依頼:ドラゴン調査・討伐

依頼元:https://twitter.com/428_rrr/status/1779882369987846600

『とある商業盛んな街の近くにドラゴンが出現した。
 気性の荒いドラゴンらしく、一般人が近寄るのは非常に危険である。
 冒険者諸君にドラゴンの調査討伐依頼をしたい。
 倒せばドラゴンの素材は君たちのものだ。危険だと感じたら撤退しても構わない。
 せめて情報を持ち帰ってくれ』

 依頼人:トアルトコ商会ギルドマスター


 ターボ・コリンズは無茶な依頼は受けない。
 己が目的を果たすまで、死ぬつもりは毛頭無いからだ。
 ターボ・コリンズは欲が薄い。
 ある程度の蓄えはあっても良いくらいには思っているが、生活ができる収入さえあれば構わなかった。
 高額な報酬、珍しい素材。そういったものでは、彼の信念は揺らがない。
 では何故、ドラゴンという強大な生物に関わる危険な依頼をたった一人で受けたのか。
 それは、商業盛んな街から出された支援要請であったゆえだ。
 彼をパーティを組んでいる少女の実家は、老舗の商家である。
(もしも交易路が潰されたりしたら……絶対に困るだろうからね)
 自分に縁ある人々が苦い思いをする可能性は、できる限り潰しておきたかったのだ。

 勝てるなどとは思っていなかった。
 情報を持ち帰れさえすればよかった。
 しかし。
(これは、気性が荒いとかそういうのじゃ……)
 すべてが、あまりにも想定外すぎた。
 遭遇したドラゴンは、まるで憎しみをぶつけるかのようにターボに襲い掛かってきたのだ。
 純白の羽毛、神聖なる息吹。
 美しきセイントドラゴンは今、狂気に呑まれたかのように怒り狂っていた。
 岩陰に身を隠してブレスを凌ぎ、地を転がって爪牙から逃れる。
 されど、荒ぶる竜は止まらない。
 反撃に移る隙など、まるでない。
(聖なるドラゴンがこんな風になるなんて、いったい何が……)
 尽きぬ困惑が青年の動きを鈍らせる。
 そこに竜の巨体から繰り出される尾の一撃。どう足掻いても避けられなどしない。
 反射的に斧を構えて受け止め――きれるはずがない。
 馬車に轢かれたかのように、ターボの身体は宙へと投げ出され。
 力なく、落ちた。
 衝撃、激痛、回る世界。
 地に叩きつけられた青年をドラゴンは一瞥し――高い声で咆哮してのち、街と反対方向へ飛んでゆく。
(え、とどめ……刺さない、のか?)
 仰向けで見上げた空の彼方、竜の姿はどんどん小さくなって。
 やがて、見えなくなった。
 助かった。
 だが、尽きぬ疑問は安堵すらも押し退ける。
 わからない。
 何故、聖なる竜が人里近くに現れたのか。
 何故、竜は憎悪を滾らせた眼をしていたのか。
 何故、自分は生かされたのか。
 なにも、なにも、わからない。
(……報告、しない、と)
 何の答えも出せぬまま、ターボの思考はそこで途切れた。
 
 此の竜に関しての報告が依頼人に届くのは、彼が意識を取り戻した時だ。

 * * *

 引用RT参加:末尾0→大失敗!戦闘不能
 ソロorPT:ソロ参加
 報酬:---

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