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GOLDEN HOUR : Part.1 世界観

【INTRO]


After the red moon rises
(赤い月が昇った後)

Zが消えたZ次元では、ATEEZを知らない者はいなかった。 黒い海賊団とサンダーは、感情のコントロールから解放されることを決めた者と、感情のコントロールの下にいることを決めた者が共存できるよう、自生的な秩序を構築していくことにした。

彼らの世界はその世界を愛する人たちに任せ、僕たちは僕たちの世界に戻ってきた。

A次元に戻った後も、僕たちはまだ興奮していた。 一緒に冒険し、戦った思い出は、まるで肌に刻み込まれたかのように、僕たちの心に鮮明に残っていた。

その鮮明な記憶を最大限に生かし、僕たちはもう一度一緒に夢を見ることにした。

01.【ホンジュン】

各自がへそくりをはたいて集め一番安い練習室を借りて踊り、歌を歌った。ここでは、彼らを、つまりATEEZを知っている人は誰もいなかったが、鏡に映る自分たちの姿を見て自分たちが英雄に他ならなかった時代を思い出した。いや、「酔っていた」という表現が正しい。
そして楽しくお酒を飲んだ高揚感が朝が来ると必ず薄れるように、彼らはひどい二日酔いで現実に直面することになった。
夢を見るにはお金が必要で生活のために働かなければならなくなり、練習室に集まって過ごす日々は少なくなっていった。
集まったとしても、メンバー全員が集まることは稀だった。しかしホンジュンは仕事が忙しいことを責めることはできなかった。彼にできることは、残念な気持ちをなだめ「残念だったね。今やるべきことはやって、また次の機会に挑戦しよう!」とほろ苦い言葉で挨拶を交わすことだけだった。夢だけでは生きていけないことは誰もが知っている。その厳しい現実を知ることが大人になるということなのだ。
ホンジュンが望んだのはメンバーたちとのつながりを維持することだけだった。定期的に集まって食事でもしようとしたが、それさえも容易ではなく、いつの間にか1年に1,2回集まればよく見たような気がするようにまでなった。

空いた時間、ホンジュンはアルバイトをしたり、自主練習をしたり、日記を書いたりしていた。 日記を書いているうちに、彼はふと、Z次元での記憶が薄れ始めていることに気づいた。 それで、自分や他のメンバーたちが体験したことを個人ブログに記録することにした。 「小説ですか? 次の話が気になりますね!」ホンジュンの旅日記から始まったこのブログは、壮大なSF物語のような詳細なストーリーへと発展していった。
物語が進むにつれ、彼のブログの読者は飛躍的に増え、出版社から声がかかるまでにそう時間はかからなかった。 ホンジュンの物語は本として出版され、ベストセラーとなり、やがて読者との交流会、特別講演会、さまざまなテレビ番組への出演などで、ホンジュンの毎日は埋め尽くされた。 

若い読者が熱狂する作家としてテレビやSNSで顔が知られるようになり、有名になれば失った家族を取り戻せると漠然と信じてアイドルを夢見ていたホンジュンの話も一緒に知られるようになった。 たまたまその放送を見た父と、小説の本を読んで作家について調べ、ホンジュンのSNSの映像を見た母から連絡があり、ホンジュンがあれほど望んだ家族と再会することが実現した。 豊かな暮らしぶりと再会した家族、人前でもっともらしく自慢できる職業、放送に出てかなり有名になった名声。
ホンジュンが成し遂げようとしたことは確かに成し遂げた。 嬉しくて幸せだった。
笑顔で部屋に入り、ドアを閉めた後、思わず深いため息が零れ落ちた。ため息が大きすぎて自分でも驚くほどだった。なんだろう?この虚しさは?まるで華やかな舞台を終えたばかりのような気分だった。月明りに照らされた部屋の中でホンジュンは“僕が本当に望んでいたのはこういうことだったのかな?“

02.【ソンファ】

「娘がその本に夢中なので私も読んでみたけど、40年の教育課程だとかガーディアンだとか言うのはちょっとばかばかしいと思わない?」消防署班長はソンファの机の上にあるホンジュンの小説に目をやりながら言った。
彼はあきらかにソンファの同意を求めたがソンファはどう答えていいのか分からなかった。

“ばかばかしいと思われるかもしれませんが、僕と友人たちは実際にそこにいたのです。僕たちは実際に見て体験したのですよ“ソンファがどう言い返すべきか考えていたその時、出動のベルが鳴った。

長い間ソンファはZ次元で救えなかった人々の記憶に悩まされていた。
少年と少年の兄、喜んでATEEZと志を共にしたが、ガーディアンの攻撃で命を落としてしまった黒い海賊団とサンダーのメンバー、広場に警告として吊るされていた感情誘発者たちの遺体が、彼の目に残像として焼き付いたままだった。道を歩いていても同じような顔やシルエットを見るだけで心が痛かった。そして、そのたびにソンファは彼女のことを思い出していた(Be Freeのブレスレットを残して姿を消した彼女)サンダーのリーダーである彼女はどうしたのだろうか?

彼女ならおそらく自分自身を救える方法を探して動くように言っただろう。それがすなわち人を救うことができる方法だと言って。 そう、それならこの不安から自分を救うことから始めよう。そこでソンファは、さまざまな危機の中で人々を救う方法を勉強し身につけ始めた。勉強しているうちに、消防士試験を目指す人たちのために作られた教材に出会った。 メンバーとの練習時間が少なくなるにつれ、ソンファがテストを受けるのは当然の成り行きだった。不幸なのか幸いなのか分からないが、合格した。 勉強は簡単だった。もともと気質的に体系的で計画を立てるのが得意だったし、定期的に運動とダンスをやっていたおかげで、実技試験も難なく突破した。

こうしてソンファは消防士になった。 不安を鎮めるために始めた趣味が仕事になった。 確かに、夢ではなかったが、だからといって辞める理由にはならなかった。 メンバーと共有していた漠然とした夢に比べ、この仕事のインパクトは明確で現実的だった。 炎と戦い、危機に追いやられた人々を救うことは、予想以上にやりがいのある仕事だった。 舞台のような歓声や拍手はなかったが、その代わりに、自分が救った人たちやその家族から素朴だが真心が込められた感謝と拍手を受けることができた。そして、その歓迎された顔と印象的な体格のおかげで、ソンファは消防災害本部の年間カレンダーのモデルに選ばれた。 カメラに向かってポーズをとりながら、心地よい緊張感と妙な虚しさを感じていた。あれほど望んでいた時はカメラの前に一度立つことが難しかったのに、消防士としてなら叶えられるというのだから皮肉なものだ。

その日、消防署の事務室に戻ってきたソンファは、机の上に置かれたホンジュンの小説を読んだ。

03.【ユノ】

ギターを弾きながら歌うユノの歌に、キャンプファイヤーを囲んでいた人々はじっと目を閉じて堪能した。ユノの歌を聴くと、少し前に読んだ小説の中の世界を思い出すと、ある学生が言った。
焚き火を中心に集まって座る教授と学生の後ろを砂風が通り過ぎた。 今、ユノはエジプトに来ている。

ユノはメンバーが集まる時に欠かさず集いに参加しようと努力したが、この集まりが継続的に維持するのは難しいと早くから感じていた。Z次元では、僕たちはまさに英雄だった。逆境や苦難はそこにもあったが、今と違って非常に具体的なもので、戦うべき敵も明確だった。なら、ここのA次元はどうだろう?
大変ではあるが、何が大変なのか明確に具体化しにくい不明な逆境と苦難、戦わなければならない敵は自分以外のすべてのものであったり、そうでなかったりする。熱心に練習してオーディションを受けてバスキングをしてみたが、むしろZ次元よりここがもっと冷たいと感じる日がますます多くなった。人々の笑い声や泣き声は、彼らの手に握られている携帯電話から聞こえるだけで、その画面を見ている人々は無気力な表情で素早く次の映像、またその次の映像に移り、新しく速い刺激だけを求めていた。スピーカーから大音量で僕たちの音楽が流れると、激しく踊ってみたものの、ふと横目で見てまた携帯電話に戻る視線にメンバーは戸惑う。 むしろ感情がないように見向きもしなければ闘志でも燃えていたかもしれないが、一瞬留まって振り返る視線と、短く映像に収めた後、最後まで聞くことなく移動する足取りを見定めることができなかった。 いや、実はみんな痛かった。 元々、非常事態後(高く登れば登るほど)の墜落は痛いのだから。

みんなが初めて経験する傷の形なので、傷かもわからず、一緒に分かち合うこともできなかった。 次第に練習室に集まって踊ったり歌ったりすることが面白くないと感じる瞬間があった。 メンバー全員がそうだったかは分からないが、少なくともユノはそうだった。

夢について話す回数が減り、練習室に集まる日の間隔が長くなり、 ユノも自然と他の関心事に心を奪われるようになった。Z次元にだけあると思っていたクロマーをA次元のマヤ文明展示会場で発見し、その神秘的な遺物と遺跡に心を奪われた。 研究で明らかになった事実の他にも、新しい秘密を抱いている遺物がきっともっとあるはずだと確信している。

ピラミッドの中に入りながら、ユノはこんな想像をする。 もしそんな遺物を発見すれば、また別の次元に旅立つことができるかもしれない。その日が来たらメンバーたちとまた別の冒険をしたいという想像

04.【ヨサン】

若くて金持ち、背が高くてハンサム、まさにヨサンだと従業員はいう。株式で大金持ちになったヨサンは、父親の影響を受けずに自分のビジネスを始めることができた。 認めたくはないが、お金の流れを読むのは父親に似ているようだった。 果敢に投資したスタートアップがユニコーン企業に成長するなどの快挙を成し遂げるなど、彼の投資力で一人で運営していた小さな事業体は次第に規模を拡大し、3年後には立派な会社になった。

「クラシック音楽を専攻されながら、大衆音楽にも興味を持たれたと聞きましたが、どのようにして全く違う道を歩むようになったのでしょうか?何か特別なきっかけがあったのでしょうか? 」ビジネス・グローブの記者がヨサンに尋ねた。 「盲目は魅力的で崇高なものですが、罠に陥る可能性があることに気づいたからです。」ヨサンは曖昧な言葉で答え、しばらく考え込んだ。

ここへ戻ってきた後、ヨサンはメンバーたちが微妙に何かが確実に変わったと感じた。 盲目的に片思いに執着していた時期を過ぎ、思い通りにならない恋には執着を捨てて手放すべきだと悟った人のような感じとでも言うのだろうか。 黒いフェドラの男に出会う前、Z次元に初めて行く前は少年だった僕たちが、トンネルをくぐり抜けた後に大人になってしまったのだ。 メンバーの変化に気づいてから、ヨサンは自分自身も変わったことに気づいた。

夢への挑戦と努力が崇高に感じられたのは、夢が自分に与えられた運命であるかのように盲目的に受け入れ、それだけが正しいと感じていたからだ。 だから夢以外の人生は恐ろしいもの、敗北したもの、恥ずべきものでしかなく、だからZ次元に出発する前に僕たちは深い敗北感に浸っていたのだ。盲目性の罠にはまったからだ。

しかし、Z次元で僕たちは感情と芸術、夢と希望が大切だという事実と同時に画一的でなく生きるということ、盲目的な信念が酷い地獄を作ったりもするということを経験した。だから、みんなこれまでと同じように夢への挑戦を続けようと言い、それぞれ新しく多様な可能性の種を胸に抱いただろう。ヨサンはそう感じていたし、意識的であろうとなかろうと、メンバーたちもそう感じていると信じていた。

芸術と相反するように見えるが、決して切り離せないのがお金だ。 歴史的にも芸術は王や貴族の嗜好品として成長し、それに反発して他の形式の芸術も誕生してきた。 一緒に夢を見る上で最も大きな妨げとなった「お金」について掘り下げてみることにし、ヨサンは一気に投資界の大物になった。 多くは利益を出したが、損失が出ても芸術界に定期的に投資しており、その中にはホンジュンの小説本を出版したところもあった。

05.【サン】


「子供のころからずっと引っ越しを繰り返し、どこかに根を下ろして暮らす人生を夢見ていたけど、今になってみると、僕の身の回りに厄除けがあるのかもしれないね。」済州島の潮風に吹かれながら、サンは独り言を言った。 ガタガタとフードトラックに積まれた什器がサンの言葉に相づちを打つように音を立てた。
黒く日焼けしたサンの肌から、彼がどれほど長い時間さまよったかが感じられた。

一人二人とそれぞれの道を探していくメンバーたちを見ながら、サンは引き止めることも、だからといって立ち上がることもできなかった。ここ以外に特に行くところがないのだ。生業が忙しくなり、半分以上練習室に出られなかったある日、あっけない練習を終えたサンは虚しい気持ちで足が向くままに路地を歩いた。僕は路地裏のわかりにくい古い小さな店の前の小さな平台に座り、ビールを1缶開けた。 "悲しいと言えば悲しいし、嬉しいと言えば嬉しいし、そうでもないこの感情は何だろう。笑えるというのは、こういうことかな?"習慣のように独り言を呟いていると、「夜でもないのに、若い奴が何やってんだ!」という声が横から聞こえてきた。向かいの路地で軽食屋台を営んでいたおじいちゃんだった。 すぐにサンは聞いた。「おじいちゃんは粉もん屋を営むのが夢だったんですか?」おじいちゃんは少し怒った顔で、「食べていくのが仕事であって、夢なんて夢物語だ」と反論し、その言葉にサンはまた尋ねた。 「夢が叶わなくても生きられますか?」おじいちゃんはサンと目を合わせて答えた。
「夢もいいけど、それより大事なこともたくさんある。 愛を分かち合うこと、人と一緒に食事をすること、自分のゴミは自分がよく捨てること。それを食べ終わったらちゃんと捨てて行け」その時になってようやくおじいちゃんが初めてサンに話しかけながら投げた黒い袋が目に入った。袋の中には湯気がゆらゆら立ち上がるスンデとキムパ(海苔巻き)一本があった。 若い奴がつまみもなしにビールだけ飲んでいる姿が内心気にかかったのだった。

サンはスンデを一口食べながら、また独り言を言った。 "愛を分かち合うこと、人と一緒に食事をすること、自分のゴミは自分がよく捨てること。" 夢よりも大切なことがあることを知り、サンはフードトラックを始めることにした。あちこちを歩き回り、人々が食事をしている姿、愛する人とおいしいものを一緒に食べる姿を見た。 そして、時にはサンも彼らと一緒に食事をし、会話を交わした。
夢を見る人、夢を探す人、夢を叶えた人、夢を変えた人、夢の外の人生を生きる人、夢を見ない人...。
様々な人に出会い、その中で発見した。 ほとんどの人は夢を叶えられずに生きているという事実を。 しかし、(なぜ誰も夢の外の人生を生きる方法を教えてくれなかったのだろう? )とサンは考えた。 そして察した。 恐らく僕たちは、切望したわけではないが、目の前に現れた現実を愉快に迎え入れることを学ぶ必要があると。

06.【ミンギ】

小川から龍が出ない時代というが、そんな時代に龍になってしまった。 (鳶が鷹を生む)
練習室に向かう途中、ブランドデザイナーからキャスティングのオファーを受け、雑誌の表紙を撮り、あっけなくモデルデビューを果たした。 家計が苦しかったミンギは、ちょっとしたアルバイト程度にしか思っていなかったが、その画報がファッション界で大きな話題となり、一気に複数の有名ブランドが一緒にやりたいと思ってもらえるモデルになってしまった。 ダンスを習うようにウォーキングもすぐに習得し、ブランドのファッションショーのランウェイに立ち、世界4大マガジンの表紙を飾り、ミンギをミューズに選んだグローバルブランドのアンバサダーとしても活動するようになった。 今では、街中でミンギをモデルにした広告写真や映像を目にすることが多くなった。

ハンバーガーを手にしたミンギ、化粧品を塗るミンギ、新しく流行する服を着たミンギの写真でいっぱいの通りを通り過ぎるバンの中、今日のミンギはSNSでとても忙しい。スケジュール移動をする前に、カロスキルを背景に撮った写真を個人SNSにアップデートしている。 ファッション界の人たちがミンギを調べ始めた頃、SNSではミンギのデイリールックが人気だった。安価なブランドの衣装を高級品のように着こなすことで、男性がデートの参考にしていたミンギの日常写真が、女性には彼氏ショットとして有名になり、インフルエンサーとなった。 更新と同時に数千、数万の「いいね!」通知が鳴り響き、「かっこいいよ」「ミンギのMBTIが何だと思う? I.C.O.N.」のような崇拝コメントが素早く寄せられた。ちょうど先月撮影した広告料が入ってきたという通知も出た。 一目で見てもとてつもない金額。 あれほどうんざりしていた貧困は、今や前世のように感じられるほど豊かになった。 これ以上おばあさんの病院費に追われなくてもいいという現実が何よりも満足だった。 アイドルではないが、アイコンになっただけでも十分だった。

ミンギはこれまで自分がどれほど心の余裕がなかったのか、それでどれほど狭い視野で世の中を眺めていたのか気づいた。 “そう、今がいいんだ" 窓の外を眺めながら呟いた。 通りかかった通りでバスキングをする少年たちが目に入った。 下手だが情熱的に踊りながら歌う少年たちは、動線を変える瞬間、お互いの目を見ながら笑っていた。 ミンギは彼らの姿に魅了されぼんやりと眺めた。 赤信号が走行信号に変わり、車が再び出発すると、少年たちは遠ざかった。 その時、ミンギは直感した。 二度と渡れない川を渡ってしまったということを。

情熱と野心で夢に向かって無我夢中で疾走していた時代、誰も認めてくれなくても楽しさ一つで大丈夫だった時代が向こう岸にある。 ミンギが今立っているのは、情熱と野心よりも成果と成果が必要な場所、資本で価値を買うことができる場所だ。 “大人になるってこういうことなんだろうか“と思いつつも、漠然とした懐かしさは消えなかった。 思わずSNSに目を向けると、ホンジュン兄さんが家族と再会した映像がアルゴリズムに表示された。

07.【ウヨン】

なぜ数ある職業の中から客室乗務員を選んだのかと聞かれたら、地元の友達が酒の席で「舞台ってなんだ?
先生が立っている教壇も舞台だし、スーパーでマイクを持ってびっくりセールを教えてくれるおじさんが立っている場所も舞台だし、緊急時の安全ベストの着用方法を教えてくれる飛行機の廊下も舞台だよ。 舞台の上に立ったら、全部学べるし、アイドルじゃないの?」という言葉にひかれて、乗務員スクールをポチッと登録した。 おかしいんじゃないかとまた聞かれたら、「そう!? 」その時、ウヨンは正気ではなかった。 どの舞台でもいいから、今すぐ、すぐ、舞台の上に立ちたかった。

一種の旅行後遺症と言っても過言ではない。 Zやガーディアンと戦うためにクロマーを使ってあちこちに飛び出し、パフォーマンスをしていた時代は、ドーパミンとアドレナリンが溢れ出る時間だった。
もちろんそのパフォーマンスは闘争であり、崇高で神聖な革命であったが、その出発点が何であれ、パフォーマンスはパフォーマンスなのだ。 極度の緊張感の裏にある快感は、「僕は舞台恐怖症だったのか?」と思うほど中枢神経系を刺激した。

A次元に戻ると、その刺激は消え、不安感が高まった。 まるでゲームの世界に没頭し、エンディングを見た後、現実に押し出されたような感覚だった。 メンバーと何かやろうと思ったけど、Z次元で活動していたATEEZのようにはなれず、僕たちにはなかなか舞台が与えられなかった。 このままでは永遠に舞台に立つことはないだろうと思ったとき、酔っ払った友達が慰めてあげるといって、そんな言葉を投げかけてくれたのだ。

対立を嫌い、平和を好む性格らしく、客室乗務員としての仕事も順調にこなしている。 すっきりとした端正な顔立ちとユニフォームがよく似合い、優雅なムードが漂うウヨンが機内の廊下で乗客を出迎えた。
航空機が動き始めると、機内のすべての乗務員は自分の位置に立って案内放送に合わせてシートベルトの着用方法や酸素呼吸器の位置、救命胴衣の着用方法を乗客に伝えなければならないが、それを注意深く見る乗客はあまりいなかった。 ウヨンが勤務する航空会社がイベントとして新しい方式の案内を企画し、アイドルを用意したという理由で、ウヨンがイベント放送を担当することになった。 ありきたりな案内放送の代わりに、機内スピーカーから楽しげなメロディーが流れた。 眠りについたり、映画を選んでいた乗客たちは興味深そうに廊下に立っているウヨンと乗務員たちを眺めた。ウヨンは行き先と飛行時間の情報を含む案内を歌とラップ、軽快な振り付けを交えて楽しく伝え、案内放送が終わると拍手が沸き起こった。 そうだ!これだ!ウヨンは満面の笑みで挨拶をしながら思った。 その時、ウヨンの目に特に大きく歓呼して拍手する人たちが映り込んだ。

たまたま同じ飛行機に乗ったユノとミンギだった。

08.【ジョンホ】

アルバイトでガイドレコーディングをしながら独学で作詞・作曲を勉強し、自作曲を作り始めた。 最初はメンバーたちが一緒に歌う曲を書いて一緒に録音して練習してきたが、皆が忙しくなり録音できる機会はもちろん、曲を披露する機会も少なくなってきたので、便宜上、ソロ曲中心に書くようになった。メンバーたちと一緒にアイドルになるのは難しいかもしれないという気がすると、シンガーソングライターに方向を変えた。 負傷でバスケットボールという夢をあきらめ、新たに手にした夢だったので、ジョンホは簡単に諦めることができなかった。

作業してきた曲をミュージッククラウドにアップしていたところ、大手企画会社からジョンホの曲が気に入ったと連絡があった。 ついに歌手としてデビューできるチャンスが来たのかとワクワクする気持ちも束の間、初期にアップしたグループ曲(メンバーと一緒にレコーディングした)の感じがいいと言って、デビューするアイドルの収録曲1曲を書いてくれないかというオファーを受けた。 苦々しかったが、断る理由はなかった。とにかく音楽ができたし、これまでの努力が認められたのだから。 収録曲の作曲から始まったジョンホは、アイドルのボーカルの先生、プロデューサーの役割まで任されるようになった。
アイドルにもシンガーソングライターにもなれなかったが、それだけで満足だった。 その周りにいる人くらいにはなれたから。 本質的には音楽を続けているのだから。 たとえステージの上で照明を浴びる人ではなく、彼らをより輝かせるために進んで暗闇になることを選んだ人だけれど。

デビュー2年目を迎えたアイドルの歌のレコーディングの日、彼らの間で喧嘩が起こった。 「大変すぎるからもう休みたい」というメンバーの発言から始まり、なだめるように説得する過程を経て、喧嘩に発展したのだ。 「おい、こんな簡単に諦めるような夢なら、最初から始めなければいいのに!」と他のメンバーが怒鳴りつけ、大変だと言っていたメンバーは、かっとなって胸ぐらを掴みながら返した。 「お前が何を知ってるんだ! 一日中くっついているからといって、俺のことを全部知っていると勘違いするな!」揉み合いになる前に、ジョンホは二人を引き離し、お互いに落ち着く時間を与えた。 (大変で)つらかったというメンバーは、ジョンホの前で涙ぐみながら言った。
家庭の事情をすべて明かすことはできないが、家族が今、とても大変な時期を過ごしており、自分が一緒にいられないことがとてもつらいという。 ジョンホはその苦しい気持ちに共感し、その友人を慰めた。

昔、辞めるというミンギ兄さんに腹を立てて殴りつけたことを思い出した。 自分が本当に若かったし、利己的だったんだなとふと思った。 “みんな元気かな?“ジョンホは自分のメンバーを思い出した。
がらんとした録音室に座っていたジョンホは、メンバーの声が入った自作曲を流した。 音量を上げた。
メンバーの声がちくちくと胸にささった。

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