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人生で初めてスナイパーライフルを買った話

僕は、二度とないかもしれないことを電気とサブカルチャーの街、秋葉原で経験した。それは、スナイパーライフルを買うという経験である。アニメや映画でしか見たことが無い、あのスラっと伸びた銃口とボルトアクション。FPSでは上級者向けで僕では扱えなかった銃が今、手元にある。いったい、なにが起こったのか。僕と、行動を共にしたMとの秋葉原2人旅。事の顛末を、ここに書き記す。

秋葉原へ降り立つ

11/11(水)16:00。僕は秋葉原へ降り立った。Mくんとの待ち合わせまでまだ30分程度余裕があり、駅近くのカフェへ向かう。ホットコーヒーを注文し、paypay払いを断られ、恥ずかしい思いをする。最近電子マネーの便利さに溺れ、財布を出そうともしなかった僕に対し、

「paypay使えないんですよー。(気引き締めろ。こっから大事な買い物するんだろ?)」

と教えてくれた店員さんの行間を読み、静かに兜の緒を締める。だって今日は、スナイパーライフルを買うんだから。事前に身内から集めていた情報に目を通す。目星をつけたミリタリーショップの回る順番を頭の中でシュミレーションする。ああでもないこうでもないと思案していると、携帯が震えた。

「ういー。ついたぞ。」

Mからの連絡だった。ぬるくなったコーヒーを飲み干し、店を出る。電気街改札で無事に合流。さあ、どこから手をつけよう。「まずは、ラジ館だ。」

ラジオ会館で地図をGETする


秋葉原にはいくつかのランドマークが存在するが、ラジオ会館もその一つだろう。自動ドアを通り、目当てのお店までエスカレーターを駆け上がる。最初のお店に着いた。かっこいい銃を眺めたい誘惑を断ち切り、店員さんに声をかける。

「あの、スナイパーライフルを探しているんですけど。」

このセリフは、人生であと何回吐けるのだろうか。「ジャンク品とかで安いものを探してまして。」というと、店員さんは親切に秋葉原の地図を持ってきてくれて、

「この辺りにミリタリーショップ多いから、ここら辺行ってみな。」

始まりの村で村人に聞き込みをして、情報を手に入れた勇者のような錯覚に陥る。秋葉原特有の童心をくすぐる雰囲気に煽られていた僕たちにの中には、ただ店員さんからお店の場所を教えてもらっただけなのに、宝の在り処を見つけたワクワクがあった。

「ここに、スナイパーライフルがある・・・。」

貰った地図を握りしめ、その地へ歩を進めた。


値段に驚愕する
10歩歩けばメイドさんに会う大通りを進み、教えてもらった地に君臨する有名店へまず向かうことにした。お店に入ると、ガラスケースに入った大量のハンドガンがお出迎えをしてくれた。スナイパーライフルを探して店の奥に入ると、可愛らしいフォントで書かれた
100000円
という文字に目を疑う。桁を読み間違えたかと一瞬思ったが、そんなことはなかった。大学生活でそんな大金を持つのは、自動車教習所の申し込みの時くらいだろう。Mがあまり驚いた表情を見せなかったので、負けじと顔をつくった。なんて見栄っ張りなんだ、僕は。


身内からの情報で錯乱する
一通りミリタリーショップを回った後、身内から手に入れた情報の中に、まだ寄っていないお店があることに気づいた。期待に胸が高鳴る。大通りから少し路地に入ったところにその店はあった。1号店から3号店まであり、見ごたえがありそうだと意気揚々と入店。しかし、僕たちを出迎えたのはフィギュア、フィギュア、フィギュア。全ての号店を回ってもフィギュア。何が起こったのかわからず、思考が停止する。

銃が、ない。

身内に裏切者が紛れているとは考えたくない。必死で探すも、かっこいいロボットのフィギュアだらけ。僕はショックを受けた。後日、その件について情報提供者のYに問いただした。そうすると、

「フィギュア、見てほしかったの。かっこよかったでしょ。楽しかった?」「・・・楽しかった。」


サブスク勧誘につかまる
スナイパーライフルにはスコープが必須である。スナイパーたるもの、遠くの標的を撃ち抜けないと話にならないからだ。しかし、スコープも良いお店だと値段が高く、学生の僕たちには手が出ない。そこで、学生の味方である驚安の殿堂に助けを求めた。ドンキのエスカレーターを登ろうとすると

「あの、特典ってもらいましたか?」

なんのことかさっぱりだが、
「もらってないっす。」
「今、ドンキ来店された方に特典お配りしてるんですけど、知ってます?」

そこからの記憶はない。気づいたら、QUOカード200円分と月額2500円動画配信サービスの登録完了メールが手元にあった。テレビで放送される営業販売を見ても、誰がひっかかるんじゃ(笑)と思っていたが、話の上手さだけでサクッと買わされてしまった。喝を入れてくれたあのカフェの店員さんに申し訳がたたない。僕はダメな子です。幸い30日間無料の特典つきだったので助かったが、これが即高額支払いの買い物だったらと思うと・・・。東京怖い横浜帰りたい。


店員Sさんの助け舟
情報を一通り集めきったところで、思案の時間に入る。値段とロマンが激しくぶつかり合う。候補を2つに絞れてからが長かった。お店の隅でウンウン唸っていると、

「スコープ、中古ありますよ。安くできますよ。」
「え?」

ショップ店員sさんは、僕たちがちょうど悩んでいたポイントの打開策を、すまし顔で提示してきた。僕たちに対する優しさだったのか、何十分も店で唸っている僕たちを早く帰したかったのか、真意は定かではないがSさんは、救世主として僕たちの前に現れてくれた。購入が決まり、僕はコンビニへひた走る。手持ちのお金が足りなかった。今日はpaypayが原因の悪いことがよく起こる。


購入
sさんが壁に括られていた銃を下ろしてくれる。全長1m20cm、重量4kgの存在感は遠くから眺めていた数分前とは比べ物にならなかった。その銃が、こちらである。


申し訳ない。このノートでは、僕の絵で我慢して頂きたい。実際のフォルムはぜひ劇場または映像で確認してほしい。かっっこいいのだ。僕がかっこよく扱えるかはまた別の話だが。

この話についての一見解と疑問
ここまで読んでくださった方々、誠にありがとうございます。駄文で大変失礼いたしました。皆様と劇場、または画面越しでお会いできるのを楽しみにしております。

さて、最後にこの話に対する見解を綴らせて頂きます。これは僕が仲間と小道具を買いに行っただけの話ですので、映画みたいな心揺さぶられるドラマは生まれていません。けれど、こうやって思い出を文字にしてみると、人の思いが交差するところには、すごく小さいですけどドラマが生まれていることがわかります。例えば最初のカフェでは、「paypayで」と自信満々に言った僕が、店員さんにスパッと断られて恥ずかしいという思いに心が変化しています。店員さん側は反射的にpaypayが使えないという事実を伝えた後、「うわ、こいつかっこ悪(笑)」という風に変化しています(多分。真相はわかりませんが)。これが舞台上でできればキャラクターの機微がお客様に伝わり、充分に面白いシーンになりそうですが、それが中々できない僕。なんで、日常生活でできていることが、舞台上になるとできなくなるんでしょう。フロイトの意識、無意識の話とかに派生する気がしています。このままだらだらと書いてしまいそうなので、今回はこの辺で。また、リレーが回ってきたら、続き書く、かもしれないです。

次のノート担当は、矢中さんです。頼みます。

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