【第4話】太陽の啓示-月の秘薬アヤワスカと太陽の妙薬サンペドロを辿る
アマゾンでのめくるめく体験を未だ消化できないまま、私は、イキトスの街を後にすると、朝早い便で次の目的地クスコを目指しました。窓の外に目をやると、眼下には雲が広がり、やがて赤茶けた山々が見え始めます。
南半球は今冬を迎えたはずなのに、2000mを超えるアンデス山脈の稜線に雪は見えません。
日本だったら、真夏でない限り、雪が無い山脈を見ることは無いのに…。不意に感じた違和感のおかげで、ようやく日本とは異なるペルーに旅をしている感慨が拡がってきました。「そうか、私はこんなに遠くまでやって来たんだ…」
南米滞在の予定は、あと2週間以上残っています。
ともかく、メインの目的だったアヤワスカ体験は果たしたので、あとは観光気分で過ごしても良いような気がしていました。
これからの旅で気になることと言えば、慣れない高地での滞在のことぐらいです。ようやく、出発前に用意していた高山病に関する資料に目を通しながら、クスコの街のことを想像しました。
ペルー南東の山岳地帯にあるクスコは、インカ帝国の首都としてその後16世紀にスペインに征服されるまでの間、栄華を極めた歴史があります。この時代、他にも様々な都市や城が山岳地帯に作られ、世界遺産として有名なマチュ・ピチュ遺跡もあります。(そこに登ることが、今回の旅の楽しみの一つでもありました。)
天空の城としても知られるマチュ・ピチュですが、クスコはさらに高地に位置しています。標高は3,400m。日本の富士山と同じぐらいの高さに匹敵するのですが、実際に富士山に登った経験がない私にはどれくらいの高さなのかという想像がつきません。それ以上に、そんな高地に30万人もの人々が生活を営んでいること自体が想像を超えていました。
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