『花咲舞が黙ってない』

上司に対しても間違っているとはっきり言う性格だが、地位も権力もないただの銀行員が、出世コースから外れて全てを諦めたベテラン行員と共に不祥事を起こした支店に行き、苦しんでいる人たちのために立ち向かう。女半沢直樹といったキャッチが踊る。

ここ数年の日テレ水曜10時は、女性をメインターゲットに据えた、第二の月九枠を担った放送枠です。女性と仕事や、母親の役割など、そのモチーフは多岐にわたり。大別すると以下のようになります(勿論便宜的なもので、クッキリ分かれているわけではない)
①ホタルノヒカリ リバウンド 東京全力少女 シェアハウスの恋人
②ハケンの品格 働きマン OLにっぽん 曲げられない女
③ホカベン 黄金の豚 トッカン ダンダリン
④ギネ クレオパトラな女たち ブルドクター 雲の階段
⑤14才の母 アイシテル Mother Woman 明日ママがいない
ご覧のように女性が主人公であることに留まらず、そのモチーフやテーマ、問題設定までもが、女性であることが分かります。

『花咲舞が黙ってない』は②もしくは③の要素が強いのですが、仕事から一歩ズレると①の要素が浮上して。特に『ホタルノヒカリ』のような、緩く可愛らしい側面が描かれるのです。仕事のできる女性は強く、どこか超然とした風格があるのが常でしたが、今作はそれらを混ぜたようなキャラクターです。厳密に言うと上川隆也の方が、ゆるふわなのですが。杏は、私生活の見えない超人のようには描かれていません。上川隆也との関係もどこか、綾瀬はるかと藤木直人を思わせます。

半沢もですが、この枠で描かれた強い女性は、言わばヒーロー(ヒロインではない)です。そのヒーローが生まれる背景には、暗く悲しい過去が描かれてきました。しかしそれは、ゲストとして登場した木村佳乃が担います。つまり一話目で、ヒーローの世代交代が行われたのです。世代交代によって一番変わるのが、「ヒーローからヒロインへ」といったモチーフになるのではないか、と自分は考えたわけです。言わば『キック・アス』のような等身大ヒーロー。つまりこの話は、働いている女性は、みんな名前の無いヒーローであって、もう誰かに助けられるのを待つのではなくて、立ち上がろう。市民蜂起だ。皆がヒーローになることで、始めてヒーローはヒロインになれる。といった話になる...のかもしれない。しかしそう考えると、木村佳乃の「私一人が抵抗した所で何も変わらない」という台詞や。主人公の、スペシャルではないただの銀行員という設定にも、説明がつくんですよね。

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