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【カーボンニュートラル推進企業紹介㉒】株式会社厚木ミクロ~精密な世界で着実にCO2削減、全社一丸で約87トン分~

 カーボンニュートラルーー。脱炭素への取り組みは国際レベルのものから個人での活動まで様々です。
 厚木市内で脱炭素の取り組みを進めている企業に、どのように「脱炭素への挑戦」をしているかをインタビューしました。取り組む理由や具体的な進め方、これから取り組む企業へのメッセージなど、1社ずつご紹介。取り組みを始める一歩に、また活動を促進させるヒントにしてはいかがでしょうか?
 今回は「株式会社厚木ミクロ」という、会社名を見ただけでも、微小な世界の専門技術をイメージさせる企業の取り組みをご紹介します。

 

厚木市長谷にある㈱厚木ミクロ

同社の製品はこれまで携帯電話の液晶画面から、電子ペーパー、ガス設備などの液晶表示など様々な形で、暮らしに欠かせない品々に生かされてきました。

 同社が取り組んできたカーボンニュートラルへの取り組み、つまりCO2削減は、実に地道なこまめな省エネです。しかしながらその徹底ぶり、チームとしての取り組み体制、挑戦した後の検証など、本腰を入れる姿勢は、さすが技術者集団です。


同社の看板

 CO2削減の大きなカギになったのが、エアコンでした。特に「クリーンルーム」は内部に微細なごみも入れてはならないため、気圧を外よりも高い状態にする必要があります。必然的に外から空気を取り込むエアコンの電力消費は高まり、これと同時に製造現場の排気を出すためエアコンを稼働させる必要がありました。よりエアコンに負荷がかかる状況だったのです。


吸気と排気の仕組み

 過去の電力を分析したところ、クリーンルームだけの電力使用で、工場の4割を占めることが判明。原油価格高騰やロシアのウクライナ侵攻などで電気料金が上がったこともあり、節電は喫緊の課題となりました。立ち上がったのが、「やってみよう」がポリシーの上田康彦社長でした。


上田社長と語り合うスタッフ


おもに同社の工務課から選ばれた「ユーティティプロフェッショナルチーム」の面々が削減の先鋒となり、その取り組みは全社一丸の動きに発展しました。


環境への思い、かわいいマスコットに「ヤマネのミクロちゃん」


ヤマネのミクロちゃんと蛍のアツギちゃん



同社では自然豊かな厚木に棲みついている「ヤマネ」をモデルに、2023年6月、オリジナルキャラクターが誕生しました。頭上には「蛍のアツギちゃん」の姿も。蛍の優しい光が環境と品質を大切にする同社を象徴しています。 

 同社では製品製造に水が必要です。このCO2削減は、「限りある資源を分かち与えられている事に深く感謝し、一滴の水も無駄にしない」という環境に対する基本理念にも沿っているのです。

 夜間のクリーンルーム電力に着目

 改善点として注目したことは、夜には製造装置を止めていること。
まずは24時間運転していた20台から30台ある送風ファンのうち、夜間の外気の送風ファンの運用を減らした。ファンの数は4分の1ほどまで削減した。もちろん給気・排気のバランスも計算してのことです。

 一方で、一台ずつファンのスイッチを切るのも一苦労。そこでチームが作ったのが、13台の送風ファンをスイッチひとつで一括管理できる装置。現在はタイマー式でオンオフが切り替えられる新しい装置に挑戦中とのこと。

 空調の節電以外でも、様々な電力削減に取り組み、すでに設置されているLED照明あっても、窓など一定の明るさがあり、作業に問題なければ減らしてゆく。LED化だけがゴールでなく、徹底して工場内で取り外し、計70本ほどを削減。絞り出すような取り組みにこだわった。工務課課長の田中肇さんは「家でもスイッチをこまめに切るようになりましたね。とはいっても子供がつけるので競争になってしまいますが」。

約半年でCO2削減量86・9トン

 約半年をかけて削減した電力量を記録、その結果、これまでの電力消費の15%が削減されたことが分かり、CO2削減量では86・9トンもの量に相当することが分かったのです。一般家庭1世帯が排出するCO2に換算すると、実に48年分。「会社の仲間が同じフロアで働いているので、横のつながりが広がりやすかった」と総務広報担当の中村梨沙さん。
 
 また秋や春といった中間期は冷房や暖房ではなく「送風」時間が増やせたため、夏冬よりも効果が大きいことが分かりました。こうした成果は、工場内で折れ線グラフで掲示、仲間同士で共有し、モチベーションにつなげました。

 現在取り組んでいるのは、排気ダクトの風量を調節するため装置の一元化管理。空調の設定を自動化することも始めています。これらすべてが、外部の機材を購入するのではなく、自力で生み出したもの。これまでになかったものを生み出す社風を象徴するように、社是として「創意自から道を拓く」と掲げられています。


スイッチひとつで多数のファンをオンオフできる

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