【カーボンニュートラル推進企業紹介㉑】御菓子司 幸月堂~老舗和菓子屋でもできる取り組みがある~



1960年創業の老舗和菓子店

カーボンニュートラル--。脱炭素への取り組みは国際レベルのものから個人での活動まで様々です。
 厚木市内で脱炭素の取り組みを進めている企業に、どのように「脱炭素への挑戦」をしているかをインタビューしました。取り組む理由や具体的な進め方、これから取り組む企業へのメッセージなど、1社ずつご紹介。取り組みを始める一歩に、また活動を促進させるヒントにしてはいかがでしょうか?
 
 21社目は、愛甲石田駅南口目の前の菓子補 幸月堂。1960年創業でずっと変わらぬ場所で銘菓を提供し続けている。自身もすでに30年以上お店に経ち続けている店主の浅井幸一さんにカーボンニュートラルの取り組みについて聞いてみました。

食べ物を扱う店にとって食品ロスは最大テーマ


製造量をコントロールしロスに注意


 食べ物を扱うお店について回るのがやはり「食品ロス」の問題です。「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品です。食べ物を捨てるということはもったいないことであり、環境にも悪い影響を与えてしまいます。日本の食品ロスは?

 2021年度推計値によると、国内の「食品ロス」の量は年間523万t。
日本人の1人当たりに換算すると食品ロス量は1年で約42kgとなります。
これは日本人1人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのに近い量とのこと。さらに「食品ロス」は事業活動を伴って発生する「事業系食品ロス」と、各家庭から発生する「家庭系食品ロス」の大きく2つに分けられます。523万tのうち「事業系食品ロス」は279万t、「家庭系食品ロス」は244万tです。

 食品ロスを減らすためには、家庭で食品ロスが出ないようにするだけでなく、食べ物を買ったり食べたりする店が食品ロスを減らすことを意識することが大事になると専門家は指摘しています。
 
 幸月堂ももちろん食品ロスに取組んでいます。例えば、賞味期限が短い和菓子については蓄積したデータやその日の環境などから、製造個数をコントロール。売れの残しを出さないような工夫をしています。「予想以上に売れてしまい 、夕方『えー、もうないの?』とがっかりされることも多いですが、冷静に判断したり予約してもらうなどお願いして対応しています」と浅井さん。また残ってしまった場合に提供するルートも確保。無駄のない消費を心掛けているそうです。

脱プラスチックも実践


脱プラスチックを実践

 「2050年カーボンニュートラル」達成のために重要なCO2排出量の削減には、プラスチック製品を使わない「脱プラスチック」への取り組みが重要視されています。 
 幸月堂はいちはやくレジで渡すビニール袋を有料化。通常は直接お渡しするか、紙に包んで手渡している(商品などによる)。プラスチック製品は使用しておらず、贈答用の御菓子が入る箱ももちろん紙製のみです。
 
 飲食業で需要が高い「プラスチック製品」は、その製造過程で多くのCO2を排出摺るそう。プラスチック製品のほとんどは、石油から作られており、石油を精製する過程で得られる「ナフサ(粗製ガソリン)」が主な原料となっています。そしてナフサからプラスチック製品の元となる基礎化学品を作り出します。プラスチック製品などの化学製品を製造する際に排出されるCO2排出量のうち、この基礎化学品の製造が全体の約50%の割合を占めています。「2050年カーボンニュートラル」達成にはCO2排出量の削減が重要で、プラスチック製品を使わない「脱プラスチック」への取り組みが必要となります。


安心・安全な食材の選択

安心・安全な食材を吟味

 安心・安全な食材を選択することもカーボンニュートラルに近づきます。
 
 農業の自然循環機能に着目し、化学的に合成された肥料や農薬を使うのではなく、環境への負荷をできる限り少なくした、有機農業で生産された農作物や、これらを原料にした有機加工食品などへのニーズは増加しています。有機食品などを購入することは、環境に配慮した農業を行っている農業者を応援し、人や社会、環境に配慮した消費行動にも繋がります。また、旬の食材をできるだけ新鮮なうちに提供することは、消費者にとってありがたいのはもちろん、食材の保存に使用されるエネルギーの削減にも役立ちます。安全・安心な食材の使用に取り組むことは重要なのです。
 
 幸月堂では、餡をはじめ様々な素材を取れ入れています。浅井さんは、「和菓子作りに使う素材については専門家である問屋と話してアンテナを張り、美味しくて安全、安心なものを常に取り入れるべく努力しています」と話しています。

店舗内のちょっとした工夫が大きい


餡練り機も電気効率のいいものに


 同店では、そのほかに省エネ効果の高いエアコンを使用しているほか、LED照明の導入で電力使用量を抑えています。また餡練り機も新しい機材にしガス使用量を削減。店舗内の設備を常に見直すことでも、カーボンニュートラルの実現につながています。「以前は商品によって割り箸が欲しいと言われ、用意していたのですが、今は木は伐採による環境破壊、プラスチックはカーボンニュートラルを考慮し、提供自体一切止めました」と笑顔。「一歩一歩だね」と話しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?