していて、環境にやさしい資材として注目されています。
 地球温暖化、CO2排出削減、環境問題について世界的に取り組みが行われている今、プラスチックやビニール、発泡スチロールなど従来の石油由来の包装資材から木材系の素材に注目が注がれています。
 木材系の素材は石油由来と比較し、リサイクルの工程やダンボールの製造、使用ではCO2の排出が少ないとされています。
 万が一、リサイクルされずに放置されたとしても、原料は紙なのでいずれ土に還ることも大きな特徴です。
 紙の耐久性に不安を抱く人もいると思いますが、そんなことはありません。2020年に日本で開催された東京五輪では、選手村に耐久性の優れたダンボールベッドが使われました。耐久性の良さと組み立てやすさ、折りたたむことが出来るため保管のしやすさなどから災害時での避難所でも使われることが増えているそうです。

 

緩衝材を含めたオールダンボール化を実現


計算された形の緩衝材。製品を衝撃から守る


 同社では、箱の中に使う緩衝材を従来の発泡スチロールからダンボールに変える、オールダンボール化を実現しています。
 例えば、車の排気ガス浄化装置。箱の中にある緩衝材を製品の形に合わせることで、複数の製品同士が干渉するこなく一つの箱におさまり、安全に納めることができます。多品種、小ロットにも対応できる生産体制を確立しているからこそクライアントの要望に答えることが出来るのです。製品の安全性と環境への配慮の両立を実現したオールダンボール化は、日本パッケージコンテストで認められ、工業包装部門賞を受賞しています。
 

ステッチ(ホチキス)ではなくノリで


ステッチを使わず、のりで接着

 大型の製品を梱包するときは、ダンボールを2枚使います。通常であれば繋ぎ合わせに金属製のステッチを使いますが、環境に優しい成分でできたのりに切り替えているそうです。
 2023年1月、事務所や工場の全ての照明器具をLED化したそうです。「従来のクオリティーを維持しつつ、環境に優しいものに変えていく取り組みは続けていきます」と田中伸尚専務は話します。
地元の学生とコラボして製品開発
 東京工芸大学の学生との新製品開発プロジェクトが行われました。このプロジェクトは、学生ならではの斬新なアイデアを生かした新たな製品開発を目指す取り組みです。
 同社では、ダンボール製のキャットハウス「ネコちぐら」やキャットタワーを販売しています。「ネコちぐら」はダンボールを何層も重ねて形状を工夫することで、ネコが上に乗っても問題ないくらい頑丈なものに仕上がっています。若い人の感覚を取り入れ、デザイン性と機能性をこれまで以上に備えた製品開発を行うというものです。
 素材がダンボールというのは学生にとっては初めてだそうで、環境問題にも敏感な学生たちは興味津々に取り組んでいました。
 


 「ダンボールという素材を多くの方々に広く紹介させて頂きながら需要を掘り起こし、社業を通じて社会に貢献していきたいと考えています」と田中専務は話します。
 
 

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