依頼:試作ダンジョンの攻略

依頼元:https://twitter.com/xx_mochisk_xx/status/1782399515557015719

『師匠から受け継いだ知識と技術を駆使して
 罠たっぷりのダンジョンを作ってみたのだ!
 このダンジョンを実際に探索してぜひ率直な感想を教えてほしい!
 最奥には追加報酬の宝箱を置いといたぞ!
 辿り着けたら持っていくといいのだ!!』

 依頼人:建築士見習いのイェタテル


 ありえない光景が広がっていた。
(ここは……そんな、まさか)
 二度と見たくない有様だった。
(あ……ああ……!)
 仕事を手伝うたびに誉めてくれたおじさんも。
 よく美味しいお菓子を振る舞ってくれたおばさんも。
 幼い頃から世話になっていて、結婚の際は心からの祝福を贈った少し年上の若夫婦も。
 村一番の人格者と名高かった村長も。
 そして。
(じいちゃん……ばあちゃん……!!)
 獣人である自分を拾って育ててくれた、育ての親たる老夫婦も。
 みんな、みんな動かない――ヒューマンではない自分、ただ一人を除いては。
「あ、ああああああぁぁぁぁ!!!」
 逃げ出すことしかできなかった。
 あの日のように。無力なまま、吠え面をかいて。

 ダンジョン入口まで這う這うの体で戻り、落ち着きを取り戻すまでターボ・コリンズは気付くことができなかった。
 己が見たのは、心に深く刻まれた傷の具現に過ぎないと。

「……その、ちょっと刺激が強すぎたのだ?」
「いや、これは僕の問題だから。……そうか、精神魔法だったのか」
 依頼主に種明かしを受け、ダンジョンの感想を求められ。
「うーん、そうだな……。効果的かどうかは、たぶん相手によるんじゃないかな」
 ターボは自身の体験を思い返しながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「これといったトラウマを持たない探索者には、あまり効かないかと思う。あとは、そういった魔法に耐性のある相手も厳しいね」
 もっとも、ダンジョンの役割にもよると青年は続ける。
 何かを守る目的ならば、仕掛ける価値は充分あるはずだと。
「でも例えば、人を楽しませる為の建物だったら、別の効果を持つ魔法の方が良いだろうね」
 なるほどと熱心にメモを取る依頼人に、ターボは小さく笑って。
「……勉強になったよ。すごく、ね」
 少し掠れた、ごく微かな声で呟いた。
 
 己が目的の為には、精神面の対策も必要。
 金銭的に価値ある宝以上に重要な認識を、ターボは意図せず得ることに成功したのだった。

 * * *

 引用RT参加:末尾67
 6→強制的にトラウマが蘇る精神魔法を掛けられた!
 7→罠に対応出来ず攻略失敗。追加報酬なし。
 ソロorPT:ソロ参加
 報酬:50ルプ

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