病院の医療従事者はこの数日での情報のアップデートに注意しておいてください 【COVID-19:これは医療従事者向け内容です】

【これは医療従事者向け内容です】

皆さん、本当にお疲れ様です。現場の問題として取り組むタイミングに移り変わってきました。こうなる状況を予測して、情報はここまで皆さんで共有してきたと思います。実際に当初から予測された通りのタイミングで状況が動いてきてると思います。

専門家・病院では程度の差こそあれ、対処方法・オプションを多数情報共有されており、その中から選択できる状況です。

これは先行して感染者数が増加したイタリア・中国・アメリカ(特にNY)の情報提供による恩恵が本当に大きいです。

ただ注意しなければいけないのは、医療資源の問題は実際に経験するまで本質的にはわからないし、制限できないはずです。(特に日本では)

専門家の治療は感染のPhaseによる違いがかなりあるので、そのため自分も感染者数の違いによる対策の差をアメリカ、カナダの3つの地域の先生にインタビューしてきたわけです (NYWVカナダ:m3会員用)

(感染者数が少ない州の情報はみんなこれまでは興味なかったはずです、つまり情報は極端な方を基準に考えやすいのです。そこでようやく身にせまったところでいろいろな対策方法をバランスをもって考えてゆく必要があります。)


感染予防は基本Stay at home以上のものはない


病院外での感染予防は無茶苦茶重要です。ただ、もう基本はしばらく自宅待機がベスト!それはしばらく継続ですので、

これまでも、これからも

1.どこでどの程度、自宅待機をやめれるか
2.経済学的な折り合いをどうするか

です。ここは専門家会議・政治家に判断を任せるしかない状況だと思います。一般の方のマスクに関してはいい加減な情報ばっかり飛び交うのであまり気にしすぎないことです。

家にいてもらうという原則を考えてもらい、それ以上現場の医療者から伝えられる、具体的感染予防には限界があると思います。(そもそもこのあたりの方策は強力なエビデンスがないので、すぐひっくり返ります。もともと資源ありきの議論です。Standard therapyの是非にまず注力する方が良いと思います)

アメリカもマスクなければ店に入れないとかいろいろ言われますが、そんなことはないですし、メディアに踊らされるため、またスーパーの混雑は波があります。どこの国も混乱してます。

日本でもまぁ、おそらく何回かこういう小さな混乱と落ち着きを繰り返すでしょう。

病院にいる医療従事者が今注力しなければいけないのは院内の方であり、集中するところだと思います。(病院から出たら一個人なので、個人での情報収集は別途考慮してくださいね)

まず、必要なのは集合知のアップデート

現場の問題はここからです。

①各種学会のとの情報共有(集合知のアップデート)
②現場の医療リソースの把握と制約されるタイミングの見極め
③患者さんの不安への対処

がポイントだと思います。

まだ、リソースも大分みんなで先行して情報収集してきた”極端な”NYとはまだだいぶ違います。繰り返しますが、

医療資源のリソースは特に完全になくなるまでは”節約する”ことはあっても、使わないということはありえない(まぁ難しい)ので

多分ここからは一般の方と医療者の認識の乖離が出てくることだと思います。粛々と専門的な我々は情報収集と”現場最適”な医療提供をするしかないです。

(たとえば、もう既に人工呼吸器が枯渇した場合には2つに分配して用いるできる可能性は理解しているはずです。ただ、ある程度人工呼吸器がまだ十分にある状況では最初からこの方法を用いにくいと思います。そして「まだ十分」の判断は難しい!!

EBMがここまで普及してくれており、10年前とは状況が異なります。ある程度の一般的な治療に関しては集合知=コンセンサスが得られていると思います。

むしろ医療従事者が今考えるべき、今後困るであろう問題として新たな集合知=コンセンサスが必要なのは”今の”感染状況・リソースにおいて

どのようなStandard therapy が提供できるのか?

という部分です

具体例を挙げれば、STEMIに関してもThrombolysis firstが提唱され、SCAI(米国インターベンション学会)ではリスク層別化のアルゴリズムが構築され、それぞれの地域ではどうするか?これが重要です。これは各専門家の集合知が重要です。既存のシステムを活用するのであれば学会がまず日本全体としてこの役割を担うことになるのは間違いありません。(もちろんその他の信頼できる専門家の積極的な協同するプラットフォームでも構いません)よくエビデンスはデータだとか勘違いされていることが多いですが、重要なのはデータだけではないのです。集合知です。歴史的背景、経験を含めた先生たちが集める見解の中に一つの方策を求めてゆくしかないのです。

医療崩壊という言葉は医療者にとっては少し抽象的すぎる ーリソースを把握するー

情報共有が重要だと触れました。医療資源については、もう既にN95マスクなど感染制御の物資が不足する可能性は理解してることと思います。それ以外にもガウン・医療機器の消毒資材なども当然認識が必要です。

現場の医療者による不足する可能性のある現場のリソースの把握とそれが制限・緩和されるタイミングの見極めが重要だと思ってます。変化は激しいです。実際には見極めは難しいですが、変化する覚悟だけしておけばよいと思います。リソースが変化すると、暴露した医療従事者の今後の勤務すら対応が変わってくることすらあると思います。3月の時点でインタビューしたNYの変化もまさにその通りだと思います。

当初は、曝露の可能性があったら2週間隔離でしたが、今は症状がなければ検査なしで勤務継続の方針です

医療崩壊というのはかなり抽象的な言葉で、1か0かというものではありません。医療者は現場に集中するので良いと思います。

これまでは病院の中はリソースが豊富でした。つまらないことを例に挙げれば点滴の針などで困ることはなかったですし、マスクなど本当に不足した事態を想像したことすらなかったです。

コスト・無駄遣いをするな!ということを言われることはあっても、資源としてこれが大切だという意識はなかったです(申し訳ありません)、おそらく我々医療従事者の中で非常に勉強になっている部分だと思います。

医療のプロセスを見直す中で、どういう資源を実際に用いているのか?を見直すよい機会だと思います。気づくものが数多くあるはずです。この1週間ほど、たくさんの先生方と議論させていただいて、本当に全く色々気づいてなかったことばかりでした。自分がJCIという認証機構で学習したように現場の細かいプロセスを分解して理解することで、物品だけではなく、病院の各職種の方々が何をしているのか、お互いどうするべきなのかが議論できるのだと思います。一番大切なリソースは人です。皆さん元気でいてください!そこが大切だってことは、もう既に坂本さんのTwitterに現れてますよね。

あと、実際に何が行われるのか?


おそらく、具体的には各種学会が各種学会員:医療者に対して週明けから来週さらに医療資源も含めた情報提供をしていくことになると思います。(学会という組織ではなくても有識者の強力な情報共有が実装されるでしょう)外科学会が手術に関する提言を4月10日に改訂した中でも、医療資源についてやはり触れられています。こういうものはその領域の専門家の先生方が必ず発信してゆきます。

医学会連合からの各学会のサイトのまとめは多くをカバーしています。ここになくとも、関連する学会の情報は必ずチェックしておいてください。

循環器においては、自分も海外の各種学会の簡単な情報収集のサイトはこちらに記載しました。週明け以降にも次々に情報発信されるでしょう。

しつこいですが、

どのようなStandard therapy が提供できるのか?、これが勝負です。

(医療資源を加味した新しい集合知=コンセンサスです)

声明がたくさんでてくるので追いかけるのにつかれるでしょうが、どの状況で落ち着くかわからないので、しばらくはリソースの把握と情報の共有・Up to Dateに注力です。特に、治療の制限は現場だけでは実施しにくいのは上記の通りです。学会などの情報のアップデートに基づき、さらに臨床現場をより効率よく運営できるようにしてゆく必要があります。

一つ一つ手探りなのは現場も、学会も、政策側もみんな一緒だと思います。一緒に考えてゆきましょう。

患者さんへの情報提供は常に難しい

一番重要な患者さんへの情報提供ですが、患者さんむけ情報は慎重に、ただ早めにやらないといけないということで本当に難しいなぁとも思ってます。(特に今は自分がその部分に最前線で協力できていないのが本当に心苦しいです)

各種学会で患者向けの情報提供も行われています。(先ほどの医学会連合にもあります)循環器もここからさらに頑張ります。

医療従事者にとっては危機感が重要だが、一般の患者さんには安心してもらいたい。この部分はまぁ医療者からは当然ですが、言葉面としては逆なので勘違いを生むことはあります。COVID-19 infodemicの問題はいくつも取り上げられてます。(余計な不安が医療現場の負担を増加させ、余計医療資源が枯渇するという悪循環を生みます。もしここまで一般の方が読まれてしまっていたら、あくまで個人的な見解と理解して、学会からの各種情報をお待ちください)

患者さんへの説明も、学会や専門家集団のサポートを適切に用意してゆくしかないと思います。学会のリソースを患者さんに直接みてもらったりして”現場の労力を減らしながら”、最適な医療は現場の医療従事者にお任せください!という形で安心してもらうというのはこれまで同様です。刻一刻変わるCOVID-19の状況でのアップデートされた専門領域における知識は一般の方にとっておいつけないのは当然です。

出来れば、クラスター班の先生方が獲得していただいたインパクトがあり、良好な国民との関係性はこういう場面(医療従事者にお任せください!というしかない)現場のコミュニケーションにうまく影響を与えて活躍してほしいとおもってます(これも重要な医療崩壊予防によると思ってます。是非お願い申し上げます。他力本願スイマセン。)

答えはない問題は地道に一つ一つ。あとは精神論か


自分は循環器内科医ですが、循環器領域ではこの数年前から緩和ケアを勉強させてきていただいています。循環器疾患の緩和ケアの過程で勉強してきた臨床倫理の”正義”は今こそ重要な議論の焦点となるでしょう。

単独の答えはないです

Risk benefit communication, bad news の伝え方に何が必要なのか。ジレンマが起きることなどは既に勉強してきました。ここは基本的に抑えながら、より良い医療を提供してゆきたいと。もう我々は準備できていると思います(特に循環器の先生方はきっと、COVIDに対するAdvance care planningがJAMAに発表されても驚きません)。

なんだかんだ、医療・経済を含む倫理的な部分はアメリカでも最後かなり精神論で乗り切ってるようにも見えます。(もちろん補助や根拠はありますが、それだけで解決するレベルではないことはみんな本質的には理解してると思います。各州の州知事は間違いなくそういうスタンスをとってますよね。)

厳しいことを言う⇒我々ならできる!

この作戦が5月になったときに、一般の方・医療従事者の精神状態がどのくらい保てるのかもまたNYなどをみてまた参考にできると思います。

まぁ、色々述べましたが、この数日は

①情報共有②現場の医療リソースの把握③そして患者さんの不安にも注意

です。現実的にはもっともっと”地道な”外来・検査・治療の日程調整からなところが多いと思います。ここも患者さん向けの情報発信を継続的に実践する必要はあるでしょうが、共に未来を築いてゆく形一歩一歩すすめましょう!簡単な方法はないですね。

日循も特命チームができました。多分どの学会も同様です。学会だけではなく、厚労省なども無茶苦茶頑張ってます。病院の現場なんて苦労が半端ないです。精神論的なものは日本の悪いところ。おっしゃられる通り。ただ、モチベーションあげないとやってられないのは事実です。日本は現場の専門家にかかってます!ALL JAPANで情報共有しながら出来る事がいっぱいあると思います!

とりあえず、皆さんお疲れ様です!!!倒れないで!!!

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