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#1 情報の持ち方が意思決定のスピードと質を変える~分析の時間を半分にする技術~

こんにちは。中小企業診断士の松島ゆーきです。今回は、採算管理の具体的な方法を書くうえで欠かせない考え方をご紹介します。最後に、データベースのサンプルを添付してありますので、参考にしてください。

売上データ、経費の内訳、顧客リスト、製造時間…現代のビジネスにおいて、情報はあらゆるところに存在します。それなのに、

「情報の整理に時間がかかり、うまくいかせず、続けることができない」

と感じたことはありませんか?

私自身、中小企業の支援をする中で、同じ悩みを抱える経営者の方々に何度も出会ってきました。実はその原因は、情報を持っていることと情報を活かしていることは全く別物だという点にあります。


1. 情報が活きる瞬間とは?

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ミスの連発で頭を抱える経営者

私がこれを実感したのは、ある地方の製造業者を支援したときのことです。その企業では売上データや製造コスト、顧客からの注文履歴など膨大なデータをExcelで管理していました。しかし、それらの情報が一貫性を欠いており、分析のたびに手間とミスが発生していました。

例えば、

・売上を月別にまとめるたびに同じデータを何度もコピー&ペーストする作業。
・社員によってフォーマットが異なり、内容を確認するだけで数日を要すること。
・経費をカテゴリ別に集計するたびに漏れや重複が発覚するケース。
・そもそもなんのためにデータを集めているのか分かっていない。

こうした状況が続く中で、経営者から次のような声をいただきました。

「データの整理に時間を取られすぎて、本来の経営判断に集中できない」

情報は持つだけでは効果を発揮しません。その価値を引き出すためには、整理された状態ですぐに使えることが必要なのです。


2. なぜ「データベース」が必要なのか?

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ここでデータベースという考え方が役立ちます。

データベースとは、データを一元化して整理し、効率的にアクセス・分析できる仕組みのことです。

中小企業においては、この考え方を取り入れるだけで、データの運用が飛躍的に向上するケースが多いのです。

具体的には次のようなメリットがあります:

・一貫性の確保
データが一箇所にまとまり、誰が見ても同じ情報を確認できるため、コミュニケーションが円滑になります。一貫性がないデータを使うと、意思決定に誤りが生じ、信頼を失うリスクがあります。たとえば、ある製造業では製品の採算を見える化した際に、売上伝票が2枚存在していたことが判明しました(1枚は書き損じ)。その結果、売上高が二重に計上され、本来赤字の製品が利益を出していると誤認されていたのです。こうした誤りが解消されなければ、経営判断を誤るリスクがあります。

・検索の効率化
条件を指定して必要な情報を瞬時に抽出でき、意思決定のスピードが向上します。
無駄なデータを省き、正確な分析が可能になるため、信頼性の高いレポートを作成できます。

・集計の自動化
データが整っているとて修正などの必要がなく、自動的に集計可能となります。データをコピペで、ボタンをピッで意思決定に必要なデータが一瞬で出来上がるんです。便利でしょ?

これらのメリットを活用したことで、前述の製造業者では月次レポート作成の時間を70%削減し、経営会議に専念できるようになりました。


3. データベース導入の実践ステップ

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では、具体的にどのようにデータベース的な考え方を取り入れれば良いのでしょうか?大規模なシステムを導入するのはハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。しかし、小規模な企業であってもExcelやGoogleスプレッドシートを活用すれば、簡単に始めることができます。

以下は実践的なステップです:
・目的の明確化
どんな情報を見て、何を判断したいか?を明確にしておきます。そこから逆算で、必要なデータを揃えていきます。

・既存システムの活用
今あるシステムを有効的に活用できていないことが結構あります。どんな情報を入れることができるのか、既存の業務フローの中でやることができるのか、データとして出力することが可能かなど確認しておきましょう。

・データの分類
売上データ、顧客情報、経費などを用途ごとに分け、適切なフォーマットで整理します。

・ユニークIDの付与
各データに一意(ダブりがない)のIDを設定し、紐付けを簡単にします。例えば、顧客データと注文履歴を顧客IDで結びつけると、分析が容易になります。

・自動化の活用
ピボットテーブルや関数を活用して、自動でデータが集計・分析される仕組みを構築します。


4. 「この一歩が成功のカギです」

データベースの導入は一朝一夕にはできません。しかし、最初の一歩は驚くほどシンプルです。ExcelやGoogleスプレッドシートを使った「手軽なデータベース」から始めれば、次第に運用の幅を広げることが可能です。まずはどんな情報を集めれば、自分の欲しい結果が得られるのかを試行錯誤しながら進めていくことが大切です。

例えば、次のような事例があります:

ある製造業のクライアントは、手書きの売上帳をデジタル化し、Excelで簡単なデータベースを構築しました。これにより、ボタン1つで、日次の売上推移をグラフ化し、月次で取引先ごとの売上高の把握、推移などを視覚的に把握できるようになりました。これにより、従業員への売上高や数値意識の醸成、効率的な人員配置が可能となり、経費削減に成功しました。


5. 情報を「活かす」未来へ

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このように、データベースにしておくことで、情報整理の時間が大幅に削減され、欲しい情報がすぐに手に入るようになります。そして、採算管理に応用し、経営判断に活用していきます。

最後に、データベース導入にあたって、以下の問いを自問してみてください

・既存システムをうまく活用できているだろうか?
・情報は経営判断に役立つ形で整理されているだろうか?
・今すぐ始められる改善ポイントはどこにあるだろうか?

この問いに答える形で行動を始めることが、あなたの意思決定の質を上げる第一歩となるでしょう。

情報の持ち方が意思決定のスピードと質を上げる

この考え方を実践に移すことで、より明確な方向性を持った経営が実現します。今日から、顧客リストにユニークIDを付与し、情報を分類する第一歩を始めてみてください。情報を活かす取り組みを始めましょう!


販売データのサンプルを添付しておきます。
1,000行のデータがありますが、データが整っていると、取引先ごとの売上金額や平均単価等、一瞬で集計が可能です。集計結果は、シート「ピボットテーブル」でご確認ください。
※生成AIにてデータを作成しており、顧客名や金額などは架空の情報です。

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