東澤 昭

元俳優&時々俳優。自治体、公益財団等で各種文化事業、演劇祭、劇場運営等に関わる…

東澤 昭

元俳優&時々俳優。自治体、公益財団等で各種文化事業、演劇祭、劇場運営等に関わる。現在フリー。

記事一覧

夏の闇

ロシアによるウクライナへの侵攻が始まってからすでに4か月半が過ぎようとしている。その情勢は日々報じられるけれど、そうした情報の何を信じればよいのか分からなくなる…

東澤 昭
2年前
1

世論調査の「怪」

友情を失いたくなければ政治の話をするな。 小説のなかで政治の話をするのは音楽会へいって演奏を聞いてるさいちゅうに耳もとでいきなりピストルを射たれるようなものだ。 …

東澤 昭
2年前
1

雪国と瀕死の白鳥

川端康成没後50年 今年は川端康成没後50年とのことで、それを記念してか代表作「雪国」をドラマ化したものがテレビで放映されたり、各地で関連の催しが行われたり、さらに…

東澤 昭
2年前
6

「銀河鉄道の夜」とヤングケアラー

時たま思い立っては読み返したくなる小説や童話がある。宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」もそうした作品の一つである。 私が手にしているのは、40年ほど前に筑摩書房から出た「…

東澤 昭
2年前
6

少しずつ歩くこと poetry note No.12

この頤は船の舳先だ ぐいと突き上げ 背を反らし 波を切り裂くように 人の群れを漕ぎ分けてゆく 立ちはだかる闇と霧に向かって 少しずつ 少しずつ 歩いてゆく そう…

東澤 昭
2年前
1

コラボレーションの力

もうひと昔も前の2009年に出版された本なのだが、今も時折読み返すのが、経営コンサルタントでワシントン大学の心理学・教育学部教授キース・ソーヤーが書いた「凡才の集団…

東澤 昭
2年前
6

バベルの図書館

子どもの頃、私が小学校の中途から移り住んだ町には、小さな図書館がひとつあるだけだった。元小学校長の老人が館長を務める図書館で、およそ貧弱な蔵書だったはずだが、私…

東澤 昭
2年前
3

夏の闇

ロシアによるウクライナへの侵攻が始まってからすでに4か月半が過ぎようとしている。その情勢は日々報じられるけれど、そうした情報の何を信じればよいのか分からなくなることがある。
戦場における人権侵害と思われる事象が頻発し、それをウクライナ側は非難し、西側諸国の報道もそれに同調し、ロシアの非道ぶりを糾弾する。これに対しロシア側は即座に反論、これはウクライナ側が自らの犯罪を押し隠すための情報操作だと主張し

もっとみる

世論調査の「怪」

友情を失いたくなければ政治の話をするな。
小説のなかで政治の話をするのは音楽会へいって演奏を聞いてるさいちゅうに耳もとでいきなりピストルを射たれるようなものだ。
以上は開高健の小説「夏の闇」のなかに出てくる言葉だが、政治と生活が直結したものである以上、これを避けて通ることは出来ないだろう。
ということで、友情にひびが入らないよう気をつけながら少しばかり政治寄りの話をしたい。

選挙投票日が近づくこ

もっとみる
雪国と瀕死の白鳥

雪国と瀕死の白鳥

川端康成没後50年

今年は川端康成没後50年とのことで、それを記念してか代表作「雪国」をドラマ化したものがテレビで放映されたり、各地で関連の催しが行われたり、さらにはこれまで全集でしか読めなかった川端の「少年」が文庫で刊行され大きな話題となったりしている。

さらに今年は芥川龍之介の生誕130年でもあり、こちらも関連展示や講演会などが開催されているが、川端は芥川の7歳年少の同時代人だった。
芥川

もっとみる
「銀河鉄道の夜」とヤングケアラー

「銀河鉄道の夜」とヤングケアラー

時たま思い立っては読み返したくなる小説や童話がある。宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」もそうした作品の一つである。
私が手にしているのは、40年ほど前に筑摩書房から出た「新修 宮沢賢治全集」なのだが、賢治が幾度も手を加えた原稿の初期形である異稿も併載されていて面白い。これを最終形と比べて読むと、賢治が何を削除あるいは省略し、どのシーンを加えていったのかといったことや、どのような問題意識をもってこの作品を構

もっとみる
少しずつ歩くこと poetry note No.12

少しずつ歩くこと poetry note No.12

この頤は船の舳先だ ぐいと突き上げ 背を反らし

波を切り裂くように 人の群れを漕ぎ分けてゆく

立ちはだかる闇と霧に向かって 少しずつ 少しずつ 歩いてゆく

そうすることでしか胸にわだかまる影の消えることはない

そうすることでしか目の前の黒々としたものの

何であるかを知ることはないのだと 独り言ちながら

自然がつくり出す文様と 人の手によって作られた形がリズムを刻む

それは波動となって

もっとみる
コラボレーションの力

コラボレーションの力

もうひと昔も前の2009年に出版された本なのだが、今も時折読み返すのが、経営コンサルタントでワシントン大学の心理学・教育学部教授キース・ソーヤーが書いた「凡才の集団は孤高の天才に勝る~『グループ・ジーニアス』が生み出すものすごいアイデア」(金子宣子訳)である。
いわゆるビジネス書として読み始めたのだが、クリエーションに関する多くの示唆を得ることのできる本である。

その中で著者は、かつては一人の天

もっとみる

バベルの図書館

子どもの頃、私が小学校の中途から移り住んだ町には、小さな図書館がひとつあるだけだった。元小学校長の老人が館長を務める図書館で、およそ貧弱な蔵書だったはずだが、私にとってはとてつもなく大きな宇宙のように思えた。館内のすべての本を読みつくすことを夢見ながら、この世界には一体どれだけの本があるのだろうと考えては深いため息をついたものだ。

さて、10年ほど前のニュースだが、国内で発行されたすべての出版物

もっとみる